未来に向けた価値創造

技術開発本部長メッセージ

執行役員 技術開発本部長 村上 晃一

執行役員
技術開発本部長
村上 晃一

技術開発本部は、IHIグループの根幹の1 つである「技術」を支える集団です。横浜事業所(神奈川県横浜市)と豊洲本社(東京都江東区)を拠点として、約700 人がさまざまな分野の研究開発に関する業務を行なっています。
わたしたちの役割は、大きく2 つあります。1 つは、グループ内のあらゆる技術ニーズに応えることであり、具体的には新製品・サービスの開発や高付加価値化への取り組みがあります。もう1 つは、将来に必要となる技術を見極め、生み出していくことです。

お客さまのニーズは日々新たに変化しており、一日として同じところにはとどまっていません。一方で、わたしたちの納めた工場設備や社会インフラは何十年もの長い期間使われますので、これらは一瞬でも信頼を損なうことがあってはなりません。こうした環境の変化や長期間の社会の要請に対応するためには、幅広い技術を育てるとともに、常に最新の技術へと革新していかなければなりません。そのために、専門分野の人材を一流の技術者として育成することや、世界中の企業、研究機関、大学などと長期にわたるつながりをもつことを、とても大切にしています。時に友として、時に強力なライバルとして、世界中に切磋琢磨する技術者がいることは、わたしたちのかけがえのない財産です。

技術をもって社会の発展に貢献する」を企業理念に掲げるわたしたちにとって、技術開発は企業活動の原点であり、存在価値そのものです。ひとりひとりの情熱と挑戦心を原動力として、世界の夢を実現するためにこれからも技術の探求を続けてまいります。

グループ技術戦略

IHIグループでは、中長期的な技術開発の方向性をグループ全体で共有するために、「グループ技術戦略2016」を策定し、その戦略の実現に向けて日々奮闘しています。本戦略では、将来を見据えて注力する代表的な技術として、「エネルギー」と「機械・装置の知能化」という2 つの分野があります。
エネルギー分野では、SDGs(国連の定めた持続可能な開発目標)でも示されているように、環境への影響を可能な限り抑えた、再生可能エネルギーに関連する技術開発が重要です。現在のエネルギーインフラの環境負荷を低減するとともに、さらに環境負荷の少ないエネルギー源である水素やアンモニアの活用や藻類バイオ燃料、海流発電の技術開発に取り組んでいます。
製品・サービスと情報技術の融合を、わたしたちは「機械・装置の知能化」と呼んでいます。賢い機械、自分で考えて判断する装置、すなわち人間と自然に協働する機械や装置をイメージしていただければよいでしょう。この考えに基づいたスマートな工場・社会インフラの提供を目指しています。
また、こうした技術開発を進めるために、協働・協創する技術開発の関係を社外にも広く求めるオープンイノベーションの取り組みも積極的に推進しています。

グループ技術戦略2016

研究開発費の推移

研究開発費

技術でつくる社会の未来

低炭素社会の実現に向けた新たなエネルギーの創出

地球温暖化防止を目指し、温室効果ガスを減らし持続可能な低炭素社会を実現するため、新たなエネルギーの研究開発に取り組んでいます。

水素・アンモニアバリューチェーン

今後、世界各地で電力需要が増加していく中で、生活の利便性と地球環境の保護を両立させるためには、エネルギー源の転換が必要であることは論をまちません。
その解決策の1 つとして、使用時にCO2 を発生させないクリーンなエネルギー源として水素が利用拡大されています。水素の利用を広げていくためには、利用者がアクセスしやすいようにインフラを整えていくことが必要です。わたしたちはグループの総合力を発揮し、水素の製造から利用までをつなぐバリューチェーンを構築していきます。
現在の水素は、天然ガスや石油に熱を加えて製造する方法が主であり、製造過程でCO2 を排出しています。この課題を解決するため、わたしたちは、太陽光発電などの再生可能エネルギーと未利用廃熱を使って、水を効率的に電気分解する手法の開発に取り組んでいます。また、二塔式ガス化炉TIGAR® によってバイオマスから水素を作りだす技術も、インドネシアで実証を進めています。
水素は液化しにくく、金属を壊れやすくする性質があり、運搬や貯蔵にコストがかかることも課題となっています。わたしたちは、水素を効率よく運ぶためのキャリアとして、水素をアンモニア(NH3)に変換して使うことに着目しています。
アンモニアは、体積あたりの水素含有量が大きく、液化しやすい性質をもっています。また肥料や化学原料として流通しており、輸送インフラがすでに整っていることも、実用化に有利な点です。わたしたちは、設備投資を抑えた形で早期の水素社会を実現するため、さまざまなシーンにおけるアンモニアの利用技術の開発にも注力しています。
アンモニア利用の一環として、ボイラやガスタービンの燃料として利用することに取り組んでいます。アンモニアも水素と同様に利用時にCO2 を発生させないため、石炭やLNG の代わりに利用することでCO2 排出量を削減することができます。
わたしたちは、NOx(窒素酸化物)の生成を抑えながら、アンモニアを安定して燃焼させる技術を確立しています。今後は、2MW 級ガスタービンによる発電の実証試験や石炭焚きボイラへのアンモニア混焼試験などを通して、実用化への取り組みを加速していきます。

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水素・アンモニアバリューチェー概念図

藻類バイオ燃料

IHIグループは、株式会社ちとせ研究所および有限会社ジーン・アンド・ジーンテクノロジーと共同で、2011 年より化石燃料に代わる新たなエネルギー源として「MOBURA」と命名した藻類バイオ燃料の開発を進めています。
従来のバイオ燃料は、とうもろこしやさとうきびなどの食用原料を糖化・発酵させてエタノールを生成しますが、藻類バイオ燃料は、非食用の藻の体内で生産される油分を回収・精製した燃料であるため、食糧と競合しません。また、藻が増殖する際にCO2 を吸収することから、原油や食糧の価格高騰と地球温暖化を同時に解決するソリューションとして注目が集まっています。国際民間航空機関(ICAO)は、2020年以降CO2 排出量を増加させないことを目標としており(Carbon Neutral Growth 2020)、そのためには、持続可能なバイオ燃料が大きな役割を果たすと想定されています。
わたしたちは、ボツリオコッカスという藻種を用いて、工業的生産に適した品種の改良や、最適な生産プロセスを開発しています。実用化に向けた取り組みとして、2012 年よりNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受け、2015 年には、鹿児島県に建設した1,500㎡の培養池を有する試験設備にて、藻体の安定培養に成功しています。また、2017 年4 月には、NEDOが公募を行なった「バイオジェット燃料生産技術開発事業」の事業委託先として採択されました。今後は、MOBURA をバイオジェット燃料にすることを目指して、規模を拡大した培養設備を海外に建設し、長期連続運転や製造コストの低減などの検証を進めていきます。

藻から油がしみだす様子

藻から油がしみだす様子

屋外培養施設(鹿児島県)

屋外培養施設(鹿児島県)

海流発電

日本は国土の四方を海に囲まれた海洋国家であり、地球温暖化問題への対応やエネルギーセキュリティーの面から、海洋における再生可能エネルギーの利用促進が求められています。その中でわたしたちは、日本沿岸を流れる黒潮のような海流のエネルギーで、海中に浮かせたタービンを回して発電する大規模発電ファームを構想し、2011 年よりNEDOの支援を受け、海流発電システムの技術開発を進めています。海流のエネルギーは季節や時間帯による変動が少ないことから、年間を通して60% 以上の高い設備稼働率で発電することができます。
実用段階の海流発電システムは、浮体部の幅100m、タービン翼の直径約40m、重さ1,000トンにもなる大型の構造物で、1 台で2,000kWを発電します。製作にあたっては、造船事業で培った浮体物の製造技術や、航空エンジンやロケット事業で高めてきた材料技術・加工技術など、わたしたちならではの技術が生かされています。さらに、周囲の環境を察知して常に姿勢を維持し、万が一の危険時には自ら海面まで浮上する自律制御機能技術を用いることで、安定的かつ安全な電力供給を可能にします。
2017 年7 月、100kW の実証機を完成させました。この装置は、試験を行なう鹿児島県十島村の小中学生からの公募により「かいりゅう」と命名され、口之島(鹿児島県)沖で、100kW 規模の海流発電としては世界初となる水中浮遊式海流発電システムの実証試験を実施し、発電に成功しました。今回得られた成果を活用し、海流エネルギーを有効かつ経済的に利用する本システムを2020 年以降に実用化することを目指します。

水中浮遊式海流発電システム

水中浮遊式海流発電システム 海中への設置イメージ

運搬用の台船に乗った実証機「かいりゅう」

運搬用の台船に乗った実証機「かいりゅう」

「かいりゅう」曳航の様子

「かいりゅう」曳航の様子

人と機械が共に働く社会を目指して

あらゆるものをインターネットでつなぐIoT や、AI、ロボティクスなどの最新技術の活用によって、製品・サービスに新たな価値を創造します。

ビッグデータを社会の価値へと変える

IHIグループは、共通プラットフォームILIPS(アイリップス)を用いた、新しいサービスの創出に取り組んでいます。お客さまへ納めた産業用設備の運転データを分析することで、最適な運用を提案するなど、設備の安定稼働や生産性向上に貢献することを目指しています。
ILIPS のさらなる高度化を実現するために、わたしたちはloT・AI 技術を駆使した「loT エッジプロセシングデバイス」の開発を進めています。インターネットや公衆回線を介さず、産業用設備の近くで高速に、膨大な運転データから分析に必要なデータや特徴を取り出す「エッジコンピューティング」のプロセスを加えることで、ILIPS ではより多くのデータをより速く分析し、多くの価値を生み出せるようになります。わたしたちは、loT・AI 技術によって、ビッグデータを社会の価値へと変えていきます。

ロボティクスの取り組み -知能化された機械がものづくりを、作業現場を、変える-

わたしたちは、人と機械が連携しお互いの強みを発揮しあって働ける未来の実現を目指しています。
ものづくりの現場では、生産性の向上や労働力不足対策などとして、ロボットの導入が進められています。わたしたちは、搬送や溶接のような単一の作業だけでなく、組み立てや加工といった複雑な作業を人に代わってできるように知能化された産業用機械を開発しています。人が手本を示すことにより人のスキルや技術を習得させたロボットの学習データを複数のロボットにコピーすることで、作業効率の大幅な向上とともに、絶やすことのできない熟練技術の伝承も期待できます。
また、屋外作業現場や災害地、海中などのアクセスが難しい場所で作業を行なう無人機システムも開発しています。オペレーターが安全で快適な運転室から複数の知能化された機械を遠隔監視しながら自動運行するシステムです。
無人機システムの実用的な取り組みの先駆けとして、2017年に国土交通省九州地方整備局九州技術事務所および株式会社フジタと共同で「ロボQS」を完成させました。バックホウと呼ばれる作業用ショベルカーの操縦席に取り付けることで、無線機による遠隔操作を可能にする装置です。危険な災害現場において、安全で迅速な復旧作業に役立っています。
2020 年に無人機システムの部分的な実用開始を目指し、開発を加速しています。

ロボQS

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知能化された機械が実現する社会

お客さまとIHIグループをつないでイノベーションを起こす

IHIグループは、国内外のさまざまな企業・大学・研究機関との共想・共創を通じたイノベーションを推進し、「新しい価値」の創造に取り組んでいます。

「IHIつなぐラボ」を起点としたイノベーション

IHIグループのオープンイノベーションの起点として2014年に開設した「IHIつなぐラボ」への来場者は、3 年間で延べ7,000 人を超えました。
イノベーションは、技術をはじめ、たくさんのピースをつなぎ合わせてジグソーパズルを完成させるようなものです。足りないピースを埋めるべく、わたしたちが求めている技術に関するセミナーを開催し、積極的に社外技術とのマッチング活動に取り組んでいます。また、多様な視点や技術を持つ異業種企業とともに、未来を洞察するフューチャーセッションを行なっています。セッションでは、想定する未来像に至るために現在すべきことを議論し、同時にイノベーションマインドの醸成を図っています。

つなぐラボ

ひらめきエリア

つなぐラボの展示スペース「ひらめきエリア」

技術アタッシェを起点としたイノベーション

2007 年より、ロンドン、ニューヨーク、シリコンバレー、シンガポールの4 拠点に研究員が「技術アタッシェ」として駐在しています。技術アタッシェは、企業や大学などとのグローバルな研究開発ネットワークを構築し、各拠点の特色を生かしたイノベーションを推進しています。

<米州アタッシェ(2007 年開設)>
米国で最も投資が進むICT /ロボティクス、再生可能エネルギー分野の技術調査に注力し体制を強化するとともに、新製品・新ビジネスの創生・事業化を目指した連携も強化しています。
<欧州アタッシェ(2007 年開設)>
最先端の基盤技術、生産技術を有する大学・研究機関との連携を強化し、革新的な材料開発、生産・検査技術の高度化を目指しています。
<アジア・大洋州アタッシェ( 2011年開設)>
シンガポール科学技術研究庁との連携を強化し、レーザ光によって物体の形状・位置を把握する「三次元レーザレーダ」を活用した社会実験、製造ライン自動化やモニタリング技術をはじめとした、事業に直結した共同開発を進めています。

IHIつなぐラボおよび技術アタッシェを起点として、社会の課題へのソリューションとなるイノベーションを生み出していきます。

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