• テーマ曲紹介
  • BGM・音声
  • OFF
BGM・音声

カーボンニュートラル実現に向けた課題と取り組みを解説

カーボンニュートラルの現状

カーボンニュートラル課題01

カーボンニュートラルとは、CO₂などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで、全体としてゼロにする取り組みです。

2020年10月、当時の菅内閣総理大臣 が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言し、日本でもさまざまな企業が取り組んでいます。

カーボンニュートラルに向けた課題

カーボンニュートラル課題02

従来燃料への依存度が高い日本

日本のエネルギーは石炭・石油・液化天然ガス(LNG)に依存しています。

日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しており、そのためにCO₂排出量削減にむけた再生可能エネルギーの導入拡大や、従来の石炭・LNG燃料からアンモニア・水素への切り替えによるゼロエミッション火力の実現が期待されています。

ただしゼロエミッション火力の導入・拡大においては、エネルギー資源の調達リスクを抑えて、適切な価格で必要な量を安定供給する必要があります。そのために生産コストを抑えた製造技術や効率よく運搬・貯蔵できる技術の開発が必要です。

日本の総合的なエネルギー戦略のためには、アンモニアや水素を燃料とするゼロエミッション火力だけでなく、太陽光や風力など地域特性に応じた再生可能エネルギーの導入・拡大や、省エネ技術の強化、スマートグリッドの活用などをバランスよくミックスする必要があります。

「スマートグリッド」とは?
情報通信技術(ICT)を活用して、あらゆる電源からの電力の流れを供給側、需要側が相互に連携して最適化し、高効率、高品質、高信頼度の電力供給システムの実現を目指すものです。

再生可能エネルギー導入のハードル

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候や立地に左右されやすいため、安定供給を確保するには蓄電池などの追加設備が必要となります。

日本は国土が狭く人口密集地が多いため、大規模な発電設備の導入が難しく、また、住民合意や景観への配慮なども求められます。

しかし、従来の電力供給のように中央集権型の大規模発電所を主体とするものではなく、 地域特性に合った分散型エネルギーモデルや、スマートグリッドを活用した需給バランスの最適化を図ることで、再生可能エネルギーの普及を着実に進めることが期待されています。

排出基準設定の現状

国別のCO₂排出量は、CO₂排出が実際に起こった国で排出量をカウントする「生産ベースCO₂排出量」という推計を用いて測られています。この場合、製造拠点が多い新興国では、自国で消費する製品だけでなく、消費しない製品を生産する過程で排出されるCO₂も自国分の排出量とカウントされます。そのため、新興国でのCO₂排出量が増加傾向になってしまいます。

一方、製品が最終的に消費される国のCO₂排出量として、消費される際に排出されるCO₂に生産過程で排出されるCO₂も含めてカウントするのが「消費ベースCO₂排出量」です。この場合、最終的に消費する国が責任を負うことになり、公平性を高められる可能性があります。

カーボンプライシング導入による影響

炭素税や排出量取引制度などのカーボンプライシングは、企業などから排出されるCO₂を含む温室効果ガスに価格をつけることで、削減を促す政策手法です。

高排出産業にとっては、製品製造コストや調達コストが増加することが見込まれます。また、 CO₂削減の取り組みに伴う各種コストを価格転嫁せざるを得ない場合には、消費者への負担増も課題となるでしょう。

一方で、得られた税収を、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及に利用した場合、CO₂排出量の削減につながります。また、再生可能エネルギーの経済性が高まることから企業による導入が進み、競争力を高めるためにCO₂排出量の少ない製造方法などの開発が進むことで、カーボンニュートラルと経済成長の両立を図る道も開けます。

消費者や企業に CO₂を排出することは、炭素税などの負担に繋がりコストが増えること、と意識させる仕組みとして、カーボンプライシングは今後の政策議論の重要な柱となっています。

効果検証の難しさ

CO₂排出の削減施策や、どうしても削減しきれないCO₂を相殺するカーボンオフセットプログラムがどこまで効果を上げているか、正確に検証することは容易ではありません。

CO₂排出量の算定基準やカーボンクレジットの認証ルールが国際的に統一されておらず、国や企業ごとに数値の取り扱いが異なる場合もあります。

こうした状況を改善するためには、国際ルールの統一とすべてのデータを透明かつ公平に集約する体制の整備が必要です。そのため、デジタル技術によってサプライチェーン全体のCO₂排出量の追跡や記録の精度を向上させることや、国際的なガイドラインの策定が不可欠となります。

カーボンニュートラル実現に向けた取り組み

カーボンニュートラル課題03

製造・生産・建設など「つくる」段階での取り組み

カーボンニュートラルを推進するには、製造・輸送・消費といったあらゆる段階で消費エネルギーを減らすとともに、再生可能エネルギーを活用するなどの総合的な戦略が必要です。

「つくる」(製造)段階のCO₂排出は他の段階と比べて多い傾向で、高排出産業の生産プロセスを根本から変えることが鍵です。

たとえば鉄鋼業では、製鉄の際に排出されるCO₂を抑える水素還元製鉄技術や、製鉄所内で廃棄されている低温の熱エネルギー(未利用低温排熱)を利用し、CO₂を回収する技術の導入が検討されています。

また、化学産業では、すでに排出されたCO₂を資源として活用し、化石資源由来のプラスチックを代替素材に切り替え、再生可能エネルギーを使うことによって、これまでのプラスチック製造方法と比べて、CO₂排出量を大幅に減らす取り組みを進めています。

「水素還元製鉄技術」とは?
石炭のかわりに水素を使って鉄鉱石から鉄を取り出す方法で、CO₂の発生を削減することが可能な技術です。

輸送・物流など「運ぶ」段階での取り組み

製品や材料を「運ぶ」段階では、輸送手段やルートの効率化がCO₂削減の大きなポイントです。

物流企業との協力体制を強化し、共同配送やルート最適化によってトラック全体の走行量を減らす、船舶・航空の燃料をクリーンエネルギーに切り替えるなど、さまざまな方策が試みられています。

さらに、地元で生産されたものを地元で消費することで長距離輸送を減らすことができ、CO₂削減につながります。

利用・消費・運用など「つかう」段階での取り組み

「つかう」段階での排出削減は、再生可能エネルギーを主力電源として活用するほか、省エネ機器や高効率建物を運用することで大きな効果を得られます。

太陽光や風力発電を導入し、空調や照明のエネルギーを最小限に抑えられる建物を利用したり、CO₂排出量の少ない製品やサービスを積極的に利用するなどの取組を通じ、オフィスや家庭でもCO₂の排出を下げることが可能です。

さらに、炭素税や排出量取引制度などを導入して「CO₂ 排出にかかるコスト」を見える化することで、企業や消費者にカーボンニュートラルを意識した行動が広がります。

森林保全や植林をはじめとするカーボンオフセットと、大気中のCO₂を回収し貯留するなどのネガティブエミッション技術を併用する取り組みも、最終的な排出量をマイナスに転じる上で重要です。

「ネガティブエミッション技術」とは?
大気中のCO₂を回収・吸収し、貯留・固定化することで大気中のCO₂除去を助ける技術です。

まとめ

カーボンニュートラル課題04

カーボンニュートラルとは、CO₂などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで、全体としてゼロにする取り組みです。

CO₂排出を減らすだけでなく、カーボンオフセットと組み合わせることで、実質的な排出量をゼロに近づけるのが特徴です。

カーボンニュートラルの取り組みでは、技術開発や政策支援、地域社会との連携を強化して、さらなる排出削減と経済発展を両立させる取り組みが各所で進行中です。

IHIグループは、私たちの脱炭素技術を用いてグローバルなカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

新着記事ing