

私が所属する部署では、乗用車・商用車向けターボチャージャの設計を行っています。ターボチャージャとは、排気ガスのエネルギーを再利用してエンジンの効率を上げる装置です。
ひと昔前までは、一部のスポーツ車両に搭載されるような特別な装置というイメージがありました。ところが近年では熱効率が高まることでの低燃費化や排気ガスの有害成分を減少させるためのパーツとして注目が集まり、ヨーロッパやアジアで需要が拡大。とりわけ、ディーゼル車にはターボ チャージャが不可欠とされ、今後の市場拡大が有望な成長分野となっています。こうしたホットなマーケットにおいて、IHIでは累計で2800万台以上の生産実績があり、イタリア・ドイツ・アメリカ・中国・タイなどにも生産体制を構築。一方で、国内シェアも55%を占め、国内のほぼ全ての完成車メーカーに製品を供給しています。
その中で、私が担当しているのは国内向けのアプリケーション設計です。アプリケーション設計とは、たとえば、お客様である自動車メーカーのエンジン開発担当者から「このような性能のエンジンを開発したい」といった要求スペックが提示されます。これに応じて、ターボチャージャのタイプや流体性能などの仕様を検討・設計し、試作品をお客様のエンジンに搭載後、性能・耐久試験および評価を行います。開発評価が終了すると図面の作成を始めとした量産の準備を行います。要するに仕様検討から量産準備まで、製品設計を丸ごと完結させるのが私の使命になります。いうまでもなく、ターボチャージャ設計はエンジン開発と直結しているもの。
それを全て手がけるということは、ある意味で自動車メーカーのエンジニアよりも濃密にエンジン開発に関わっているのかもしれません。

ターボチャージャの特徴は、とても回転が速い機械であることが挙げられます。
いちばん速いものだと1分間に30万回転。ガソリンエンジンの最高回転数が6000とか7000ですから、文字通りケタ違いに早く回転しており、羽や軸受の耐久性などに関しては相当な技術ノウハウが必要です。さらに、エンジンの間近に搭載されるため、1000℃近い温度条件にも耐えられる設計にしなければなりません。したがって、耐久試験で要求されるレベルも極めてシビア。時には1ヵ月ずっと回転させ続けて、不具合が出ると対策部品を作るのに1ヵ月かけて、再度テストに1ヵ月を費やして…合計3ヵ月かかるというケースもあります。
その間、しっかり耐久性と性能の両立ができるのか、もう生きた心地がしません。ただ、そうした苦労を乗り越えて、ありったけの情熱を傾けて設計したターボチャージャも、いざ量産となれば数万台・数十万台と世の中に送り出されます。自分の手がけた製品が街の至る所で動いている様子を目の当たりにできるのは(直接には見えませんが、車種から載っているかいないかは判断できます)、これぞエンジニア冥利に尽きる醍醐味です。




| 2003年 | 機械事業本部・車両過給機事業部・設計部で、商用車向けターボ開発・ターボ用アプリケーション設計などを担当。 |
|---|---|
| 2006年 | 石川島汎用機械に出向。調達部門で、VA(Value Analysis)/VE(Value Engineering)やサプライヤー選定などを担当。 |
| 2008年 | 現部署に出向復帰。乗用車向けターボ用アプリケーション設計を担当。 |

エンジンルームを見れば一目瞭然ですが、乗用車のエンジン周りにはムダな空間が全くありません。その中に納まり、かつ高性能のターボチャージャを求められる訳ですから、難易度の高い課題の連続です。それを1つ1つ検討して、場合によってはお客様に「配管の取り回しを変更できませんか」と提案して、全てをクリアする。非常に高度なパズルを解くような楽しみもこの仕事にはあります。

大学では数値流体力学、つまりシミュレーション解析について研究していました。一方、現在の仕事で自ら解析をすることは少ないですが、熱流体解析などの結果を評価することがあるので、知識はいまも大いに役立っています。一見、専門分野とは縁遠く思われる仕事でも、培った知識を活用できる場面は意外と多いものです。ですから、なるべく広い視野で会社選びをしたほうがよいのではないでしょうか。
