ホーム » 芝生のプロフェッショナル » 校庭芝生への薬剤散布の是非

芝生のプロフェッショナル

校庭芝生への薬剤散布の是非

以前、都内の某小学校にて殺菌剤が使われ、その是非が問われたことがあります。

「薬剤が散布された校庭でこどもを遊ばせることはできない。」
「薬剤を散布するくらいならば校庭芝生化は必要ないのでは?」
・・・等の声が多く聞かれました。

では、薬剤散布なしに校庭芝生を管理することはできるのでしょうか?

我が国の多くの地域は、ヨーロッパや米国などの芝生先進国と比較して、夏季は高温かつ多湿多雨のために植物を侵す病害がたくさん発生します。特に校庭の芝生やスポーツターフは人工的かつ得意な生態系で構成されているため、極度に病害に見舞われやすい環境下にあります。

従って、芝生を良好な状態に維持するためには、並々ならぬ苦労が必要であり、もちろん、薬剤に頼らない病害防除法もありますが、それだけで病害を完全に防ぐことは困難です。

国内で見られる主な芝草の病害
病名 病原菌 発生時期 感染する芝草の種類 発生原因
ブラウンパッチ
Rhizoctonia Solani AG2-2 III B 6~9月 ペントグラス
寒地型芝草
窒素過剰施肥、排水不良
過剰潅水、サッチの堆積
ラージパッチ
(日本芝葉腐病)
Rhizoctonia solani AG2-2 LP 春、秋 日本芝、バミューダグラス等の
暖地型芝草
窒素過剰施肥、排水不良
過剰潅水、サッチの堆積
ダラースポット病 Sclerotnia hamoeocarpa 5~10月
(特に初夏)
すべての芝草種 窒素不足
菌糸の芝刈り機による伝染
フェアリーリング病 ホコリタケ、コムラサキシメジ、シバフタケなどの坦子菌類(きのこの仲間) 5~10月
(特に初夏)
すべての芝草種 未熟な有機質の多量含有土壌
サッチの堆積
さび病 Puccinia sp 5~6月
9~10月
すべての芝草種 日照不足
除草剤等による生育不良

現在、国内で流通している芝生に用いる薬剤はいずれも昔のものと比べて、「毒性がきわめて低く」、「土壌中で速やかに微生物によって分解され」、「万能薬ではなく」、標的となる病害のみに効果を示す選択性の薬剤になりました。

古くは効果がてきめんに現れる薬剤が重宝されていましたので、みなさんも薬剤に対して、このイメージを強く抱く方が多いと思いますが、現在使われている薬剤は人間や動物にとって安全であることが絶対条件ですから、もちろんこども達にもほとんど影響はありません。

薬剤が子どもたちに悪影響を及ぼすことはほとんどありません。悪いイメージが先行しがちですが、上手に使えば芝生管理も楽になります

とは言っても、できるなら薬剤はなるべく使いたくないですよね!?

病害の要因には、薬剤散布で速やかに防除できる病原菌をはじめとする生物的病原に対し、気象や肥料、化学的要因など人為的な要素が多分に含まれる非生物的要因の占める割合も大きいので、芝生が病気にかかりにくくするために、排水性を良くすること、過不足のない適切な施肥、適切な灌水ほか作業上の不注意には十分に気をつけましょう。


←前のページへ
肥料の葉面散布

次のページへ→
芝生の害虫を考える