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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 23 我が社の看板娘 ち合わせで行き詰まった後,メンバーでとある居酒屋 に入ったところ,その雰囲気がまさに求めていたイ メージで,一気にその場で決まったという裏話もあ る. イメージが出来上がったが,設計段階ではデザイン の細部にわたってリクエストがあり,車両メーカーと して実現させるには困難の連続だった.しかし,これ までさまざまなローカル線で特殊な車両を手掛けてき た蓄積がここで役立つことになる.例えば,JR 東日 本の「SL ばんえつ物語号」の車両では和紙とガラス を合わせて難燃性にした素材を天井材に使ったが,今 回はそれを古民家風の調度に活かす,という具合だ. 列車に乗ることが支援になる 今回の全線再開に伴い,運転本数は北リアス線は宮 古−久慈間上下で1 日11 本,南リアス線は盛−釜石 間の上下で1 日9 本になった.期待されている観光 客数は,新車両導入前にようやく震災前と同等レベル になってきたところであり,新しいイベント用車両は, 新規の乗客を呼び込む起爆剤として期待されている. それでも鉄道の運営面での課題は依然として大き い.鉄道再開にあたっては「津波で集落全体が流さ れたような場所に,駅だけポツンと再開してどうなる のか」という議論もあった.しかし,沿線住民の “ 三鉄”に懸ける期待と希望は悲観論を上回った. 鉄道を通すのだという三陸鉄道の強い思いと,地域 の方々の復興への願いは,『鉄道が走らなかったらそ の先はない』ということで一致していた.だからこ そ,再開式典の日は,朝から晩まで沿線で手を振る人 が絶えなかった. 三陸鉄道では以前から冬場の「こたつ列車」をは じめさまざまな企画を立て,観光客誘致を図ってき た.震災後は,震災の遺構を巡り,語り部の解説を聞 く「震災学習列車」にも多くの参加者が集まってい る.しかし,観光客を呼び続けるには,常に新しい企 画が必要となる.そこでNTS では,あるアイデアを 三陸鉄道スタッフとともに練り上げた.それは本物の 運転席の横に設置した子供用の模擬運転台で,機器は 引退し解体される車両のものを使い,ハンドルやメー タ類が動くようになっている.これは,トンネルが続 いて景色があまり見えない区間でも列車に乗ること自 体を楽しめる仕掛けだ. 新しい車両を納入したがこれで終わりではない.鉄 道の魅力を高めお客さまに乗っていただくことが,復 興への貢献なのだ. ぜひ,三陸鉄道に乗っていただきたい. 問い合わせ先 新潟トランシス株式会社 営業室 交通営業部 電話( 03 )5293 - 5063 URL:www.niigata-transys.com/ 大漁旗に見送られる一般車両