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ビジョン、対話、Disciplineの3年間 事業開発統括本部長 小林淳
事業開発統括本部長小林淳
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ビジョン、対話、Disciplineの3年間

記憶に残った仕事はいっぱいありますが、1つと言われると、2009年にIHIインフラシステム(IIS)っていう新会社をつくったことですね。当時、企業買収や事業戦略は、経営企画部などが担当していたのですが、一営業部長である僕が主導してやれたんです。それは、なぜか。

国内橋梁は最盛期には、年間80万トン、1兆円弱ぐらいの市場があったのが、2008年、09年頃になると、30〜40万トンで、半分以下になった。そこに大小含めて約100の会社があり、トップシェアでも10%いくかいかないかぐらいに縮小していたんです。

その中で、IHIの順位は5、6番目ぐらいで、十分な利益が出ていなかった。競合大手が撤退するという話も出ていた。当社の経営陣は「国内はもうやめたら?」「海外だけでやっていけばいい」という雰囲気だった。せっかく国内橋梁営業部長になったのだから「やめない」と言うと、「じゃあ、どうやって食っていくのか示せよ」と。

橋梁事業トップの考え方は、橋梁の桁を造っていた愛知工場へ設備投資をして、生産効率を上げて、コストを下げていく。海外ではアメリカに工場を持って、アメリカの橋梁の仕事をするということでした。その予算があるなら、国内橋梁を再編するためにも、国内の会社を買おうと考えました。しかし、企業買収のことは何も分かっていない若造だったので、とりあえず「四季報」で時価総額を見ながら、「ここは買えそうだ」「上場してるし良いな」という会社が見つかると、そこを具体的に調べて、松尾橋梁さんとか、栗本さんが候補になりました。当時、IHIと松尾橋梁は犬猿の仲でした。

大企業あるあるですが、会社に提案したら、「なんでもっと大手と組まないのか」と反対されました。だから、タスクフォースチームをつくり、技術力の高さ、工場の立地、一緒になった時の伸びしろなどを分析。自分で交渉にも行き、松尾橋梁、栗本橋梁エンジニアリング、栗本の水門部門を買収しました。

給与体系も、カルチャーも違う3社が一緒になれば、当然、混乱が起きるわけです。給料が低かった会社の社員の給与を上げながら、IHIはこれまで通りとなると、不満な人たち、反発、抵抗する人たちがいっぱい出てくるわけです。

毎日のように、2、3人ずつと食事に行って、新しい会社の目指すところを話す。1回じゃ納得しないので、それを3年間延々とやりました。懇親のために、みんなで温泉旅行をするなどを計画しても、IHI社員の抵抗は想像を絶するものがありました。

全社をまとめるために、一番大事にしたのは、明確なビジョンを伝えることです。ゴールはここで、なぜやるのか。そこに行くと何があるのかってことを明確にして、それがぶれないようにしました。

そして、全員が分かるような平易な言葉で説明。4万トン取るよと。取れると20%に近いシェアになる。10年後に業界が20万トンまで落ち込んでもやっていける。お客さんがこういう分布でいるけれど、このお客さんを取りに行く。第2、第3の業界再編はこうやってやるよと具体的に伝えていきました。

日本で1番になれることって、個人ではあまりないですよね。だけど、ビジネスだったら、一緒にやれば業界で1番になれる。1番になったら、今、見てるのと違う景色が見える。利益を出せるようになれば、いろんな問題が解決できるから、とりあえず1番になろうよと常々言ってました。

いつの時代も一緒だと思いますが、最も重要なことは規律、Disciplineです。それは、ルールとか、守るべきことと思われがちですが、それぞれが自分の役割を認識して、それを全うすることがDisciplineです。組織がうまくいかない時は、各自がやらなきゃいけない役割を誤解したり、やらなくて良いことまでをしたり、規律がない状態であることが多い。皆がきちんとDisciplineをやれば、成果はおのずと出てくる。

あとは、本当にやるかやらないかだけの話。ほとんどの人はやらない。やれば、だいたい成功するんですよ。やる勇気、やり通す意思を持ち続けることが、成功への普遍的な道筋じゃないかと思います。

また、ビジョンの啓蒙を続けていく中で、一番やっちゃいけないと思ったのは、100%皆に同意させようとすること。何を言っても、必ず反対する人はいます。100%にしようとすると行き詰まる。過半の人たちが同意して、行動してくれればいいなっていうぐらいの気持ちで、対話を続けていくしかない。

無数の摩擦がありながらも、IISはビジョンの通りに、トルコのイズミット横断橋を1,000億で単独受注したり、ベトナムで300~400億の橋梁を受注できました。3年の間に、新会社を軌道に乗せ、国内橋梁のトップシェアに成長させられたことが、最も大変で、楽しかった仕事ですね。

入社当時の小林本部長

Q.10年後のIHIグループは世の中でどんな存在であって欲しいですか?

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