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芝生のプロフェッショナル

トランジションが上手くいかない!?

写真:トランジションを行った芝生のイメージ

夏季の緑を彩るベースとなる芝生に、常緑、冬季の夏芝の保護を目的として寒地型芝草をオーバーシーディングした後、春~初夏にベースのターフへ戻す作業のことをスプリングトランジションといいます。通常は5月の連休前後から梅雨明けの頃までに行いますが、4月下旬から7月上旬までは作業可能です。

オーバーシード用の冬芝として用いられることの多いペレニアルライグラスは、意外かもしれませんが梅雨の時季は一年中で最も旺盛に生長する季節です。この時季に冬芝の勢いが衰えずに、夏芝へ切り替えることができずに困っているという声を良く聞きます。

トランジションの目安は6月中にティフトン系芝草の比率を50%まで持ってくることさえできれば、その後順調に夏芝ティフトン系芝草が生長し、真夏の盛りにも校庭、グラウンドの美しいグリーンを保つことができます。

5~6月は20mm前後の低刈りを月に2~3回行い、ティフトン系芝草の芽に十分に光が届くようにします。梅雨の季節はラージパッチはじめ病害に見舞われやすいので、病害に侵され始める前に、雨で流されずに効果が十分に得られるよう、梅雨入り前に殺菌剤を散布します。このときティフトン系芝草の状態が思わしくない場合は、ティフトン苗の追植またはバミューダグラスの種子の播種を行います。

梅雨時にペレニアルライグラスの勢いにティフトン系芝草の生長が負けていると思われる場合はトランジションを促進するために一気に10~15mmに低く刈込み、夏の暑さに弱く25℃を越えると生長がほとんど止まってしまうペレニアルライグラスにダメージを与えるようにします。

また、ティフトン系芝草は耐塩性があるのに対し、オーバーシードに用いられるペレニアルライグラスなどの寒冷地型芝草は塩分に対し脆弱な面を有します。この性質を利用し、濃いめの液体肥料(硫安肥料100gを水1Lに溶かしたもの)を1m²あたり200ml程度を葉面散布すると、ティフトン系芝草にとっては施肥を行ったことになるのに対し、寒冷地型芝草は生長阻害を受けることになります。

このような方法をうまく組み合わせて、各芝生の現場に即した方法でトランジションを行うことにより、8月末~9月にかけてほぼティフトン系の芝草100%の状態にすることができます。