IHIは長年、治水や発電などの役割を担うインフラに関係する事業に取り組んでいます。今回は、既存のダムを活かしつつ、ダムの機能向上を図る新丸山ダム本体事業に密着し、将来の社長が、その主ゲートを製作したIHIインフラシステムの橋村さん、尾田さん、中村さん、山村さんにお話を伺いました。
橋村さん、尾田さん、中村さん、山村さん
将来の社長、よろしくお願いします!
将来の社長
こちらこそ、よろしくね!
技術者4人から話を聞くのは、初めてのことよ。
橋村さん
国が実施している新丸山ダム本体建設事業は、日本でも有数の大河川である木曽川に位置する丸山ダムの洪水調節機能を維持しながら、かさ上げ工事を進めるため、難易度が高く先進的な技術が必要となるダムの再開発事業です。
将来の社長
難易度が高いのは、技術者としてやりがいがあるわね!
群馬の「八ッ場(やんば)ダム」の回の話もおもしろかったから、今回はさらにおもしろい話が聞けるのね。とっても楽しみよ!
(八ッ場ダムの回 ⇒https://www.ihi.co.jp/ihiing/disaster_prevention/20220829-01.html )
橋村さん
プレッシャーかかります...。
まず、新丸山ダムがある木曽川について説明します。
一級河川の木曽川は長野県の鉢盛(はちもり)山から始まり、いくつもの支川と合流して、長野県、岐阜県、愛知県、三重県の4県を流下し、伊勢湾に注ぎます。この下流域には濃尾平野が広がり、日本のものづくり産業が集まっており、リニア中央新幹線が開業すると、さらなる発展が期待される中部経済の中心になります。
尾田さん
新丸山ダムは、木曽川の河口から約90㎞に位置する岐阜県に建設をしています。
将来の社長
気になってたんだけど、どうして「新丸山ダム」って呼ぶことにしたの?
橋村さん
この場所には、もともと丸山ダムがあり、現在も運用しています。
今回、ダム全体の機能をパワーアップするために「新丸山ダム」として建設されています。
将来の社長
「ダム全体の機能をパワーアップするために、ダム下流に新しいダムをつくることがある」って聞いたことがあるけど、ここは新旧のダムが重なってない?
橋村さん
はい。
既存のダムに新しいダムを「重ねるように建てる」のは、珍しいケースになります。
将来の社長
どうして、重ねるような場所になったの?
橋村さん
既存の丸山ダムの重要な役割である洪水調節と発電機能を、工事期間中も維持することができます。
また、工事区域が小さいため周辺環境の改変が小さく、旧ダムと重なるため新ダムに使用するコンクリートの量が少なくコストを抑えられるというメリットもあります。
尾田さん
つまり、新丸山ダムの洪水調節機能を確保し、環境に配慮したプランが選ばれたんです。
将来の社長
現在あるものを活かして、新しくつくり変える。
国内ではダムだけじゃなく、いろんなインフラにも通じる話ね。
尾田さん
そうですね。
将来の社長
そもそも、何のために新丸山ダムをつくっているの?
尾田さん
さすがは将来の社長、大事な視点です。
目的は、大きく3つあります。
1つ目は、「洪水調節機能の強化」です。
新丸山ダムは、丸山ダムの下流に高さを約20mかさ上げする事業です。
これにより、木曽川で戦後最大の被災となった昭和58年9月洪水と同規模の洪水を安全に流下させることができるようになり、昭和58年の洪水で大きな被害があった美濃加茂市・可児市付近の今渡地点で約2.7mの水位低下効果(新丸山ダム完成時の河道を想定)が見込まれ、河川氾濫による浸水被害がなくなります。
将来の社長
約2.7mって、家の1階分ぐらいの高さよ。それだけ下げられるなら、洪水の時でも安全に川の水を流すことができるわけね?
橋村さん
その通りです。
2つ目の目的は、「流水の正常な機能の維持」です。雨が少ない渇水の時は、川を流れる水の量も少なくなり、川で暮らす魚や動植物の生息する環境が減ったり、海水が河川に入り込んでくることで、水の利用や生態系に影響が出ます。
だから、新丸山ダムは、渇水時にも川の水量を一定に保てるように、上流の阿木川ダム、味噌川ダム、新丸山ダムの3つのダムと合わせて必要な河川流量である40㎥/s(木曽成戸地点(岐阜県海津市))の水を流してます。
将来の社長
そんなに大量の水が1秒ごとに出るの!?
ダムの力って、本当に大きいのね!
尾田さん
そうですね。
このダムができれば、年間を通して川の環境がより良く保たれると思います。
そして、3つ目の目的は「発電量の増量」です。
ダムのかさ上げにより水面が上がることで、水力発電の出力が上がります。
現在運転されている丸山発電所と新丸山発電所を合わせた最大出力が188,000kWから210,500kWに増量します。
将来の社長
新丸山ダム本体建設事業の意義は、よく分かったわ。
じゃあIHIは、このダム建設で何を担当してるの?
橋村さん
「高圧ラジアルゲート」と呼ばれる、高水圧に耐えられる扇型の大きな水門をつくりました。
「主ゲート」という名前で呼ばれますが、ダムの水を止めたり、流したりするために欠かせない重要な設備です。
将来の社長
I H Iのことだから、きっと、新しい技術を使ったのね?
尾田さん
そうです。初めてのことに挑戦しました。
将来の社長
「初めて」も「挑戦」も好きよ。聞かせて!聞かせて!
尾田さん
それは、次回、詳しくお話します。
将来の社長
ダムゆえに、説明の流れをせき止めるのね...
尾田さん
上手いこと言いますね!
(つづく)
《参考》
新丸山ダム本体建設事業については、国土交通省 中部地方整備局 新丸山ダム工事事務所ホームページで見ることができます!
詳しくはこちらから↓
https://www.cbr.mlit.go.jp/shinmaru/index.html