社会課題起点:脱CO₂・持続可能な循環型社会の実現
※執筆者の所属名は発行当時のものです。※IHI技報に掲載されている情報は発行当時のものです。開発,製品製造を終了している可能性がありますので,ご了承ください。
近年,地球上の様々な場所で,豪雨,ハリケーン,熱波,干ばつなど地域により異なる異常気象が頻発しています。
また、異常気象による災害も多発し,人的被害だけでなく甚大な物的,経済的損失も発生しています。
頻発している異常気象は, 地球の温暖化 ,つまり地球の温度上昇が原因と考えられています。
このような気象変動を起因としたさまざまな脅威に備え,温暖化防止をはじめとした地球の課題に向き合う必要があります。
エネルギー,防災・減災ほかの社会基盤インフラ整備に長年寄与してきたIHIグループは,
カーボンニュートラルに向かって,真正面から取り組み、未来の豊かな社会を創るための技術開発に挑戦していきます。
- IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) 台風と地球温暖化 ―我々は何をなすべきか
名古屋大学 宇宙地球環境研究所 教授 坪木和久 - IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) カーボンニュートラル化という波とこれを乗り越えるための技術
国立研究開発法人産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター 研究センター長
古谷博秀
カーボンリサイクル
炭素循環型社会を実現するためには、温室効果ガスである二酸化炭素(CO₂)を積極的に利用することが求められます。
IHI グループでは、CO₂ を燃料として利用可能なメタン(CH₄)に変換するメタネーション技術の開発に取り組んでいます。
メタネーションプロセスの実用化を図る上でキーとなるのは、反応を加速させる触媒です。
IHIグループはシンガポールの化学工学研究所(Institute of Chemical and Engineering Sciences、ICES)との共同研究で、高活性で長寿命な触媒を開発しました。
CO₂の再資源化関連
- IHI技報 Vol.59 No.1 ( 2019 ) 二酸化炭素 (CO₂) の再資源化に向けた触媒技術
- IHI技報 Vol.59 No.3 ( 2019 ) 温室効果ガスのCO₂を高付加価値物質へ変換する CO₂の有価転化技術「メタネーション」
- IHI技報 Vol.59 No.2 ( 2019 ) 脱CO₂・循環型社会を目指して
- IHI技報 Vol.59 No.2 ( 2019 ) CO₂有効活用による炭素循環型社会の実現
経済性に優れたCO₂分離・回収技術とCO₂有価転化技術の開発 - IHI技報 Vol.59 No.3 ( 2019 ) 低炭素社会実現のために世界とつながる
メタネーション技術の開発におけるマーケティング活動との連携
CO₂分離回収関連
- IHI技報 Vol.52 No.1 ( 2012 ) 低炭素社会に適合した石炭ボイラの実現へ
化学吸収法による CO₂分離回収技術の開発 - IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) 低炭素社会に適合した石炭火力発電の実現へ
化学吸収法による CO₂分離・回収技術の開発 - IHI技報 Vol.58 No.2 ( 2018 ) シミュレーション技術を利用したCO₂分離・回収装置の設計
- IHI技報 Vol.61 No.1 ( 2021 ) カーボンリサイクル技術による脱CO₂・炭素循環型社会の実現への加速
CO₂回収技術とCO₂有価転化技術の融合
その他
- Vol.57 No.4 (2017) マイクロチャンネルを利用した天然ガス水蒸気改質器向け構造触媒の開発
- Vol.55 No.4 (2015) 石油化学プラントの心臓 直径 6 m,細管 2 万本の反応器
多管式反応器の内部流動予測技術とパッケージ化技術 - Vol.54 No.1 ( 2014 ) NO₂還元ハニカム触媒の開発
分散エネルギー/エネルギーマネジメント
IHIは、福島県相馬市と共同で、2018年4月、再生可能エネルギーの地産地消を実践し、将来の水素社会に向けた実証を行う場として、「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」を開設しました。当センターでは、地産地消型のエネルギー マネジメントシステムによって、既存の送配電系統に逆潮流させず、エリア内で太陽光発電電力を最大限有効活用しています。
2020年9月には、水素利用の先進技術開発拠点として「そうまラボ」を開所し、オープンイノベーションの場として、先駆的技術の研究を行う研究機関や企業にも提供していきます。
これらの取り組みが評価され、IHIは令和2年度「新エネ大賞」において、最高賞である「経済産業大臣賞」を、相馬市、パシフィックパワー株式会社と共同で受賞しました。
地産地消システム関連
- IHI技報 Vol.58 No.2 ( 2018 ) 地産地消システムによるエネルギー循環型社会の幕開け
相馬市でスマートコミュニティの推進拠点 「 そうま IHI グリーンエネルギーセンター 」が開所 - IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) 再生可能エネルギー地産地消型エネルギーマネジメントシステム
- IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) 水素活用型分散型エネルギーシステムの開発
- IHI技報 Vol.58 No.2 ( 2018 ) 「生産」に踏み込んだ工場エネルギー最適化
工場の電力ピークシフトを実現する生産設備群の自動スケジューリング技術 - IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) エネルギーシステム構成・運用最適化のための数理モデルとアルゴリズム
- IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) CO₂フリー水素を活用しカーボンリサイクル技術開発を推進する
~再生可能エネルギー利用の水素研究棟「そうまラボ」を開所~ - IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) 地域分散・最適生産型のスマート社会へ
革新的な性能をもつコンパクトリアクターの技術コンセプトとそれを支える要素技術 - IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) コンパクトリアクターで化学プラントの常識をくつがえす
最新の化学反応理論によって実現した,小さく軽く,手軽に運べ,製造も運転も安い,驚きの高効率スチームリフォーマー - IHI技報 Vol.51 No.4 ( 2011 ) 災害対応能力を証明したガスタービンコジェネ.
電力の需給安定に貢献できるコジェネの魅力とは? - IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) 再生可能エネルギー大量導入時の航空転用型ガスタービンと同期調相機による電力系統安定化の検討
- IHI技報 Vol.52 No.4 ( 2012 ) 標準化と柔軟性で蓄電市場を切り拓く
電気自動車,電力安定化,機械電化,スマートグリッド・・・で活躍するIHIのリチウムイオン電池システム - IHI技報 Vol.52 No.4 ( 2012 ) アメリカにおける航空転用型ガスタービン市場の特性と日本での展開の期待
- IHI技報 Vol.56 No.1 (2016) あなたのビルの非常用発電機は大丈夫ですか?
常用・非常用発電装置などのサービス・メンテナンス時に欠かせない車載型負荷試験装置を開発,レンタル事業にも参入 - (株)IHIジェットサービス HP
コンパクトリアクター関連
ガスタービン関連他
バイオマスバリューチェーン
IHIグループは、バイオマス製造・輸送・利用の中で,パームのような製造事業や,ボイラ混焼・ガス化のような利用技術を持って関わっていきます。
例えば、褐炭・バイオマスなどをガス化し多用途利用を可能にする「二塔式ガス化炉TIGAR® 」を開発しました。また、有効利用法が見いだされていないパームバイオマスを改質した後にペレット化して、ボイラ向けの再生可能燃料とするプロセスを開発しました。
二塔式ガス化炉関連
- IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) 未利用エネルギーの有効利用 ̶ 二塔式ガス化炉の活用 ̶ 褐炭・バイオマスなどをガス化し多用途利用を 可能にする「二塔式ガス化炉 TIGAR® 」
- IHI技報 Vol.52 No.1 ( 2012 ) 使いにくい燃料を価値ある燃料に
褐炭,バイオマスをさまざまな用途に使えるようにできる「二塔式ガス化炉TIGAR®」 - IHI技報 Vol.52 No.1 ( 2012 ) 二塔式循環流動層ガス化炉 TIGAR® による褐炭・バイオマスのガス化
- IHI技報 Vol.57 No.4 ( 2017 ) 低品位炭とバイオマスをCO₂フリー水素やアンモニアへ
二塔式ガス化炉 TIGAR® 市場投入準備完了へ - IHI技報 Vol.52 No.4 ( 2012 ) 微粉炭火力の木質バイオマス高比率混焼技術の開発
- IHI技報 Vol.57 No.1 ( 2017 ) パームヤシ廃材をサステナブルなバイオマス燃料へ
パームヤシの未使用部分から燃料ガスや固形燃料を取り出す - IHI技報 Vol.57 No.1 ( 2017 ) 木質バイオマス高比率混焼システムへの挑戦
- IHI技報 Vol.57 No.1 ( 2017 ) 石炭焚き火力発電のCO₂排出量をカーボンニュートラルで大幅カット
既存の石炭焚き火力発電システムを活用した,木質バイオマスとの高比率混焼システム - IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) パーム産業における未利用バイオマスの有効利用と最適なプロセス開発
- IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) 県内最大級のバイオマス発電所が営業運転開始
~ “ コト売り ”を支える地元・鹿児島のネットワークが鍵 ~ - IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) バイオマス専焼ボイラの付着灰影響の解明と対策
- IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) 循環型社会のエネルギー産業を足元で支える
バイオマス発電で活躍する荷役・搬送設備 - IHI運搬機械(株) HP
バイオマス発電関連
燃料アンモニア利用
IHIは、化石燃料に替わるカーボンフリー燃料としてアンモニアに注目しています。
アンモニアはカーボンフリー燃料である水素から製造可能であり、直接燃焼可能なカーボンフリー燃料です。
さらに、水素に比べて輸送効率が良く、製造・輸送・貯蔵技術が既に確立されてることから、大規模利用に適しています。
IHIでは、アンモニアをガスタービン、微粉炭焚きボイラ、固体酸化物型燃料電池、レシプロエンジンの燃料として直接利用するための技術開発に取り組むとともに,燃料アンモニアの供給や標準化など,サプライチェーンを構築するための活動も実施していきます。
- IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) アンモニアガスタービンコージェネレーションシステムの開発
- IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) 石炭火力発電における微粉炭・アンモニア混合燃焼技術の開発
- IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) アンモニアによるカーボンニュートラルの実現に向けて
生産から利用までのサプライチェーンの構築 - IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) アンモニアでカーボンニュートラル火力発電へ
アンモニア利用拡大に向けた燃焼技術開発とボイラ設計 - IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) 液体アンモニア直接噴霧燃焼ガスタービンの開発
再生可能エネルギー
太陽光発電は天候の影響を受けて発電電力が大きく変動するため、その大量導入に伴い、系統の電圧や周波数に影響を与える可能性があります。そこで、IHIは、発電所から系統へ安定的に電力を供給するための蓄電池制御技術を開発しました。例えば「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」で、蓄電池制御技術が生かされています。
(株)IHIプラントは、大規模なプラント建設や太陽光発電所の運営などに豊富な実績があります。ここで得たノウハウを活かし、「産業用太陽光発電設備」のシステム設計、各種機器調達、現地据付を手掛けています。
太陽光発電関連
- IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) 再生可能エネルギー地産地消型エネルギーマネジメントシステム
- IHI技報 Vol.59 No.4 ( 2019 ) 自社発電所運営で培う安全・安心 お客さま目線に立った太陽光発電所を提案・建設・メンテナンスする
- (株)IHIプラント HP
- IHI技報 Vol.53 No.2 ( 2013 ) 70MW ソーラー発電プラント鹿児島でこの秋発電開始
29 万枚の太陽光パネルで約 22000 世帯分を発電する鹿児島七ツ島メガソーラー発電所 - IHI技報 Vol.53 No.2 ( 2013 ) 新しいエネルギー時代を切り拓く光の力
再生可能エネルギーの普及を支えるIHI プラント建設のエンジニアリング力 - (株)IHIプラント HP
- IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) 大規模太陽光発電所向け蓄電池制御技術の開発
- IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) 発電事業者だからこそオススメできる太陽光発電所
太陽光発電所の安定運営を支える大規模発電所建設の自負 - (株)IHIプラント HP
化石燃料に替わる将来のエネルギー源として、藻類バイオ燃料が注目されています。IHIと国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構は、微細藻類からバイオジェット燃料を安定生産する技術の開発事業を進めています。
開発したバイオジェット燃料は国際規格ASTMの認証を取得し、既存のジェット燃料と混合して民間航空機の運航に使用できます。これにより航空機が排出するCO₂の削減が一層期待されます。
現在、デモフライト実現への準備を進めています。
バイオ燃料関連
- IHI技報 Vol.55 No.1 ( 2015 ) 藻類バイオ燃料で持続可能な社会への貢献を 進化を続ける藻が生産する油『MOBURA 』
- IHI技報 Vol.52 No.1 ( 2012 ) 最先端のバイオ技術で日本が産油国になる!藻類の培養によるバイオ燃料の事業化を目指して
- IHI技報 Vol.51 No.4 ( 2011 ) 陸から海,洋上浮体型風力発電が点す再生可能エネルギーの希望の明かり
- IHI技報 Vol.52 No.4 ( 2012 ) IHI の再生可能エネルギーへの取組み
- IHI技報 Vol.53 No.4 ( 2013 ) 震災の経験を糧に東北発 世界のSOMAへ第一歩
再生可能エネルギーを活用し,相馬事業所を世界のSOMAに進化させる - IHI技報 Vol.56 No.3 ( 2016 ) 大型プラント建設から再生可能エネルギー発電設備まで,ものづくりの最終ランナーとして走り続ける
- (株)IHIプラント HP
- IHI技報 Vol.59 No.2 ( 2019 ) 取り巻く環境・市場・顧客ニーズ・商流の急速な変化への対応
その他
カーボンネガティブ
CO₂排出量をゼロどころか実質マイナスにするカーボンネガティブを発電分野で実現することを目指し,IHIは酸素燃焼技術やCO₂分離・回収技術の開発に取り組んでいます。空気から分離した酸素で褐炭やバイオマスをボイラで燃焼させ,排ガスを圧縮・冷却することにより,純度の高いCO₂を回収することができます。
エネルギーコンプレックス
- IHI技報 Vol.54 No.4 ( 2014 ) 出現! 未来のエネルギーコンプレックス
- IHI技報 Vol.48 No.4 ( 2008 ) 酸素燃焼ボイラで火力発電の未来を担う
CCSシステムでCO₂削減! 世界に先駆け実プラントで一貫実証 - IHI技報 Vol.49 No.4 ( 2009 ) 酸素燃焼技術を用いた CO₂回収型石炭火力発電ボイラの実証に向けた検討
- IHI技報 Vol.52 No.1 ( 2012 ) 発電プラントのゼロエミッション化に向けて
石炭火力における酸素燃焼技術を用いた CO₂回収システム - IHI技報 Vol.55 No.1 ( 2015 ) 酸素燃焼発電プラントの商用化への取組み
- IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) 発電プラントゼロエミッション化へ大きく前進
石炭火力発電所における酸素燃焼技術を用いたCO₂回収システム - IHI技報 Vol.55 No.4 ( 2015 ) 低炭素社会に適合した石炭火力発電の実現へ
化学吸収法によるCO₂分離・回収技術の開発 - IHI技報 Vol.58 No.2 ( 2018 ) シミュレーション技術を利用したCO₂分離・回収装置の設計
- IHI技報 Vol.50 No.4 ( 2010 ) エネルギー,環境,健康を守る一石三鳥のシステム
燃やして処理されていたVOCを回収,搬送して燃料として利用する「VOCエネルギーリサイクルシステム」 - (株)IHIジェットサービス HP
- IHI技報 Vol.52 No.4 ( 2012 ) VOC400 kg/h処理に対応したVOC回収ガスタービンコージェネレーションシステム
- IHI技報 Vol.61 No.2 ( 2021 ) 高効率型火花点火方式リーンバーンガスエンジン28AGSを用いたCO₂削減に向けた
コージェネレーション発電プラント - (株)IHI原動機 HP
- Vol.61 No.2 (2021) CO₂フリー水素を活用しカーボンリサイクル技術開発を推進する
~ 再生可能エネルギー利用の水素研究棟「 そうまラボ 」を開所 ~ - Vol.61 No.2 (2021) 水素活用型分散型エネルギーシステムの開発
- Vol.59 No.4 (2019) 再生可能エネルギー地産地消型エネルギーマネジメントシステム
酸素燃焼関連
CO₂分離・回収関連
コージェネレーション関連
その他