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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 11 Intangible Asset 空機やエンジンのシステム電動化は世界的なトレンド というコンセンサスが出来上がった.そして前述の研 究会を立ち上げることになり,一方で社内研究を続け ているエンジンの燃料ポンプを電動モータで駆動する 電動燃料システムは,昨年,試作品をリグで試験する までに至った.これら一連の実績は「More Electric Engine 制御技術の実用化研究」( IHI 技報Vol. 52 No. 1 ),「航空機・エンジン電動化システムの現状と 動向」( 同Vol. 53 No. 4 )に詳しい. 優れた技術を見つけて組み合わせる 「電動化技術は,世界ではすでにボーイング787 や エアバスA380 において一部が実用化されています. 研究会が目指しているのは,まだ誰も思いついていな いような革新的なシステム.新しいシステムができたと しても,その航空機が一般に使われるのは20 年,30 年先.それぐらい長いスパンの取り組みです」 さまざまな人と出会ったり,調べを進めたりすると 社内はもちろん,社外でも思わぬところに優れた技術 が次々に見つかることが面白いと言う. 「これとあれを組み合わせたら効率が良くなる,と か,整備作業が楽になりそうなどと考えるのが楽しい んですよ.」 本人はさらりと言うが,技術的にも納得できるアイ デアだからこそ周囲も刺激され,力を合わせて実現に 向けて動き出す.技術に裏打ちされた発想力,それを 伝える力,さらには人をまとめるコーディネート力 が,次世代のジェットエンジンを生み出す“ 見えな い資産”として森岡の中で働いている. 頼性や性能には自信をもっている.一方で複雑で精密 なゆえの難しさや,整備面での手間の多さも知ってい た.そこで生まれたのが「仮に油圧を電気に代えるこ とができれば,よりシンプルな機構で制御でき,油や 配管も減らせるので整備も簡単になる」という発想だ. 電源や電気駆動部分が増加することにより質量は増す が,機構を簡素化し,油の質量も減ることなどを航空 機全体でトータルに捉えればクリアできる. 「目指しているのは“ 人と地球にやさしい航空機を 実現する”ことです.乗る人,使う人,整備する人, 誰もが使いやすい次世代の航空機に,日本の技術を送 り込みたいですね.」 航空機エンジンのシステム電動化に惹 ひ かれた森岡 は,研究開始を目指して独自に検討を重ねレポートを まとめたが,当初,社内レビューでは散々な反応だっ た.しかし諦めず,毎週のように“ 電動化で可能に なること”“ 電動化の課題”などを資料にまとめ, アポイントをとって上司に説明を続けた.その結果, 試作費までは認められなかったが,海外の学会に出掛 けて発表や情報収集するための渡航費を獲得,2010 年に社内研究としてスタートした. 国際学会で発表すると,第一線のエンジニアや研究 者の感触は上々で,なかには「試作品は作ったのか」 と声を掛けてくる人もいた.幾つも学会に出掛けては 反応を社内にフィードバックするうちに,社内でも航 瑞穂工場製造グループ吉田主幹と 油圧補機スタンドにて MEE 電動燃料システム試作品