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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 15 Intangible Asset 製部材の補修溶接に関する研究では,お客さまと連名 で学会発表できるレベルまで高めることができ,個人 的にもやりがいのある仕事になりました.」と誇らし げに語る近藤は20 年以上の経験をもちすべての業務 を熟知しているからこそ,技術者それぞれの適性を見 極めて仕事を割り振ることができるのである.後輩た ちには自らの経験を踏まえて「若くて身軽なうちに 現地調査などにも参加して見聞を広め,いろいろな経 験を積んでほしい.ものの見方は一つではありません ので,多面的な観察力をつけることは必ず役立ちま す」とアドバイスしているという. 検査・計測のさらなる発展 今後の発展が注目されている技術分野の一つに複合 材料の検査・計測がある.従来の鉄鋼材料やチタン合 金などの非鉄金属材料とは異なるFRP( 繊維強化プ ラスチック)のような複合材料が,航空・宇宙分野 などで使われる場面が増えているが,試料が切断の際 に割れやすく,従来の検査方法がそのまま適用できな いという課題を抱えている.「今後このような課題に も挑戦したい.製品の品質が向上して損傷が限りなく ゼロに近づいても,新素材の開発が続く限り材料調査 の技術向上にも終わりはありません.」静かにほほ笑 む近藤の横顔に最先端技術を支えてゆく強い意志と自 負を見た. その後,切断面を鏡面研磨して腐食すれば断面の金 属組織が観察できるが,単純に見える研磨作業にも経 験に基づく技術力が必要である.初心者が研磨すると 研磨傷が残ってしまい,組織観察に支障をきたすこと もあるが,IIC には経験豊富な「磨きの匠」が何人も そろっており,教科書顔負けの金属組織を現出させ る.得られた観察面を拡大鏡や光学顕微鏡,走査電子 顕微鏡,硬さ試験機,レーザー顕微鏡などを駆使し, 観察,評価,判定などを実施して報告書や提案書をま とめる. 鋳鉄・鋳鋼製部材の補修溶接の検討では,従来困難 だった補修・更新計画の策定を近藤らの技術で可能に した.従来の非破壊検査に基づく方法では経年劣化や 欠陥を検出するのが難しかったが,近藤らは表面組織 観察,断面マクロ観察,断面ミクロ観察,強度確認の ための引張試験,硬さ分布計測などの検査・計測方法 を駆使して克服した.近藤らが提案した補修方法で問 題なく溶接できることが実証された. 後進から得る満足と期待 近藤は「道具の使い方一つひとつにもノウハウが あります.チームの技術者は皆それぞれにそのノウハ ウを蓄積しています.若い人でもとても上手に道具を 使う腕をもっています.私は20 年以上この仕事に携 わっていますが彼らから学ぶことも多いですね」と 後輩たちの成長を喜ぶ.「最近ではお客さまからの依 頼に従って検査するだけでなく,IIC から最適な検査 項目を提案するケースも増えており,それがIIC の 強みにもなっています.4 年前に実施した鋳鉄・鋳鋼 研磨作業 自動研磨機による研磨が主流だが手研磨も行う ステンレス鋼溶接部の隙間に発生した応力腐食割れ