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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 51 保する機能ももつ.第2 図に,低負荷時の燃料噴射ノズ ル本数制限を示す. 2. 3. 2 シーケンシャル噴射 第3 図にシーケンシャル噴射を示す.一つのシリンダ に複数装備されている燃料弁を時間差で噴射させる制御方 式である.これは,熱発生率の制御を目的としており,先 に述べた燃料噴射圧力制御と組み合わせることで,より精 緻な熱発生率制御を実現している. 熱発生率を制御する重要性は,3 章で述べる. 2. 4 排気弁開閉制御について 第4 図に排気弁開閉制御を示す.RT-flex 機関および W-X 機関では,排気弁開閉制御にもコモンレール技術が 適用されている.機関の潤滑油を作動油とし,クランク軸 からサーボポンプを駆動し昇圧した油をサーボオイルレー ルに蓄圧する.その後,燃料噴射制御と同様にWECS か らの指令によって,EVCU ( Exhaust Valve Control Unit ) に装備されているレールバルブを切り替えることで,油圧 によって排気弁を開く.排気弁には空気ばねが組み込まれ ており,レールバルブを切り替えることで,排気弁駆動ユ ニット内の油が押し戻されて排気弁が閉じる. 従来のカムによる排気弁駆動では,カムプロファイルに 基づいた排気弁開閉動作となるため,出力や機関チューニ ング方法に応じたフレキシブルな排気弁開閉制御を行うこ とができなかった.また,機械系駆動機構上の制約から, カムプロファイルは,なだらかな形状にする必要があり, その結果,排気弁の開閉もなだらかなカーブとなり排気最 適制御の自由度が制限されていた. 3. フレキシブルな制御による環境負荷低減 3. 1 燃料消費率とNOx 排出率の同時低減 一般的にディーゼル機関において,燃料消費率とNOx は相反する関係にあり同時低減は難しい.ピストンが上死 点 ( TDC ) 付近にあり,燃焼室容積が小さい期間に燃焼を 完了させるチューニングを行うことで熱効率が上がり,燃 料消費量を低減できるが,燃焼室内の作動ガス温度は高く なるためNOx は増加する.これはNOx の大部分は,空 気中のN2 とO2 の熱反応によって生成したものであり, この生成速度は,温度依存性が非常に大きいためである. たとえば,燃焼期間が10 ms 程度の場合,火炎温度が 2 200 K の場合に比べ2 400 K では,NOx 生成量が10 倍程度になる. このため,NOx 排出率を削減しつつ,燃料消費率を低 減するには,きめ細かい制御によって燃焼温度上昇を抑制 しながら良好な燃焼を実現する必要がある.この燃焼を実 現するために,RT-flex 機関ではコモンレール式電子制御 機関の優れた機能を活用しており,以下にそれらの効果に ついて述べる. 3. 2 シーケンシャル噴射の効果について 燃料のシーケンシャル噴射は,燃料噴射率を制御するこ とで単位時間当たりの発熱量( 以降,熱発生率)を制御 している.ディーゼル機関は,シリンダ内に充填された空 23456 サーボオイルポンプ サーボオイルレール 200 bar シリンダ 排気弁 燃焼室 クランク WECS-9520 油圧アクチュエータエンジンコントロールシステム 第4 図 排気弁開閉制御機構 Fig. 4 Exhaust valve control system 負 荷 10%以上 負 荷 5 〜 10% 負 荷 5%以下 燃料噴射燃料噴射模式図 第2 図 低負荷時の燃料噴射ノズル本数制限 Fig. 2 Control of number of fuel injection nozzle used at low load ( b ) 3 個の燃料弁からの  燃料噴射模式図 ( a ) シーケンシャル燃料噴射 燃料レール圧力 針弁リフト クランク角度 針弁リフト 小大 圧 力 低高 前後 第3 図 シーケンシャル噴射 Fig. 3 Sequential injection