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緑化レポート

校庭芝生育成不全の原因調査

2008年5月 2日

少し前まで寒さに震えてたと思えば、ゴールデンウィークに突入してからはすっかり初夏の陽気です。

ここ数年、地球温暖化を身近に感じられるようになりましたが、これには世界中の芝生管理技術者の方々も頭を悩ませています。特にゴルフ場では病害虫の発生パターンが大きく変化し、数年前までは発生しなかった季節に病害虫が大発生なんて話もよく耳にします。

病虫害対策のみならず、スポーツターフや学校校庭においてはオーバーシードの時期がたいへん難しくなってきました。夏芝から冬芝のグリーンへの切り替え、冬芝をベースの夏芝に戻す所謂トランジションの時期が例年ずれる傾向にあります。

これにより、従来秋口に行っていたオーバーシード後も、夏芝の勢いを落とすことができずに、冬芝が入り込む隙を与えずに、オーバーシードが失敗に終わるという事例さえ起きています。


東京都内Y小学校のケース

都内のY小学校でも同様に、これまで順調に管理されていた芝生がある時期を境に急激にその勢いが落ちる傾向にありました。

ベースが多くの学校で用いているティフトン系の品種ではなく、ノシバを用いていることも管理を難しくしている要因のひとつと考えられますが、多くの学校がそうであるように継続的かつ過度の踏圧を受けることが主な原因と考えられていました。

そこで、同校校庭と神奈川県横浜市内の数十年にわたり芝草(コウライシバ)の生育が旺盛な場所、それぞれの土壌を採取し、土壌中のC/Nバランス、生菌数などの分析を実施しました。

Y小学校校庭(東京都)と公園芝地(神奈川県)土壌の分析結果(生菌数と窒素含量)

過度な踏圧が掛かると、土壌中の空隙率が極端に減少し、好気性微生物の生理活性が低下しますが、Y小学校校庭の土壌中の生菌数は、良好に管理された芝地の生菌数よりも多く、必ずしも踏圧のみが校庭の芝生の生育が低下した原因ではないようでした。校庭土壌の物性、生化学的性状いずれも良好に管理された芝生に比較して大きく劣るようなデータは得られませんでしたが、唯一窒素含量のみY小学校校庭は、公園芝地土壌の40%程しかありませんでした。(C/N比が大きかった)

窒素源が不足すると芝草の葉の伸長が阻害され、葉立ちが悪くなり葉の密度が小さくなるほか、葉が黄化することもあります。窒素欠乏は、窒素の供給源であるアミノ態窒素が水溶性であることから流出しやすいことに起因し、排水性がよく、土壌がアミノ態窒素を保持しにくい砂地がベースなどの場合に起きることもあります。

水溶性が低い苦土リン安態の窒素肥料(化学名:リン酸アンモニウムマグネシウム)を用いる、土壌をよりアンモニア態窒素が吸着しやすい有機質素材ほかバーク、ヤシガラをすき込むなどの対策を施すこと、また生育の遅いノシバから、葉立ちの良く、耐踏圧性が高く、メリハリの利いたトランジションを容易に行えるティフトン系の品種を芝苗散布によりノシバと混植させるなどの対策を施すことにより、今後の管理がさらに難しくなることがなくなるものと考えます。


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