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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 3 社長が語る ラの製造は,従来は鋳造での生産が主でしたが,この ほどコンピュータ・プログラミングによる切削加工で の製造をスタートしました.これは金型が不要であ り,プログラミングで形状を設定できるため,多品種 少量生産に向いています.ただし,長くて薄いインペ ラなど切削加工に向かない形状もあります.さまざま な形のインペラに対応できるという意味では鋳造は自 由度が高く,その生産技術は維持しなければなりませ ん. 生産現場の自動化も進んでいますが,例えば,作業 途中の目視確認作業や,出荷前に製造工程の履歴を確 認・記録する作業など,自動化できる余地はまだあ り,今後の課題となっています. 一方,ITJ で生産する年間100 万台以上のターボ チャージャーのなかには,1 か月で数台というものも あります.これは旧機種の補用品,例えば旧国鉄時代 に納めたディーゼル機関車などで使われるものです. お客さまに長く安心して使っていただくために,この ようなニーズにもきちんと応えていくことがメーカー としての責任であり,従来の図面や生産技術,技能の 維持伝承を怠ってはならないのです. 海がなくても世界を相手に ITJ では頻繁に海外工場の職長やリーダーの研修を 受け入れ,また,こちらの技術者を海外に送り込んで 技術指導を行っています.「木曽の山中にありながら, 常に視線は世界に向いている」.こんな気概に満ちた 社員とともに,今後も,お客さま第一で世界市場での シェア拡大に努力していく所存です. 量,コンパクトにできます. 現在,いずれの自動車メーカーも,爆発的な勢いで ターボチャージャー搭載車を増産しています.その背 景として,複数の新興国でディーゼルエンジンの排ガ ス浄化規制が進んでいること,また,先進国では CO2 排出規制の強化により,ガソリンエンジンのダ ウンサイジング化が急速に進み,パワーは従来に劣ら ず,低燃費化に寄与するターボチャージャー装着が必 須となっていることなどが挙げられます. このなかで日本だけが「爆発的」な勢いにならな いのは,現在,環境対策においてハイブリッド車が先 行していることが要因です.多くの日本人にとって車 はいわゆる“ 街乗り”の手段.この観点ではハイブ リッド車が有利ですが,都市間高速道路移動を考える と重いバッテリーを積んで小さなエンジンで走るハイ ブリッド車は必ずしも有利とは言えません.今後,低 燃費で長距離移動する自動車が求められるようになれ ば,国内でもターボチャージャー搭載車が一段と増え るでしょう.一方,軽自動車ではすでにターボチャー ジャー搭載車が主流になり,ITJ はこのうちほとんど のシェアを抑えています. 研究開発設備と工場の革新で 技術力の優位性を保つ ITJ の技術力の優位性を挙げますと,まずは,試作 品をつくる工場と技術者を有していることです.ター ボチャージャーの設計は,お客さま( 自動車メー カー)の要望に添ってIHI の車両過給機セクターが 行いますが,ITJ は,この段階からお客さまのエンジ ンに合わせて性能を出し切るために試作を重ね,テス トを繰り返します. ターボチャージャーは1 分間に30 万回転もする高 速回転機械です.高温のタービン部は900℃以上にも なり,反対側のコンプレッサー部は150℃程度と温度 の大きく異なるものが隣り合っています.ですから, 各種の評価試験が重要で,センサーを取り付けての測 温試験,振動試験,性能試験やデータ解析,耐久性を 見極める試験などが必要です.ITJ にはこれらに対応 した研究開発設備があり,開発段階はもちろん,こま めな改良の要請にも対応できるのです. また,新しい生産技術を取り入れ,絶えず現場の革 新を進めています.例えば,コンプレッサーのインペITJ 新町工場加工エリア