【DO!BOOK・ページリンク】
gihou_54_3   72 / 84

BOOKをみる

10秒後にBOOKのページに移動します


68 IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 金ワイヤは48.9 kg 必要となる. よって総質量は 147.5 kg となる. 2. 2. 4 ロール型デブリ除去衛星 最後に,衛星群としての運用を必要としない,単一のデ ブリ除去衛星によって十分な面積を展開できる機構を考案 する.今回着目したのが,JAXA( 独立行政法人宇宙航空 研究開発機構)の宇宙インフレータブル構造の宇宙実証 ( Space Inflatable Membranes Pioneering Long-term Experiments : SIMPLE ) で使用された技術である紫外線硬 化樹脂である. 本研究で, 参考としたのは光学接着材NOA61 ( Norland Products 社:アメリカ)という軍用や航空宇宙 工学用で用いられている紫外線硬化樹脂である.この樹脂 の材料特性は,密度1 290 kg/m3 であり,アルミニウムの 密度2 680 kg/m3 の半分の密度である.しかし,デブリが 樹脂部に当たった場合どのような破壊が起こり,どのよう にそれに対策しなければならないかは,今後も研究が必要 となる ( 7 ). 今回考案した展開機構は,まず,ポリイミドフォイルに 第12 図に示す形で紫外線硬化樹脂を塗り,軌道上で紫外 線を受けた際に硬化することで構造を保持するフレームを 構成するという案である. 縦に長い長方形型のポリイミドフォイルに,紫外線硬化 樹脂を第12 図に示すように塗り( 緑色の部分),その上 に紫外線を透過する透明なフォイルを第13 図に示すよう に貼る.そして,この長方形のポリイミドフォイルを,第 14 図に示すようなロールを作るように巻いていき,ポリ イミドフォイルによる円筒系のロールを作製する.この 時,樹脂によるポリイミドフォイル同士の接着を防ぐた め,紫外線を透過するフォイルでサンドイッチ状にする. 次に,第15 図に示すように,軌道上でフォイルを展開 するまで,紫外線を遮断するカバーの中にポリイミドフォ イルのロールを収める.今回は,厚さ5 mm のアルミニ ウム材によるカバーを想定している.このカバーの中に は,巻かれたポリイミドフォイルを真っすぐに伸ばしてい くローラの伸展機構を搭載する. 想定したフェアリングに合わせてサイジングした場合, 0.8 × 24.9 m のポリイミドフォイルを,直径0.48 m,32 巻きのロールとし,0.53 × 0.53 × 0.85 m,厚さ5 mm の 第15 図 カバーに収まったポリイミドフォイルのロール Fig. 15 Polyimide foil in a cover 紫外線を透過するフィルム ポリイミドフォイル 紫外線硬化樹脂 第13 図 ポリイミドフォイル上のサンドイッチ構造 Fig. 13 Sandwich structure on polyimide foil 第14 図 ポリイミドフォイルによって作られたロール Fig. 14 Polyimide foil roll 紫外線硬化樹脂 ポリイミドフォイル 第12 図 紫外線硬化樹脂によるフレーム構造 Fig. 12 UV curable resin frame structure 310 mm ( a ) フェアリング収納時( b ) 展開時 第11 図 直径310 mm の小円筒型デブリ除去衛星群 Fig. 11 Group of small-diameter-cylindrical-type satellites ( diameter 310 mm )