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8 IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 技術に優劣をつけるのが難しいのと同様に,発明 に優劣をつけることもまた難しい作業です.多 くの受注やライセンス収入をもたらす発明,商品のウ リとなって市場を独占できた発明など切り口はさまざ まで,それぞれに重要な発明です. 切り口の一つとして,外部から見た「功績」とい う視点で評価しているものに公益社団法人発明協会が 主催している全国発明表彰があります.これは大正8 年からの長い歴史があり,発明の分野では最も権威が ある表彰です.というのも,この表彰の最も優秀と認 められる発明には皇室の下賜金を拝受する「恩賜発 明賞」が贈られるからなのです. 実は,IHI も1997 年に大成建設株式会社と連名で 「恩賜発明賞」を受賞したことがあります.これが今 回紹介する球体シールドです.これは土木業界そして IHI 初の「恩賜発明賞」となったものです 最初に,トンネルを掘る機械であるシールド掘進機 を簡単に説明します.シールド掘進機は,茶筒のよう な形状をしており,切羽( 掘削面)にカッタと呼ば れる面板を押し当ててトンネルを掘削します.カッタ には,多数のビットと呼ばれる刃が円周状に配置され ており,掘削する土質や距離などに合わせて材質や形 状と数量を変更します.現在のところ,サンダーバー ドの「ジェットモグラタンク」( 若い世代にはトミ カハイパーレスキュー3 号)のように円すい形のド リルは残念ながら付いていません. さて,このシールド掘進機で地下にトンネルを掘る 場合の手順としては,通常は地表から土を掘って立坑 を施工し,その後,立坑内にシールド掘進機を搬入 し,トンネルとなる横坑を掘削します. しかし,大深度のトンネルの立坑を掘る工法は限り があり,高水圧の地下水対策などさまざまな問題があ りました.そこで発明されたのが,立坑から横坑まで を1 台の機械で掘ってしまう「球体シールド」なの です. 球体シールドのからくりを少し紹介しましょう. てくのすこーぷで視た球体シールドの発明 技術開発の現場で生まれた「発明」は,特許という知的財産になります. 今回は,シールド掘進機のうち球体シールドの特許について紹介します. ( 特公平7-65457 号) 回転前 回転後 球体シールド