製品の開発評価では性能や耐久性など、要求される仕様に対して設計した仕様が十分であるかを検証します。検証のための評価試験には、まだ世の中に存在しない開発中のエンジンに搭載されることを想定したターボチャージャーの運転状態を模擬することが要求されます。その評価試験をターボチャージャー単体テストベンチで行う必要があります。チームリーダーとして,そのテストベンチの仕様検討から導入といったプロジェクトの管理、運転および計測の能力検証を通した実用化および維持向上、実試験への適用を実際に進めていくことが現在のミッションです。さらに日々の試験品質の確保、テストベンチの安定稼働・中長期運用の計画も同時に担っています。
「Supreme & Tough」
車両用ターボチャージャーは、高温・振動・ロングライフ、且つ世界中の海(ジェットスキー)から山(スノーモービル)までといった厳しい環境下で使用されます。加えて車両に要求される低燃費や環境適合に対してターボチャージャーへの期待が高まっており、IHIはそれに応え続けています。さらに性能や信頼性を追求し材料の極限まで使う技術、お客さまの実際のエンジンとして成立するまでの対応力、試作~量産まで可能な製造技術と品質管理など、いずれも最高レベルを提供し続けています。だから、開発時に最終的に破損するまで運転条件を厳しくする限界能力試験(イジワル試験)をすると、なかなか壊れずむしろ苦労をすることもあるほど。ちなみに私の愛車だった20年超えのIHIターボチャージャー搭載車も最後まで元気でした。
代表的な技術のひとつとして、高速回転技術が挙げられると思います。回転機械の中でもターボチャージャーは規格外な高速回転を成立させているのですが、回転体の構造が大きく変わるような新機種開発では、まず安定した回転を成立させるというハードルがあります。某有名レース用の開発機の初期設計品を評価した際は、初めて見る回転体構造だったため、試験を開始しても回転体が発する振動が大きく想定の設計回転数まで上げられない状況でした。計測しながら可能な限りバランシングし続けた結果、振動特性を同定しつつ予定通りの回転数まで回すことができました。この時高速回転機器を扱う難しさを再認識させられました。ターボチャージャーと組合せた機電一体型高速電動機などもありますが高速回転の求められる機械は様々。自動車の枠を超えた新しい製品にも取組んでいきたいですね。