IHI 技報　Vol.54 No.3 ( 2014 ) 19 我が社の看板娘 して残っていたもの，�Cでいったん凝縮したもの） が瞬間的に蒸発する．この現象が突沸だ．�F これに よって部品は一気に乾燥する．�G 蒸発した洗浄液は 冷却コイルに触れることで再度凝縮して回収される． このプロセスはわずか30 秒ほどで終わる．従来の真 空乾燥が15 分掛かっていたことから劇的な時間短縮 とエネルギー削減を実現した． (1) の工程でのエネルギーはヒートポンプを導入す ることで大幅な節減を図った．イメージとしては，洗 浄液を蒸発させるヒーターをエアコン暖房の室内機， 蒸発させた洗浄液を液化してシャワーにする部分を室 外機と考えればよい．従来は加熱は加熱，冷却は冷却 と別々にエネルギーを消費していたものを，熱をうま く回すことで電力の消費を1/4 に抑えることができ た． この二つの工夫でトータルの電力量の50％カット に成功した．さらに以上の二大特長に加えて，クライ オ凝縮器をうまく使うことで洗浄液の濃縮率が90％ 以上となり，洗浄液消費量も半分以下にした． このように画期的な省エネルギーを実現した EvaCryo は，一般社団法人日本機械工業連合会の 「平成25 年（ 第34 回）優秀省エネルギー機器表 彰」の最優秀賞である「経済産業大臣賞」を受賞し た．受注も好調で，多くのお客さまの省エネルギーに 貢献している． 問い合わせ先 株式会社IHI 機械システム 真空新素材炉事業部　営業部 電話（ 03 ）5781 - 5360（ 品川） 　　（ 058 ）379 - 1310（ 各務原） URL：www.ihi.co.jp/ims/ たEvaCryo（ Eco，Vacuum，Cryo から）は，熱を上 手にさばくことでこれらの課題を解決した． 原理になっているのは，蒸発と凝縮についての次の 基本的な性質である．A. 液体は一定の圧力のもとで 温度を上げて沸点に達すると蒸発し，沸点以上になっ た気体の温度が沸点以下まで下がると凝縮し液体に戻 る．大気圧下の水であれば沸点は100℃である．B. 圧 力を下げると沸点が下がり低い温度で蒸発する．(3) で洗浄液が蒸発するのはこのため．これに加えて気体 と液体では体積が1 000 倍以上異なる．EvaCryo では この性質に「突沸」という現象を加えて，(3) の工程 に代わる「クライオ乾燥」と名付けた以下のような プロセスを作り上げた．�@ 洗浄室の隣に冷却コイル で低温に維持されたクライオ凝縮器という部屋を設置 する（ Cryo は低温を意味する接頭語）．�A 洗浄液の 蒸気とシャワーによる洗浄が終了したら，洗浄室とク ライオ凝縮器の間の仕切り（ 真空弁）を一気に開放 する．�B 洗浄室内の蒸気がクライオ凝縮器に移動す る．�C 蒸気が凝縮して体積が1/1 000 以下になる． �D その結果，室内の圧力が1/1 000 以下に急激に下 がる．�E 今度は圧力が下がったため，洗浄室内の洗 浄液（ 部品の表面や行き止まり穴などの細部に液と 熱処理工程での洗浄機使用例 機械加工後 の処理品 前洗浄浸炭焼入れ （ 油使用 ） 後洗浄 次工程 クライオ乾燥原理 飽和蒸気 蒸発拡散 115℃ 入口ドア 洗浄室 処理品 蒸気発生室 音速移動凝 縮 冷却水 15℃ 以下 真空弁クライオ凝縮器 チラー 凝縮液リターンタンク （ 回収率99％以上 ）