特集 地域環境から生物多様性を考えるIHIグループの生物多様性保全活動

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2010(H22)年は国際生物多様性年

1992(H4)年、国連環境開発会議(地球サミット)で生物多様性の保全を主たる目的として「生物の多様性に関する条約」が調印されました。2006(H18)年までに同条約の締約国数は189ヵ国を数え、その取り組みについては国際的にさまざまな議論が重ねられてきました。そして「国際生物多様性年」として定められた2010年には、愛知県で第10回締約国会議(COP10)を開催。COP10で採択された「新戦略計画・愛知ターゲット」では、企業を含むあらゆるレベルの関係者が持続可能な生産および消費のための計画を達成するための行動を行なうことが明記され、具体的行動の実践を求める考え方が示されました。このように、企業に対しても生物多様性保全への期待が高まる中で、IHI愛知事業所では、近隣地域の自然に密着した環境保全を目指す活動に着手しました。

IHI愛知事業所における生物多様性の保全に向けて

愛知県知多市は、農地や村林地を中心に市全体の54%が緑に覆われています。臨海工業地帯の「グリーンベルト」や市街地の公園緑地などのほか、愛知県指定の環境指標林である社寺林や、知多半島最大の人口湖・佐布里池周辺など、多くの緑があふれています。
この知多市の北西部に位置するIHI愛知事業所でも、産業道路沿いに長さ約230m、幅約100mのグリーンベルト(緩衝緑地)を中心に66,277m²の緑地を保有しています。特にこのグリーンベルトは、周辺企業の敷地を含めると総延長6kmにもおよぶ広大な緑地の一角を形成していて、緑化のみならず地域の生態系の拠点としても知多市や地域住民から注目されているところです。このため、IHIでは自社の緑地を生物多様性の保全という観点で活用できないか検討しました。

まず手始めに、愛知事業所の緑地を含めた地域生態系ネットワークの現状分析を実施しました。これは、事業所の緑地が生物多様性の保全の観点から周辺の自然環境の中で現在どのような役割を担っているのか、また、今後どのような役割を担うことができるのかを確認することを目的として行ないました。

緑地の利活用・整備構想

[ 写真提供/エコアセットコンソーシアム(株式会社インターリスク総研、 住友林業緑化株式会社、株式会社地域環境計画) ]

具体的には、人工衛星画像を利用して事業所周辺の緑地の面積の割合を計算し、周辺の緑地とその緑のつながり具合を地図として「見える化」しました。

分析の結果、愛知事業所の緑地は、グリーンベルトの緑地を中核として背後の里山の緑と海とをつなぐ生態系ネットワークの中に位置していることが確認できました。
これと並行して、事業所内および周辺の現地調査も実施しました。10月に行なった踏査だけでも、事業所内で哺乳類のタヌキ(痕跡)、鳥類はカワセミ、コゲラ、昆虫類ではコクワガタやモンキチョウなど33種の存在が確認され、これまでのグリーンベルト周辺地域の調査による生物相ともよく合致していることがわかりました。結果と合わせて、周辺環境にとても近い生物相があることがわかりました。

愛知事業所の半径3km圏内の緑地面積率。
対象範囲中での相対的な比較を可能にするため、等量分類によりしいき値を設定し5段階の色分けで表現した。

[ 写真提供/エコアセットコンソーシアム(株式会社インターリスク総研、 住友林業緑化株式会社、株式会社地域環境計画) ]

タヌキため糞

 

コクワガタ

ベニシジミ

 

カワセミ

[ 写真提供/エコアセットコンソーシアム(株式会社インターリスク総研、 住友林業緑化株式会社、株式会社地域環境計画) ]

この調査・分析の結果、愛知事業所の緑地にも生物多様性を保全する機能があるとして、今後の緑地整備の方針と整備作業の優先順位を検討しました。そして、周囲の生態系の一部として、さまざまな動物が生息、往来できるように緑地を活性化することとしました。

2011(H23)年度は、グリーンベルトのうち、グランド側の緑地の整備に着手します。日光の取り入れと通風をより効率的に行ない、健全な雑木林への移行を図るため、工場建設当時に植えられた外来種のマテバシイやトウネズミモチを適宜除伐し、時間をかけて段階的に地域の植生に合う在来の樹種に置き換えていきます。
また、作業の進捗に合わせ遊歩道も整備し、早ければ2011年度中にも事業所内で自然観察会などの催しができないかどうか検討をしている最中です。
中長期的には、グリーンベルト以外の緑地についても、生物多様性の拠点となるよう同様に整備をしていくことを考えています。そして、この緑地を拠点として地域との交流を含めた環境活動の展開を見込んでいます。

<参考>2011年11月9日 愛知事業所における生態系の現地調査の実施について 〜生物多様性の保全活動を推進〜

[ 写真提供/エコアセットコンソーシアム(株式会社インターリスク総研、 住友林業緑化株式会社、株式会社地域環境計画) ]

IHIグループの生物多様性保全活動はここから始まる

今回の計画は、将来的に行政や他企業と連携できれば、知多半島の生態系ネットワーク全体の保全・拡大にも貢献しうるものです。

2011(H23)年から「国連生物多様性の10年」が始まりました。緑地整備をはじめ、生物多様性保全の活動は一朝一夕で実現するものではなく、長期間継続的に取り組んでいかなくてはならないものと考えています。今後は自治体や近隣企業、地域の人びとなどとも話し合いながらより効果的な活動となるよう努めていきます。

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