NeXT Forest

その世界には広大で豊かな森林が広がっています。清らかな川の流れと共に、大小様々な木々の葉を心地良いそよ風が揺らしています。樹齢100年を優に超える巨木が見守る中、動物たちが森と森をつないだ「緑の回廊」を行き来し、色とりどりの果実が実るこの場所に集まってきています。
どうやらオランウータンの親子もふらりと遊びにやってきたようです。

森には光合成によって、大気中のCO2を吸収し、新鮮な酸素を放出する能力がありますが、それだけではありません。
雨が降れば水を貯え保持し、貯えられた水は樹木の蒸発散を通してゆっくりと大気へ戻っていき、他の地域に雨をもたらす役割を持っているのです。

さらにもう一つ、木の葉はなぜ緑色をしているのか、知っていますか?木の葉の緑色には、太陽光の過剰なエネルギーを跳ね返し、地球の気温 を安定させる役割があります。
普段私たちはこのような恩恵を意識していませんが、森は私たちの生活を常に守ってくれる大切な隣人なのです。
私たちはこのような森林を【NeXT Forest】と呼んでいます。

しかし、世界の森林は今、違法伐採や農地への転換、森林火災によって、
減少の危機に瀕しています。

Project Next

オランウータンの赤ちゃんがすくすく育つことのできる、そんなかけがえのない森で、環境・社会・経済の調和を目指し、Project NeXTは立ち上げられました。

そのまま放置しているだけでは、森を守ることはできません。森で働きながらともに暮らす人もいます。私たちは、もっと森のことを深く理解しなければなりません。森が私たちのことを見守ってくれているように、私たちもまたかけがえのない森を見守らなければなりません。Project NeXTは、そのような考えのもとスタートしました。

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Project NeXTには、住友林業とIHIがこれまで培ってきた、様々な科学的知見や技術が導入されています。
木を植え育てる技術。一度劣化した泥炭地を持続的に管理する技術。宇宙から地球を観測する技術。世界の気象を正確に観測し予測する技術。私たちは長い時間をかけて、これらの技術を世界最高レベルまで磨いてきました。

Project NeXTでは、これらの技術を組合せ、住友林業とIHIにしかできない方法で、かけがえのない森林を守り,発展させることを目指します。手つかずの森林の保護だけでなく、既に人の手が入った森をこれまで培ってきた技術で修復し、管理・モニタリングすることで、環境・社会・経済 を調和させることがProject NeXTのゴールです。
木々や動物を見守り、その周りで人々が生活し,仕事をする。こういったコミュニティーを形成することで,豊かな森が保たれ,私たちの生活もまた豊かになる。Project NeXTでは、このような【NeXT Forest】を世界中で実現することを目指しています。

ソリューション

世界最先端の衛星観測技術

IHIの長年の宇宙開発事業で
培われた技術を応用

科学的知見に基づいた
泥炭地管理

145,000ha超の泥炭地を10年間にわたり
測定した住友林業のフィールドデータ

気象観測技術

IHIによる高精度かつ高密度な
気象観測技術とネットワークシステム

持続的な森林ランドスケープの管理

100年以上に及ぶ住友林業の森林管理の知見

これらの技術を組み合わせることで、世界の気候変動対策に貢献します。

グローバルな自然環境の秩序を形作る
熱帯林・熱帯泥炭地

熱帯林は世界の森林面積の45%を占めていますが、手を付けられずに残っているのはそのうち30%に過ぎず、多くは伐採や森林火災、土地の分断、鉱山開発、狩猟などにより深刻な影響を受けています。

また熱帯泥炭地は、世界の陸地面積のわずか0.4%しかありませんが、その炭素貯蔵量は世界排出量の10倍以上に匹敵します。

炭素吸収機能だけでなく、熱帯林や熱帯泥炭地は次のような機能を有しています。

地球規模の水循環

熱帯林・熱帯泥炭地は大量の水を貯 えており、その水は蒸発散を通して 大気中へと戻っていきます。 熱帯の常緑樹林は、地球の面積の約 10%を占めていますが、その蒸発散 量は世界全体の22%に相当します。 さらに世界の泥炭地は、陸地のたっ た3%の面積で世界の淡水の10%を 保持していると言われています。

生物多様性

熱帯泥炭地は、泥炭地の中で最も多種多様 な生物が生息しており、同時に最も危機に 瀕している場所でもあります。大量の泥炭 堆積物の上には、豊かな熱帯林が成立して おり、オランウータンなどの絶滅危惧種を 含む多様な動植物を育んでいます。

世界の気温の安定化

熱帯林の葉は、太陽光のエネルギーを吸収、 反射、散乱し、地球の気温を下げるはたら きをしています。緑色光の放射照度は他の 色よりも高いため、緑色の葉は世界の気温 を安定化させています。

ところが、このような熱帯林・熱帯泥炭地の価値は正しく理解されておらず、違法伐採や農地転換、火災によって森林 減少・劣化の危機にさらされているのが現状です。2020年だけで1,220万haの熱帯林が消失し、そのうち約1/3の420 万ha(関東平野の2.6倍)は、炭素蓄積や生物多様性とって大切な熱帯林であったと言われています。

農地の拡大と違法伐採

食糧、家畜飼料、燃料へのニーズは世界的に高まっており、熱帯林や泥炭地の農地転換を促す原因となっています。この結果、森林減少や様々な環境・社会問題が引き起こされています。

排水型の泥炭地管理

多くの企業は、泥炭地を利用しやすくするために排水型の管理を行っています。地面の傾斜に沿って水路を設置し、泥炭地の水を川に排出するものです。このような管理手法により、泥炭の分解が促進され、火災が引き起こされています。

森林・泥炭地火災

熱帯泥炭地は、地下水位が下がり乾燥化が進むと、より一層火災が発生しやすくなります。消火できずに燃え広がった火災は、ヘイズ(煙害)や大規模なCO2排出の原因となっています。

熱帯林・熱帯泥炭地の行き過ぎた開発や火災によって、22~37億トンものCO2が毎年放出されています。これは世界の排出量の6~11%に相当するものです。

2015年には、インドネシアで1997年以来最悪の森林火災とヘイズ(煙害)被害が発生しました。エルニーニョ現象によって状況はさらに悪化し、約200万haの泥炭地が失われたと報告されています。この年の9月から10月の日あたり平均CO2排出量は11.3メガトンと言われており、たった数か月でEUの化石燃料による排出量8.9メガトンを大きく上回りました。

気候変動

CO2排出による温暖化や、世界規模の水循環バランスが崩れたことによる異常気象が発生しています。

生物多様性の喪失

行き過ぎた開発や火災により、様々な希少生物が生息地を失っています。

ヘイズ(煙害)

大面積の泥炭地火災によって有害な煙やヘイズが発生しています。2015年にインドネシアで発生した森林火災では、10万人以上もの人々が煙による健康被害で亡くなったと言われています。

熱帯林・熱帯泥炭地を適切に管理することは、食糧や水といった私たちの生活基盤の確保に繋がります。

人との調和、という目線で森に目を向けてみてください。森林は私たちの生活に様々な価値をもたらしてくれています。

科学的知見に基づいた
熱帯泥炭地管理モデル

住友林業は、世界で唯一の「貯水型」の熱帯泥炭地管理モデルをインドネシアで確立しています。これは145,000haもの森林で10年以上にわたりデータを収集・蓄積してきた成果であり、火災の防止に貢献しています。

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統合モニタリングシステム

全球観測、UAV、最新の気象観測システム(sPOTEKA)によって集められたデータは、AIによる解析を経てユーザーにフィードバックされます。IHIが開発した日本で唯一の超高密度遠隔気象観測ステーションであるPOTEKAを、泥炭地向けのsPOTEKAとして改良し、使用しています。

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