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14 IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 )  見えない資産 高品質の鍵を握る材料評価は 匠の技術に支えられていた ボイラなどの金属材料の保守・点検・延命措置に不可欠な材料評価のレベルは,検査・計測技術によって 大きく左右される.ここでは,多種多様な材料検査・計測技術に精通し,これらを駆使して後進とともに 日々問題解決に当たっている検査・計測の匠を紹介する. IIC の材料評価技術 株式会社IHI 検査計測 ( IIC ) は,IHI の検査・計測 部門が1974 年に独立して発足した.IHI 以外の企業 からも各種検査・計測業務を受託するほか,検査・計 測装置の開発・製造や,検査・計測および分析のコン サルティングも引き受ける.本日の主役近藤直美が所 属する計測事業部材料試験部は鉄鋼材料,非鉄金属材 料,複合材料などの材料特性を調べることを主な業務 としている.材料特性は @ 強度や硬さのような機械 的特性,A 密度や比熱のような物性,B 化学成分や 活性化エネルギーのような化学的特性,など多岐にわ たっている. 近藤が率いるチームは主にボイラの材料評価を担当 している.部材の形状や材料の状態を虫眼鏡レベルか ら電子顕微鏡レベルまでさまざまな拡大スケールで観 察し,材料の健全性あるいは損傷状態を詳しく調べた り,上記の材料特性も勘案したりしながら寿命診断や 損傷原因の追究を行っている. ボイラは火力発電所の心臓部であり,私たちの生活 に不可欠なエネルギーを作り出す社会的責任の重い設 備である.石油やLNG のようなエネルギー資源を有 効に活用するためには,発電効率を高めることが重要 であり,高効率化には蒸気温度や圧力を高めることが 効果的なことから,高温・高圧に耐える材料が求めら れるとともに,その検査技術の重要性もますます高 まっている. 材料観察は損傷原因究明の要 損傷状況の観察には目的に応じて断面観察と破面観 察がある.断面観察では破面を横切る断面を見て,き 裂がどのように進展したかを見極める.さらに,損傷 近傍の金属組織を調べ,材料の健全性を確認したり, 熱履歴を推測したりしながら損傷原因を絞り込む.ま た,例えば損傷原因が金属疲労である場合繰り返し負 荷による微小なしま模様が現れるなど,損傷破面は負 荷状況に応じて特徴的な形状を示すため,破面を露出 させ電子顕微鏡で観察を行う.損傷状況を調べる方法 に超音波などを用いる非破壊検査もあり,試料を切り 取る必要がない利点はあるが,損傷原因まで突き止め るには断面観察や破面観察が不可欠である. 断面観察の場合,まず試料を観察面が現れるよう切 断して試料を採取するが,適切な位置で切断しないと 損傷状況や観察すべき金属組織が捉えられなくなるの で,的確な判断力が要求される.切断したものは元に 戻せないので失敗が許されない作業でもある. 株式会社IHI 検査計測 計測事業部 材料試験部 福浦グループ 課 長 近藤 直美