国内で営業を担当していた頃も、女性であることをとくに意識したことはないのですが、海外のビジネスでは男女の違いはまったくないと言っていいと思います。最近担当することの多いインドの案件では、お客さまの前面に立ってのタフな交渉が続きました。お客さまとの交渉という局面では、お互いが自分の意見を一方的に伝えがちです。しかし、お客さまの要望を汲み取りつつ、「その条件ではコストが上がらざるをえない」「その件は請負者が負えるリスクではない」など、私たちの考え、その意図を説明し続けたところ、先方も私たちの考えが合理的だと認めてくれ妥当な線で合意することができました。日本人の感覚ではどうしても「お客さまとは交渉するだけ無駄だろう」「そこまで言うのは失礼なのでは」と考えがちです。しかし海外では、相手の商習慣や契約に関するマインドを理解した上で、お互いのために、譲れないところは譲れないとはっきり伝えることと必要なのです。今の仕事を続けるうちに私も攻めの交渉ができるようになりましたが、同僚のイギリス人メンバーなどを見ると、もっと強気で攻めていて心配させられることも少なくありません。 リスクヘッジを主にする契約管理は、「守り」を固める仕事ではあります。ただ、私は営業経験もあり「稼げる契約管理」になりたいと考えてきました。契約を取る上で一番簡単なのは、「いつもこうだったから」という理由で、お客さまの意図を確認せずに、要望をそのまま受け入れることです。でも、それでは当事者間の思い違いが生じて本当にお客さまがIHIに期待していたものと違っていたり、IHIにとっても最終的にやって良かったというプロジェクトにはならなかったりします。リスクは本当に広い視野で見なければならず、例えば戦争や地震が起きたらどうするのか、というまさかの事態のことまで契約に含めます。お客さまや協力会社とリスクを分担する、必要に応じて損害保険を組み込むなど、広い視野と柔軟な考えを持って仕事にあたれば「稼げる契約管理」になるのも決して難しいことではないと考えています。

スケールの大きなものづくりを行っている会社で働きたいと思ってIHIに入社し、プラントの国内営業を担当して営業の醍醐味を知り、海外留学に出て「契約」という新たな知識を身につけ、それを強みに海外プロジェクトの契約管理を担うことになりました。IHIを選んだことで、良い形で自分の道を拓いて来られたと思っています。ちなみに夫との出会いも香港留学中で、大学のクラスメートだった香港の人と2014年に結婚し、今は遠距離結婚中です。
今後の目標は、ファナンス、税金に関する知識もつけ、お客さま、パートナー、IHIの関係者すべてにメリットをもたらすプロジェクトのスキームを突き詰めていくこと。また、もともと関心があった海外営業も経験してみたいし、法務部の仕事にも興味があります。いずれにしても新たなチャンスがあれば積極的に挑戦し、その経験が次の目標を教えてくれると思っています。