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70 IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 道をデブリ除去衛星の投入軌道として設定する.上記二つ の軌道をそれぞれ,順行軌道,逆行軌道と呼ぶ.第2 表 に順行軌道と逆行軌道の利点と欠点を記す. デブリ除去衛星の効果の検討指標は,ある破砕事象が発 生した際に,破砕由来のデブリをどれだけ除去できるかで ある.デブリ除去衛星は,デブリが除去衛星を貫通する時 の減速効果によって,そのデブリが25 年以内に大気に落 下するように設計するので,デブリ除去衛星によるデブリ 除去個数は,デブリ除去衛星に衝突するであろうものすべ てとしている.除去効果を検討するため,2007 年の Fengyun1C 破壊兵器実験をテストケースとして,除去効 果の定性的,および定量的性質を数値解析して調べた.解 析における主な留意点として以下の点を挙げる. ( 1 ) 摂動によるデブリ除去衛星の軌道変化を考慮 ( 2 ) 除去衛星によるデブリの重複除去の考慮 ( 3 ) デブリ除去衛星の投入時期の検討 ( 4 ) 除去したデブリの高度分布などを加味した,さま ざまな視点からの除去効果の評価 なお,( 1 ),( 2 ) については,以下に示す全解析で考慮 している.( 3 ),( 4 ) については計算結果で示す. 4. 計 算 方 法 4. 1 除去対象 除去対象はFengyun1C 破壊兵器実験相当の破砕イベン トによって発生した微小デブリである.破砕による破片デ ブリは,第3 表に示す条件でNASA 標準破砕モデル ( 8 ) を用いて生成した.ただし,面積質量比分布と速度分布に ついては,MASTER-2005 で用いられた補正を適用して いる ( 9 ). デブリ除去衛星の除去対象は,大気抵抗による自然浄化 で除去できないデブリであることが望ましい.よって,自 然浄化を加味した時に,デブリ総数が平衡状態になる年数 を見極め,その年数経過時点で残っているデブリを除去対 象とすることを想定した.しかし,今回計算した第19 図 に示す破砕によって発生したデブリ総数の時間推移の結果 のように,破砕から1 800 日後,すなわち約5 年後で あっても,デブリは,いまだ自然浄化によって総数が減少 している.したがって,少なくとも破砕発生から5 年以 内はデブリ総数が平衡状態にならないことが判明した. デブリ総数が平衡状態になる時期を見極めることは難し いため,デブリ除去衛星の除去対象は,破砕によって発生 したデブリのうち,1 年以内に自然浄化されるものを除い たものとし,1 年間での除去効果を検討する.すなわち, 破砕から1 年以内に自然浄化しないデブリを,その1 年 間に除去衛星でどれだけ除去できるかを検討した. 4. 2 除去個数の計算 第20 図に除去個数計算の解析フローを示す.解析で は,破砕モデルによって任意の破砕事象によるデブリを生 成し,軌道伝ぱモデルによって生成した全デブリと観測機 の軌道伝ぱを計算することによって,それぞれの軌道履歴 第3 表 破砕事象の解析条件 Table 3 Analysis of conditions of orbital object breakup event 破 砕 事 象Fengyun1C 破壊兵器実験 破砕親物体Fengyun1C 破砕年月日2007.01.11 解析サイズ下限( μm ) 100 破砕タイプ爆 発 質量( kg ) 1 558.0 スケールファクタ1.0 軌道長半径( km ) 7 225.5 離心率0.001 1 軌道傾斜角( 度) 98.65 昇交点赤経( 度) 1.77 近地点引数( 度) 263.82 真近点離角( 度) 241.88 放出速度最大値( km/s ) 0.70 放出速度分布等方性 1 000 100 10 0 200 400 600 800 1 000 1 200 1 400 1 600 1 800 日 数 ( d ) デブリの数 ( 個) ×106 第19 図 破砕によって発生したデブリ総数の時間推移 Fig. 19 Temporal transition in number of remaining pieces of debris 第2 表 順行軌道と逆行軌道の利点と欠点 Table 2 Advantages and disadvantages of prograde and retrograde orbits 投入軌道利     点欠     点 順行軌道 デブリクラウドと同じ摂 動を受け,デブリ密度の 濃い領域に長く留まる. デブリクラウドとの相対 速度が小さい. 逆行軌道デブリクラウドとの相対 速度が大きい. デブリクラウドとの軌道 傾斜角が異なるので, 徐々に軌道面がずれる.