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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 53 になり,排気弁開閉応答性を改善し,弁流路の流量係数が 向上されていることが分かる. さらに,過給機系の排気ウェイストゲートの有無など, 機関仕様によっても最適な排気弁閉タイミングは異なるた め,機関のもつポテンシャルを最大限に引き出すためにも 排気弁の開閉タイミングのフレキシブルな制御性が得られ たことは,最適チューニングを目指すうえで重要である. 上記において,燃焼に必要な空気量を確保しつつ,圧縮 比をできる限り低減するには,掃気圧力( 過給圧力)を 高め,空気密度を高めておけばよい.この掃気圧力は過給 機性能に依存する部分が大きく,大型舶用機関の環境負荷 低減において,高圧力比かつ高効率な過給機が非常に重要 な役割を果たしている. 上記に述べたチューニング方法の違いについて,第7 図にシリンダ内圧力の計測結果比較を示す.このような燃 焼によって低NOx・高効率燃焼を実現している. 4. コモンレール機関の進化 RT-flex 機関の後継機関として,さらなる船体との適合 性や熱効率の向上を目指したW-X シリーズ機関がリリー スされている.これらは,RT-flex 機関( コモンレール式 電子制御機関)のさらなるロングストローク化による機 関回転数低下,最新の燃料噴射機構,制御システムなどが 盛り込まれている.コモンレール式電子制御機関の進化と 優位性を示す例として,第8 図に熱効率向上に効果のあ る燃料噴射機構の改善の一環として,噴射制御弁を燃料高 圧管の前に配置した場合( RT-flex 機関)と,高圧管の後 に配置した場合( W-X 機関)の燃料噴射挙動の数値シ ミュレーション結果比較を示す. 噴射制御弁を燃料高圧管の前に配置した場合は,主噴射 終了後に2 次噴射をしている( 第8 図:@参照).実際 の機関でも,条件によっては, 2 次噴射が発生しているこ とが確認されており,2 次噴射によってシリンダに投入さ れる燃焼に寄与しない燃料の削減は燃料消費量削減につな がる. また,従来方式では,噴射の終わり方が緩やかであるの に対し,噴射制御弁を燃料高圧管の後に配置した場合は, シャープに噴射圧力が下がっており,かつ噴射終わりも早 い( 第8 図:A参照).噴射圧力の緩やかな低下は,低 圧力での燃料噴射による燃焼の悪化を誘起することから, 噴射制御弁を燃料高圧管の後に配置することによって燃焼 改善が期待される. さらに,高圧管後に噴射制御弁を配置することで,指令 から実際に燃料が噴射されるまでの応答遅れが短縮されて いることも,機関制御性の改善に大きく貢献する要素とな る( 第8 図:B参照).なお,実際の機関ではこの応答 遅れを加味した制御を行っている. 5. 結    言 DU- バルチラ大型舶用ディーゼル機関は,クランク軸 に同期するカム軸回転を基準に制御されていた従来の常識 を一新し,カムレス機関として排気規制への適合や運用出 圧縮圧力同等 排気弁遅閉 掃気圧高排気弁遅開き :1 次規制対応 :2 次規制対応 圧 力 低高 クランク角度 前後 第7 図 シリンダ内圧力の計測結果比較 Fig. 7 Comparison of internal cylinder pressure 2 200 2 000 1 800 1 600 1 200 1 000 1 400 800 600 400 200 0 10 9 8 7 5 4 6 3 2 1 0 100 80 60 40 0 .20 20 .40 .60 .80 ( MPa )( mm ) ( cm3/s ) 0 10 20 30 時 間 ( ms ) 2 200 2 000 1 800 1 600 1 200 1 000 1 400 800 600 400 200 0 10 9 8 7 5 4 6 3 2 1 0 100 80 60 40 0 .20 20 .40 .60 .80 ( MPa )( mm ) ( cm3/s ) 0 10 20 30 時 間 ( ms ) ( a ) 燃料高圧管前に噴射制御弁を配置 ( b ) 燃料高圧管後に噴射制御弁を配置 @ A B A ( 注 ) @:2 次噴射 A:噴射の終わり方 B:燃料噴射の応答性 噴射制御弁入口圧力 燃料流量 針弁リフト 第8 図 燃料噴射挙動のシミュレーション結果比較 Fig. 8 Simulation comparing F.O. Injection