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74 IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) りも高い高度領域においても,自然浄化の方がデブリ除去 衛星よりもデブリをより多く除去している.この結果を確 認するため,高高度を通るあるデブリの近点および遠点履 歴を調べた.第24 図に示すように,高高度を通るデブリ は自然浄化効果によって高度を下げ,大気に落下している. 5. 5 デブリ除去衛星投入時期による比較 本研究では投入時期を ( 1 ) 破砕発生直後 ( 2 ) 破砕発生10 日後 ( 3 ) 破砕発生30 日後 の3 ケースで計算を行い,結果を比較した.比較結果を 第26 図および第6 表に示す.デブリ除去衛星の有効断 面積は99.5 m2 である. 第26 図にデブリ除去衛星の有効断面積は現時点での最 大値99.5 m2 を用いて計算結果を示す.最初のピーク値 は10 日後が一番高く,二つ目のピーク値は30 日後が一 番高いという結果になり,ピーク値の値は必ずしも破砕発 生直後が最大になるという訳ではないということが判明し た.除去個数も破砕発生直後が最大という訳ではないとい う結果を得た.また30 日後ははじめのピーク後の減少傾 向がほかの2 ケースに比べ,僅かになだらかになってい る. 6. 結    言 6. 1 各機構の比較 今回考案したデブリ除去衛星に用いる展開機構を展開可 能面積と質量のトレードオフによって比較する.本研究で は,考案した案のうち,除去衛星群としての運用が必要な 機構は,衛星群の離散をどう防ぐか,衛星のフォイル部が 進行方向から見て重ならないように配置を保つことが可能 かなど,問題が多いため低く評価している. 展開可能面積と質量を比べた結果,フェアリングに搭載 するデブリ除去衛星の構造は,今後も継続した研究が多く 必要であるものの,紫外線硬化樹脂を用いたロール型の展 開機構の評価が高いことが分かった.次いで,傘型の除去 衛星も高く評価できることが分かった. 6. 2 除去効果の検証 球形有限要素モデルを用いて除去効果の検証を行った. デブリ除去衛星自身も摂動を受けて軌道伝ぱすること,除 去衛星による除去デブリの重複が生じないことを考慮して 検証を行っている.本研究結果,明らかになったことを以 下にまとめる. ( 1 ) 除去衛星は,破砕した親物体の軌道と同じ軌道よ りも,逆行軌道に投入する方が,除去個数は多くな る. ( 2 ) 自然浄化によっても,高高度を通るデブリは除去 される. ( 3 ) 除去衛星の投入時期が破砕発生直後,10 日後, 30 日後の場合における,それぞれの除去個数は30 日後,10 日後,破砕発生直後の順で多いが,3 者の 第6 表 デブリ除去衛星投入時期を変化させた場合結果の差異は1%以下である. Table 6 Results of comparison of number of pieces of removed debris with time of satellite injection          投 入 時 期破砕発生直後10 日後30 日後 デブリ除去数( 個) 105 015 105 363 105 666 :破砕発生直後 :破砕発生10 日後 :破砕発生30 日後 0 50 100 150 200 250 300 350 日 数 ( d ) 100 000 10 000 1 000 100 10 5 日ごとに除去されたデブリの個数 ( 個) 第26 図 デブリ除去衛星の投入時期を変化させた場合 Fig. 26 Removal effectiveness when changing orbital injection timing 1 100 1 000 900 800 600 700 500 400 300 0 200 50 100 150 200 250 300 350 日 数 ( d ) 高 度 ( km ) :物体1 遠点高度 :物体1 近点高度 :物体2 遠点高度 :物体2 近点高度 第25 図 デブリの軌道履歴 Fig. 25 Orbital history of debris generated by breaking up of orbital object