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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 65 除去方法の解析は行われていない ( 1 ).また,平山の研究 においては,ポリイミドフォイルを使用した微小デブリ除 去方法の提案および減速させるための厚みの計算まで行っ ているが,有効断面積に関して2 例示しただけで,ロ ケットへの収納方法やポリイミドフォイルの展開方法など は検証していなかった ( 2 ).本研究では,破砕モデルを用 いてポリイミドフォイルを効率的に使用した場合の微小デ ブリ除去効果の検証を行うことを目的としている. デブリ除去衛星のミッションでは,@ 大型デブリへの 接近除去 A 小型デブリ群の除去 B 背景デブリの除去, の三つのシナリオが考えられる.従来の研究で,Bのバッ クグラウンド・デブリの除去はフラックスが小さく,効果 が得にくいことが分かっているので,本研究では,Aのデ ブリクラウドの除去に絞って効果を検討している.具体的 には,破砕事象の発生直後に,クラウドが拡散する前のフ ラックスの濃いデブリクラウドの中に除去衛星を投入した 場合の,クラウドの浄化効果を確認している. 2. デブリ除去衛星の展開構造 2. 1 主要な要求 本研究で取り扱うデブリ除去衛星は,破砕直後の軌道上 でポリイミドフォイルを展開し,デブリを貫通,減速させ ることを目的としている.ポリイミドフォイルは,平板型 のような1 回の貫通機会を望める構造では10 枚,円筒, 球形のような2 回の貫通機会では5 枚のフォイルを,隙 間を空け固定すると仮定する.ポリイミドフォイルは密度 が1 488 kg/m3 であり,25 μm の厚さの物を使用する. 低密度素材であるため破砕がおきにくく,デブリ化しにく い.さらに,面積質量比が大きいため大気抵抗などによる 高度低下が著しく消滅しやすいといった利点がある. 今回,デブリ除去衛星は,単発ミッションとして軌道上 に投入することを想定しているため,打上げロケット搭載 時には,フェアリングの占有が許容される.また,本研究 では,デブリ除去衛星の構造を,イプシロンロケットをは じめとした複数の種類のロケットに適用可能とするため に,打上げを想定しているロケットのなかで最小のフェア リングサイズに合わせて考案している.想定したフェアリ ングの形状,サイズを第2 図に示す.このフェアリング サイズの要求は,本研究において考慮した200 kg, 300 kg の質量制限に関わらず一定のものとする. 2. 2 デブリ除去衛星展開機構案 2. 1 節で述べた要求を満たすため,本研究で想定するデ ブリ除去衛星案を4 パターン考案した.以下の項で紙風 船型,傘型,小円筒型,ロール型の4 種のデブリ除去衛 星の要点をまとめる. 2. 2. 1 紙風船型デブリ除去衛星 第3 図に紙風船型デブリ除去衛星を示す.第3 図 - ( a ) に示すような構造を1 枚のポリイミドフォイル を用いて成形する.フェアリングに合わせてサイズ設定を 行った場合,6.8 × 6.8 m サイズの正方形のポリイミドフォ イルを折れば,1.7 × 1.7 × 1.7 m の立方体を成形できる. しかし,この構造のデブリ除去衛星を軌道上に投入した場 ( a ) ロール展開型デブリ除去衛星( b ) 巨大円筒型デブリ除去衛星 第1 図 受動的デブリ除去衛星の概念 Fig. 1 Concept of satellites for the passive removal of orbital debris 3 800 1 700 f 1 700 f 450 第2 図 想定したフェアリングサイズ( 単位:mm ) Fig. 2 Size of payload fairing in this study ( unit : mm )