【DO!BOOK・ページリンク】
gihou_54_3   25 / 84

BOOKをみる

10秒後にBOOKのページに移動します


IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 21 我が社の看板娘 新造車両8 両のうち3 両は部分開通に合わせて 2013 年に,残りの5 両は2014 年の全面再開に合わ せて順次納入.このうち,2013 年の3 両と2014 年 の3 両の計6 両が一般車と呼ばれる36-700 形,そ のほかの2 両はいわゆるイベント車で,今回,南リ アス線に導入された36-R3 形はレトロ調の車両,北 リアス線の36-Z1 形はお座敷車両である. 三つのタイプに共通する変更点は,ブレーキシステ ムが,電気指令式となったこと.また,煩雑に配置され ていた運転取扱機器をモニタ設定器に集約し,計器台 レイアウトをすっきりさせた.さらにそのモニタ設定器 から車両の状態監視やメンテナンスも行えるようにし た. レトロ調車両でタイムスリップ気分 36-700 形は,主に通勤通学を目的に設計され,室 内はすべてクロスシート( 進行方向に対して交差す る向きに配置された座席)の配置となっている.一 般車両ではあるが,団体客やイベントなどに対応し て,取り外し式の大型テーブルを設置できる構造を採 用.また,出入口にあったステップの廃止やトイレも 大型化し,車椅子のお客さまでも安心して使用できる ように配慮した三陸鉄道初のバリアフリー対応車でも ある.出入口ドア付近には停車時に乗客が操作できる ドア開閉ボタンがあり,冷暖房効率向上のための仕組 みも取り入れられた. 36-R3 形( なお,R3 形の「R 」は,「retorospective 」 の「r 」の意味)は,過去にも作られたレトロ調車両 国鉄の財政悪化により廃線が決定してしまった.しか し,岩手県と沿線市町村が第三セクター方式で運営会 社を立ち上げ,開業にこぎつけた. その鉄路が,東日本大震災により,駅舎や路盤の流 出など路線の300 か所以上で甚大な被害を受けた. 車両も流失こそ免れたが,3 両が津波による浸水被害 で解体処分となった.しかし,震災からわずか5 日 後に北リアス線の久慈−陸中野田駅間が,また,比較 的被害が少なかった区間では3 月末までに運転を再 開した.このことは,「三鉄( 三陸鉄道)が動いたこ とが,震災後の沿線住民の心を支えた」などと報道 された.そして2014 年4 月6 日に盛大な式典とと もに全線で運転が再開.新造車両は,人々のこうした 思いを受けて造られたものでもある. 海外からも支援を受けた新造車両 震災以降にNTS が三陸鉄道に納入した車両は合計 8 両.津波の被害を受けたのは3 両だが,ほかにも 耐用年数の上限に近づいていた車両があったことか ら,第三セクターのローカル線にしては珍しく,一気 に入れ替えることとなった. これには,中東のクウェートからの支援もあった. 東日本大震災のとき,クウェートからタンカー1 隻 分の原油が支援物資として届き,それを被災県に振り 分け,その一部が三陸鉄道に贈られ車両購入費に充て られた.前述の全線開通の式典にはクウェートの大使 も招かれ,また,車体には日本語と英語に加えアラビ ア語でも感謝のメッセージが入れられている. ホームにて太鼓の歓迎を受けるレトロ調車両 8両すべての車両に 「クウェート国からのご支援に感謝します。」の文字が