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「小型メタネーション装置」による 回収CO₂の有効利用
二酸化炭素と水素からその場でメタンを合成してカーボンリサイクル

株式会社IHI  

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お客さまの試験運用,または二酸化炭素 ( CO₂ ) 排出源や余剰の再エネ水素源のある事業所(オンサイト)における合成メタン ( e-methane ) 製造といった要望に応えるため,小型メタネーション装置の販売を2022年10月より開始した.
パッケージ化・標準化によって省スペース・短納期を実現し,12.5 Nm3/hのe-methaneが製造可能である.

メタネーション社会実装のケース

はじめに

日本政府は2050 年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする,すなわちカーボンニュートラルを目指すことを宣言した.IHIではカーボンニュートラルに向けたソリューションの一つとして,メタネーションに取り組んでいる.

メタネーションは,再生可能エネルギー(再エネ)由来の水素(以下,再エネ水素)と温室効果ガスの一つである二酸化炭素 ( CO₂ ) を原料として,都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術である.この技術は,「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(経済産業省)において,次世代熱エネルギー産業のカーボンニュートラル化の具体策として挙げられている.メタネーションによって合成されたメタンはe-methaneと呼ばれ,再エネ水素キャリアの一形態であると同時に,回収CO₂の有力な利用源として期待されている.

e-methaneの社会実装の一形態として,国内のCO₂排出源や余剰の再エネ水素源でのオンサイト製造と使用がある.工場などから排出されるCO₂を回収し,その場でe-methaneを製造する.製造したe-methaneをオンサイトで使用することで,工場などの排出CO₂を減らすことができる.また,再エネは1 日のなかで発電量が大きく変動し,需要量に対して発電量が上回る時間帯で余剰の電力が発生する.その余剰電力を使用して水電解などで製造した余剰の再エネ水素を原料としてe-methaneを製造することにより,水素では対応できない既存の都市ガス利用設備や車両の燃料などといった幅広い設備への使用が可能となる.

小型メタネーション装置

(1) 開発の経緯
e-methaneのニーズをヒアリングするなかで,工場や研究所,事業所におけるカーボンニュートラルに関する取り組みを検討する企業から,本格的に導入する前に試験運用したいという要望を受けることが多くあった.さらに,再エネの余剰電力活用として,オンサイトでメタネーションを実施したいという声があった.
それらのニーズを受けて,小型メタネーション装置を開発した.
(2) コンセプト
小型メタネーション装置は,メタネーション設備の試験運用,または社会実装としてオンサイトでのメタネーションといったニーズを想定し,「トラックで輸送できるコンパクトさ」,「既存の水電解装置や水素ボンベでも活用できる能力」をコンセプトとした.コンパクトなメタネーション装置は,設計の標準化により,導入コストを抑え,短納期での納入を可能とした.さらに必要な機器をエンクロージャ(筐(きょう)体)内にパッケージ化し,短期間かつ省スペースでの据え付けを実現した.
(3) 小型メタネーション装置の主な仕様
方 式:サバティエ反応
触 媒:Ni系IHI製触媒
反応器:シェル&チューブ型・2段式
e-methane製造量:1.2 ~ 12.5 Nm3/h
エンクロージャ寸法:幅2 200 × 長さ6 300 × 高さ2 811 mm
① 反応プロセス
主要機器は,メタネーション反応器,熱交換器,凝縮器,気水分離器,熱媒ポンプ,熱媒冷却器で構成される.
外部から原料であるCO₂および水素 ( H2 ) の供給を受け,2 段のメタネーション反応器においてサバティエ反応によってe-methaneを合成する.
1 段目反応器の後に副生成物である水 ( H2O ) を凝縮器および気水分離器で除去することで,反応の平衡を崩し,2 段目反応器においてさらにe-methaneの合成を進め,メタン収率を向上させている.
e-methane製造量12.5 Nm3/hの場合には,原料CO₂は12.5 Nm3/h,H2は50 Nm3/hが必要となる.プロセスおよび運転方法はシンプルなものとし,お客さま設備に合わせて,e-methane製造量は1.2 ~ 12.5 Nm3/hで対応可能である.なお,本装置を複数導入することで,e-methane製造量の拡張も可能である.
必要なユーティリティーとしては,冷却水,パージ用窒素,電源,排気設備が挙げられる.
② メタネーション反応器
反応に伴う発熱によって,触媒層の温度が過度に上昇しないように,メタネーション反応器には反応熱を効率良く触媒層から除去することが求められる.小型メタネーション装置の反応器には,IHIが化学プラント向けにおいて豊富な製造実績をもつ「熱交換器型反応器(シェル&チューブ型)」を採用した.熱交換器型反応器は,シンプルなプロセスでかつ反応熱のコントロールが可能である.
反応器の内部は反応部(チューブ)と熱媒部(シェル)に分かれた構造となっており,反応部には触媒を充填する.熱媒部を流れる除熱媒体(オイル)によって伝熱面をとおして反応熱を除去することで,触媒層の温度が上昇し続けること,および熱によって触媒が劣化することを防いでいる.また,反応熱の除去で高温となった除熱媒体を小型メタネーション装置外の別プロセス(例:CO₂回収設備の吸収液加熱)に使用することで,メタネーション反応熱を利用でき,プラントの運転コスト低減も可能である.
小型メタネーション装置におけるプロセスフロー概略
(4) CO₂削減の見える化:環境価値管理プラットフォーム
e-methane利用・CO₂削減はその価値が見える化・定量化されることで初めて価値を生む.IHIは,独自技術の環境価値管理プラットフォームによって,設備の運転データから算出したCO₂排出/削減量を記録・見える化するサービスを提案している.小型メタネーション装置に環境価値管理プラットフォームを適用することで,e-methaneの環境価値をデジタルアセット化し,利用者利益が明確となり,メタネーションの社会実装を一層促進することが可能となる.

適用事例

小型メタネーション装置の具体的な活用方法として,相馬市コミュニティバスへのe-methane供給事例を紹介する.

2022 年度SIGCに小型メタネーション装置を設置し,太陽光発電で製造したグリーン水素を活用してe-methaneを製造し,相馬市が運行する高齢者向けのコミュニティバス「おでかけミニバス」への供給を開始した.e-methaneを燃料とする車両の実証運行は国内初となる.

本事例においては再エネの余剰電力が多く発生している場合にのみ,e-methaneを製造するシステムを導入している.それにより,地域の電力需要に影響を及ぼすことなく,余剰電力を気体燃料に変換して貯蔵・利用している.

また,本事例をとおして,小型メタネーション装置が十分なe-methane製造性能を満足することを確認した.加えて,車両へ供給するために国連規則UNR110に従ってe-methane中に含まれる水素濃度を2%以下とすることが求められたが,運転条件を調整することにより当該要求が満足できることを確認した(詳細はIHI技報Vol. 63 No. 1,2023「国内初e-methaneを燃料としたコミュニティバスの運行開始!」).

環境価値管理プラットフォームの画面( SIGC 適用例)
小型メタネーション装置とコミュニティバス

今後の展望

本稿では,メタネーションの社会実装の先駆けとして「小型メタネーション装置」について紹介したが,IHIでは,さらなるスケールアップに向けて,e-methane製造量が数百 ~数千 Nm3/hスケールとなるメタネーション設備の開発・検討を進めている.最後に各設備規模における今後の展望について示す.

小型メタネーション装置としては,2022 年10 月に販売を開始し,2023 年度中に複数のプロジェクトでの実運用開始が予定されている.今後は,レンタルも含めた販売の拡大やIHI製CO₂回収装置との連携を行っていく.

また,中型メタネーション設備についても,すでに実用化の段階まで開発が進んでいる.実案件として,JFEスチール株式会社向けに,試験高炉の排出ガスから24 t/dのCO₂を回収・再利用し,500 Nm3/hのe-methaneを製造する設備を2025 年に納入予定である.

メタネーション設備としては,2022 年12 月時点で世界最大級の製造能力をもつ.製造したe-methaneを高炉にてコークスの代わりに還元材として利用し,カーボンリサイクルによって高炉からのCO₂排出を削減する.

数千 ~数万 Nm3/hのe-methane製造能力をもつ大型メタネーション設備については,2030 年までに国内外における商用化を目指し,触媒の高度化,反応器の大型化,反応熱の有効利用プロセス改善などを中心にさらなる開発を行っている.

また,e-methaneの社会実装に際する課題も存在している.それらの課題と今回紹介した小型メタネーション装置の貢献について以下に示す.

(1) e-methane導入期の既存燃料とのコスト差が社会実装の障害にならないような支援
⇒ 再エネの生産量が多く,需要量が少ない時間帯の余剰電力を活用することで,運転コストの低減が可能である.
(2) CO₂排出量削減のソリューションとしてe-methaneの製造・自家消費(オンサイトメタネーション)を行う各種事業者にインセンティブを与えるような支援
⇒ 小型のため,オンサイトのレイアウトの制限が少なく,製造量について1台で1.2 ~ 12.5 Nm3/h,複数台によってさらに拡張することができるため,事業者に合わせた導入が可能である.
(3) e-methaneがカーボンニュートラル燃料であることの国内・国際的な認知と,それを裏付けるための温室効果ガスカウントルールの確立
⇒ ルール確立に先立って,CO₂排出削減が定量化され,社会への貢献の見える化が可能である.

今後もお客さまのもつさまざまな状況に応じて,小型メタネーション装置をはじめとするCO₂排出削減ソリューションを提供し,「2050 年カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みを継続していく.