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IHI 技報 Vol.54 No.3 ( 2014 ) 5 社長が語る 海外企業との連携,新規開拓にも注力して, STAR100 を合言葉に 日本国内ではすでに農業の機械化は行きわたり,今 後はほぼ代替需要しか望めません.しかし海外を見渡 せば,世界人口70 億人超を養う農業関連産業が発展 する見込みはまだ大いにあります.2013 年度の STAR の売上高はおよそ80 億円で,うち海外は4 億 円にすぎません.現在,この海外販売,特に中国,韓 国でのビジネス拡大を進めています.中国は経済発展 に伴い食肉消費量が増大し,家畜飼料の需要が高まっ ています.そこで中国企業と提携し,トラクター部分 は中国で,ハーベスタ( 刈り取り機)部分をSTAR で生産する自走式コーンハーベスタの量産を今年から スタートしました.また,韓国では地元企業と共同で 開発した自走式コンビネーションベーラが,今年発売 されます.本機は,刈り取りから細断,ロールベール 成形,ネット巻き付けまでの一連の作業を行う収穫機 で,STAR は走行台車部と自社技術を活かした細断飼 料のロールベール成形からネット巻き付けの部分を担 当しました.そのほか,インドネシア,ベトナム,ロ シアなどでも新規開拓営業を行い,少しずつ実を結び 始めているところです. STAR は主に酪農,畜産関連の農業機械を製造販売 していますが,もっと広い農業分野に進出できる可能 性もあるのではないかと思っています.例えば,IHI の画像処理技術を使って野菜や果物の選別を行う機械 や,エネルギー技術,ロボット技術などを用いた高度 に自動化した野菜工場などの開発も考えられます. 「農業を知った機械メーカー」として,既成概念にと らわれず,世界に打って出て10 年後の100 周年には 売上100 億円を達成する“ STAR100 ”を合言葉に, 社員一同切 せっさたくま 磋琢磨していきます. 「肥料・堆肥等散布」分野では,化成肥料の散布を 行うブロードキャスタ,堆肥をほぐしながら牧草地や 畑作農地に効率的に散布するマニュアスプレッダ,糞 ふん 尿散布のためのバキュームカーやスラリースプレッダ なども製作しています. TMR や大規模農業に対応する機器も開発 株式会社IHI スター ( STAR ) は,北海道発の農業 機械メーカーとしてスタートしましたが,現在のお客 さまは,九州や東北の酪農家や畜産農家が大きな割合 を占めています.その理由は,北海道では農地の集約 が進み,大規模な農業コントラクタが専ら飼料作りを 請け負うシステムが発展.そのような業態では欧米 メーカーの超大型機が求められる傾向があり,当社と しては,輸入機械と競合するのではなく,農家のニー ズにきめ細かく対応する方向で技術開発を行ってきた ためです. とはいうものの手をこまぬいていたわけではありま せん.その一例が前述の可変径フィードラッパーで す.昨今では,牧草に輸入濃厚飼料,ミネラル類を混 合してTMR( Total Mixed Ration:完全混合飼料)と して農家に販売する「TMR センター」が各地にでき ています.サイレージ化した発酵TMR はラップを剥 がして空気に触れた瞬間から劣化が始まるため,つね に家畜に新鮮な飼料を与えるには,営農規模ごとに使 い勝手のよいロール( 飼料の塊)の大きさは異なり ます.TMR センターは農家のニーズに合わせてさま ざまな大きさのロールを作る必要があり,可変径 フィードラッパーは1 台でそれを可能にします. また,ブロードキャスタなどの施肥マシンもGPS データと連動させることで大規模農業に対応します. 起伏に富んだ広大な農地でも自動で均一に施肥できる システムや,作物の生育状況を上空からモニターし, それをGPS データと合わせて機械に入力して生育不 良箇所のみ追肥できる仕組みなどを,他社より一歩先 んじたICT を活かして開発中です. 今後早急に取り組みたいのは,安全性を高める技術 開発です.農業機械は建設重機と異なり,免許制では なく誰でも使える一方,事故が多いと言われていま す.ある統計によれば農業現場で事故に遭って亡くな る方は1 年に350 〜 400 人.これを減らしていくこ とは私たちの喫緊の課題です. 大型ジャイロレーキTGR7310( 適応トラクター:60 〜 125 馬力)