水素や再生可能エネルギーを活用した地域づくりに取り組んでいる「そうまIHIグリーンエネルギーセンター(SIGC)」。
エネルギーの地産地消、地域活性化、防災の分野で、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めています。
前編に続いて、将来の社長が技術開発本部 技術企画部 SIGCグループの中島主幹、岩重主幹に、SIGCの現状、進行中の研究開発、これからの展望について伺います。
将来の社長
SIGCの2つ目のコンセプト「地域活性化」については、どんなことをしているのか聞かせて!
岩重さん
研究拠点としての門戸を開き、いろいろな人にSIGCを使ってもらって、水素に関する新しい取り組みを進めたり、水素の研究や仕事をしている人たちが集まったりすることを目指しています。
いろんな人が相馬市に来るきっかけをつくることで、町に活気が出ることをサポートしたいと思います。
将来の社長
町に活気が出るなんて、水素って、人間のエネルギーにもなるのね。
他にはどんな取り組みをしているの?
岩重さん
SIGCでは、水素をつくる時に一緒に出る酸素を活用して、陸上養殖と水耕栽培を組み合わせた「アクアポニックス」という方法で、水と栄養が循環する仕組みの中でリーフレタスを栽培したり、ティラピアやヒラメを育てたりしています。
将来の社長
野菜と魚を同時に育てているの!? 育てたものはどうするの?
岩重さん
アクアポニックスで育てたリーフレタスは、市内に13校ある公立小中学校の給食用に、無償で提供しています。
試験をしながら育てていて、一度に全部の学校に届けられるほどの量ではないので、2~3週間に1回ずつ、順番に届けています。
収穫した次の日の給食にリーフレタスのサラダが出るんですよ。
将来の社長
葉っぱが青々としてるわね。味はどうなの?
岩重さん
私も食べましたが、とてもみずみずしくておいしかったですよ。
食べた子どもたちからは、「シャキシャキしていて、おいしかった」という声も届いています。
水耕栽培で根っこがついたまま出荷しますから、日持ちも良いんです。
将来の社長
給食の話を聞いていたら、お腹がすいてきちゃった。
ティラピアやヒラメも食べてるの?
中島さん
今はアクアポニックスの改良のために育てているので、自分たちでは食べますが、まだ、外部に食用としての提供はしていないんです。
将来の社長
何を改良しているの?
中島さん
魚に餌を与えると、フンが出ますよね。それを野菜の栄養に活用しています。
どのくらいの餌をあげたらどのくらいの野菜が収穫できるのか。
化学肥料を与えずに野菜を育てていますから、最適な水質にするにはどうしたら良いかなど、いろいろなバランスを実験しているところなんです。
将来の社長
魚と野菜の生育をつなげて循環させているってわけね?
ヒラメは海の魚でしょ?
淡水魚のティラピアと一緒に育てられるの?
中島さん
ティラピアは淡水で、ヒラメは海水で育てています。
海水には塩分があるので、普通は野菜が育たないんです。
世界でも例を見ない「塩分を含んだヒラメのふんをどうやって野菜に活かせるか。循環させるか」を実用化する研究をしています。
将来の社長
何のために、そんなことしているの?
中島さん
こうした循環の仕組みを宇宙で活かせたらと考えています。
宇宙ステーションで、海魚や野菜を育てて、食べられたら、宇宙滞在が快適になると思いませんか?
将来の社長
宇宙で生野菜や生魚が食べられるなんて!
そういうこと考えるなんて、あなた食いしん坊なのね!
中島さん
はい。食は生の源ですから!
将来の社長
共感するわ!私も食いしん坊だから。
他にも地域の暮らしに役立っている研究や開発はあるの?
岩重さん
あります。
例えば、「電力需給システム」や「自立運転」は、すでに地域で活かされています。
それに、メタネーションで製造したメタンは市内を走るコミュニティーバスの燃料として使われています。
将来の社長
太陽の光がカタチを変えて、高齢者の足になって使われてるのね。
そのバスの燃料は全部メタンなの?
岩重さん
メタンガスとガソリンの両方で走れるように改造しています。
普段はメタンで走っていますが、メタンの供給がない時はガソリンで運行することもあるんです。
将来の社長
メタンがつくれない時って、どんな時なの?
岩重さん
余剰電力がない時ですね。
メタンをつくるメタネーションには、太陽光発電の電気を使うので、天気が悪い日が続くと電気が足りなくなって、つくれないんです。
将来の社長
そっか...。他から電気を買ってまでメタンをつくるのは「再生可能エネルギーの地産地消」のコンセプトに反するしね。
しかし、こういう新しい仕組みを実際に使えるようにするまでには、いろいろ苦労もあったでしょ?
中島さん
そうですね。
一番苦労したのは「規制」の壁でした。
日本では「天然ガス自動車」っていう決まりがあるんです。
今回、私たちが使っているのは、水素と二酸化炭素からつくった人造のメタン。
成分は同じなのに、「天然じゃないからダメなんじゃないか?」って疑問符をつけられました。
将来の社長
成分が同じでも、天然じゃないとダメなの?
中島さん
世界では成分で判断するのが普通なのですが、日本では昔からの独自ルールがあって...。
そこで、私たちは国際的な基準を調べて、経済産業省に相談したりしながら、ルールの整理からはじめたんです。
将来の社長
バスを走らせる新しいエネルギーをつくりながら、同時に新しいルールもつくったんだ!
中島さん
そうですね。
技術だけじゃなくて、制度の整備をすることも「社会で使ってもらうための大事な仕事」なんですよ。
将来の社長
新しい技術は、社会の中に使ってもらってナンボだもんね。
中島さん
その通りです。
将来の社長
次は、SIGCの3つ目のコンセプト「防災機能の充実」について教えて。
中島さん
ここまで内容が充実しましたので、それについては次回、お話します。
将来の社長
じゃあ、シャキシャキのリーフレタスを食べながら休憩ね!
(後編へつづく)