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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 27 我が社の看板娘 うマシンがあり,牧草やデントコーンを細断し圧縮し てロールにまとめ,それをフィルムでラップし良質な サイレージにする技術が確立していた.それを応用し た結果,ラップしてから発酵が進んでサイレージにな るまでおよそ90 日,その後2 年間は保存できる高 品質な発酵TMR のロールを作ることに成功した. ごみ減量,エコシステムの循環に寄与する 今のところ,食品残渣であれば何でもロール成形が 可能なわけではない.可変径フィードラッパーの開発 に当たっては,水分含有量や形状などが異なる材料を どのぐらいの割合で粗飼料と混合すればまとまるかと いう成形適応性を,細かくデータを取り調査した.実 際の納入時には,どのような食品残渣を使うのか,ど のような飼料設計にするのかなどをヒアリングし,テ ストを重ね,また現地で微調整を行い納入している. 今後の課題としては,できるだけ幅広い種類の食品 副産物,食品残渣に対応できるようにすること,ま た,機械部分のメンテナンスをしやすくすることなど が挙げられる. 可変径フィードラッパーはすでに本州の2 か所の TMR センターで,大きさ,栄養価ともに酪農畜産農 家のニーズに合わせた飼料生産に活躍している.同時 に,周辺地域で入手できる食品残渣を有効活用するこ とで地域のごみ減量,エコシステムの循環にも大きく 寄与し,注目を集めている. 問い合わせ先 株式会社IHI スター 営業本部 営業企画部 電話( 0123 )26 - 1123 URL:www.ihi-star.com/ 二つ目は,栄養価の高い飼料を地域で自給して混合 することだ.前述のように濃厚飼料はほとんどを輸入 に頼ってきたが,昨今の飼料価格および輸送費の高騰 は多くの農家の経営を圧迫している.一方で周囲を見 渡せば,野菜や果物をジュースにした搾りかす,ビー ル酵母かす,馬鈴薯 しょ でんぷんくずなど栄養価の高い加 工食品の副産物や食品残渣が存在する.一部はすでに 飼料に使われてもいるが,一度に大量に出るため保存 方法がなく,多くは産業廃棄物として処分されてき た.これらを牧草などと混合し発酵TMR にできれば 保存の問題も解決し,飼料の自給化が進む.何より も,農産物が地域で循環することになり,環境負荷の 軽減につながる. 任意径のロールにまとめる技術 可変径フィードラッパーの開発において,一つ目の 目的は,ロールの直径を85 cm から110 cm まで任意 に( 幅は86 cm で一定)設定できるようにすること で実現した.酪農畜産農家は購入前に自分の欲しい大 きさを飼料会社にオーダーすれば,使いきれる必要な 大きさのロールが手に入る.それを可能にした技術は こうだ.定形サイズのロールを作るときは1 本のみ 組み込まれているベルトを,ロールの外周に沿うよう に3 本配置したことで,任意のサイズが出来上がる. しっかりと圧縮成形するために張力を調整,最後には エアアシストでネットを繰り出しまとめる.ロール成 形に掛かる時間は,最小径の作業に約80 秒,最大径 でも約130 秒.出てきたロールは1 分余りでラップ される. また,TMR に食品副産物を混ぜてロールにまとめ る技術を日本で初めて確立し,二つ目の目的も達成し た.ロールにする際,牧草や茎のままのデントコーン などは互いに絡み合うため容易にまとまる.しかし, TMR は飼料の材料がバラバラに細断され混合されて いるためまとまりにくく,圧縮成形できなければ密閉 して発酵させることは難しい.実はこれまでも発酵 TMR を作る試みはあった.トランスバッグといわれ る1 t 以上入る円筒形のバッグにTMR を圧縮して詰 め込んで発酵させる方式だが,完璧に密封できないた め品質が維持できなかった. STAR には,すでに「細断型ベーララッパ」とい 可変径フィードラッパーの側面図