【DO!BOOK・ページリンク】
gihou_54_3   17 / 84

BOOKをみる

10秒後にBOOKのページに移動します


IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 13 Intangible Asset 仕上がりの精度を保つために,体調管理には気を遣 う.1 日中立ちっぱなしの作業で足腰に疲労は蓄積し, 目視確認で目も酷使するが,しっかり休養して翌日に 疲労を残さないことを心掛けている.常に同じ作業 を,同じ集中力で続けることができるからこそ,「い つも」と違うことがあったときに素早く気付くこと ができる.例えば,手動バランス工程に回ってくる部 品数が通常よりも増えた場合に不具合の原因が思い当 たるのも経験の蓄積からだ.手動の前段である切削機 の刃物の切れ味が悪くなっているのではないかと思え ば,前工程担当者に伝えて調整してもらう.班長であ る今は,技術はもとより,マニュアルにない“ 心構 え”や“ 勘所”も含めて,経験を若い作業者たちに 伝えていくのが課題だ. 「小さなインペラ一つひとつが,ターボチャー ジャーになって,一つひとつ車に搭載されていきま す.万一インペラがバランス不良のままだと,重大な 事故につながりかねません.私自身も車を運転しま す.そう思えば,同じ作業の繰り返しでも,一つたり とも出来の悪いものがあってはなりません.そういう 気持ちで日々作業しています」 作業を中断して1 時間あまりのインタビュー.現 場に戻って行った小松は,たまったであろう数十枚の インペラの補正で今日の自分にOK を出せるだろう か. 誤しながら立ち上げた. 「最初はほかの工程の作業者も慣れていないので, 自動バランスでNG になって手動バランスに流れて くる部品の数も多く,やっても,やっても終わりませ んでした( 笑).でも,皆がそれぞれに努力して精度 を高めて,なんとかその時期を乗り越えました」 小松自身は,3 か月ほど経ったころにはコツをつか み,時間出来高と呼ばれる1 時間当たりの処理枚数 が早くも25 〜 30 枚になっていたというから,もと もと勘の良さもあるのかもしれない. 同じ作業でも,一つひとつ心を込めて “ ものづくり現場のおもしろさ”は,幾つもあると 小松は言う.一つは,時間出来高○○枚などの目標が あることで自分の技能が数値化され,それを高めるこ とで全体に貢献できること.工夫して,少ない切削お よび手順でOK を出せば,それだけ出来高も上がる. 「機械が“ OK ”と表示してくれるので,自分でも自 分に対して“ OK ”と肯定できる.気持ちいいです よ.」 現在,小松がバランス補正を行うインペラの種類 ( スペック)は20 種類ほど.途中で変更するとき は,「段替え」といって作業台の治具を取り替えるな どの作業が必要だ.急ぎの機種が入るときなどは 1 日に数回段替えを行うこともある.どの順番にする といちばん効率的かを考えて,1 日の作業を組み立て ることに頭を使うのもおもしろい. コンプレッサーインペラ