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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 37 我が社の看板娘 世界トップレベルの精密鋳造の技術を応用 ICC は,航空エンジンや産業用ガスタービンに使 用されるタービン部品を主に生産している.タービン 部品は,寸法が高精度であるほか,高い機械的強度 ( 耐久性)を実現する材料的特性( 結晶構造制御,表 面酸化被膜の回避など)が求められる.これを実現 するため,真空炉内で鋳造ができるロストワックス法 と呼ばれる精密鋳造法が採用されている. 一方,人工股関節は,再手術を回避するため長寿命 であることが求められる.このための機械的強度を確 保するために,ステム用の材料としてはコバルトクロ ム合金やチタン合金が用いられる.これらは機械加工 に多大な労力を要するため,低価格を実現する製造法 として精密鋳造法が選択肢になる.精密鋳造において は,どの工程でも温度・湿度・時間の厳密な管理が必 要であり,手作業も多く熟練した技術が求められる. ICC の精密鋳造技術は,タービン部品の製造では世 界トップレベルにあり,この技術と製法を活用して低 価格で丈夫な人工関節実現に寄与している. 精密鋳造工程などの詳細については,「チタンアル ミ翼が実現する航空エンジンの軽量化」既報のIHI 技報Vol. 53 No. 4 ( 2013 ) 16 〜 19 ページをご覧いた だきたい. 精密鋳造技術の応用で人々の生活を豊かに ICC は人工関節からジェットエンジンのタービン部 品まで,精密鋳造部品における日本のトップメーカー として,世界でしのぎを削ってきた自負がそこにはあ る.このように,ジェットエンジンで培った技術が, さまざまな応用を経て人々の生活を豊かにする一助と なる.今後も市場の伸びに勢いを得て,医療機器メー カーとともに,医療機関への普及を図っていく. 問い合わせ先 株式会社IHI キャスティングス 営業部 電話( 042 )500 - 8365 URL:www.ihi.co.jp/icc/ 1995 年と2013 年の比では膝関節で3.9 倍,股関節 で2.5 倍へ増加しており,今後,年間5%の伸びが見 込まれている. 日本人の体形に合った人工関節部品を製造 人工関節置換手術の対象となる部位には股,膝,脚 などがある.人工股関節は主に,シェルカップ,シェ ルライナ,骨頭,ステムと呼ばれる部品でできてい る.骨頭とシェルライナで形成される関節面が滑って 動くことで関節機能を果たす.ステムは股関節に掛か る大きな力に耐えて骨頭を支えるため,土台として大 腿 たい 骨に埋め込む部分である.人工股関節は,セラミッ クスや金属でできている. 膝関節と股関節の人工関節置換手術件数は全体で年 間約13 万件にものぼっているが,その8 割以上が輸 入品である.輸入品は,欧米人の体格・骨格・生活様 式に合わせて作られているため,日本人の骨格に適合 しにくいことが少なくない.サイズバリエーションも 3 種類ほどで,小柄な人には子供用の人工関節を用い なければならないこともある.サイズが合わないと, 術後10 〜 15 年で再手術せざるを得ないケースが多 く,置換部位の骨折などのリスクも高まる.そこで, 株式会社IHI キャスティングス ( ICC ) は,日本人の 骨格に配慮した設計,耐久性や経済性に優れた国産品 を,医療機器メーカーなどと共同開発した.現在,13 種類のサイズバリエーションを製造している.より個 人の体形に適合したサイズを選択できるようになった ことで,耐用年数も延びている. 人工関節置換手術件数の推移グラフ ( 人工関節ライフHP( http://kansetsu-life.com/comm_deta/ 8_all.html#12_02 )の人工関節手術件数グラフをもとに作成) 0 20 000 40 000 60 000 80 000 100 000 120 000 140 000 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 :股関節 :膝関節 年 件 数