化血研から国内最大規模の組換えアルブミン生産バイオプラント 建設工事を一括受注
石川島播磨重工(IHI)は化学及血清療法研究所(*1)(熊本市、内野矜自理事長、以下、化血研)から、国内最大規模の組換えアルブミン(*2)生産工場のエンジニアリング、調達、建設、試運転およびバリデーション業務(*3)を一括受注しました。受注金額は約50億円です。
本件は、IHIが昨年5月の設計業務受注に引き続き建設業務を受注したもので、設計業務において生産設備の検討、FDA(米国食品医薬局)との事前ミーティングを経て技術的により発展させ、その技術・プロセスがcGMP(*4)上問題の無いことを確認し、このたびの建設実施が決定したものです。着工は2004年4月、完成は2005年9月末の予定です。
IHIグループでは、バイファ(三菱ウェルファーマ51%、ニッショー49%)の組換えアルブミン生産工場(北海道千歳市)を受注、1999年に完成させており、今回はこれに続く二つ目の大型組換えアルブミン生産工場建設の受注となります。
IHIは平成14年8月に旧新潟鐵工所の医薬・産業プラント事業部門を統合し、「医薬エンジニアリング」分野を強化しており、このたびの受注を機に今後さらにIHIグループ一体となり本事業に注力していきます。
IHIグループは医薬プラント分野で40年弱の経験と約200件の実績を有するとともに、全世界で数多くの重要な医薬品製造設備を手掛けている大手エンジニアリング会社のフォスターウィラーと協力関係にあり、グローバルなGMPに対応する体制を整えています。フォスターウィラーは化血研とプロセス技術に関し提携関係にあるデルタ・バイオテクノロジー社の類似プラントの基本設計を行なった経験があります。
IHIグループのバイオケミカルエンジニアリング部門は、実用化を目指した培養の安定化や、種々の条件下でのスケールアップデータの取得が可能な培養実験装置をIHI横浜事業所内に保有し、医薬品製造会社等と研究開発を共同で行なえる体制を整えています。同装置を利用した受託/共同開発の実績は16件にのぼります。
化血研では、今回の第一期工事では先ず臨床試験用薬の製造を目的とした設備を建設し、今後約10年をかけ段階的な投資を行い工場を拡張していく考えで、本施設の総投資額は第一期工事から第三期工事で100億円以上になります。
第一期工事の規模は2階建て(延べ床面積約6,800㎡)です。
本プラントの第三期までの最終的な工事完了時点での設備能力は、12.5グラム入り製剤換算で年間100万本、さらに将来拡張を含めると国内最大級の規模になる計画です。
化血研では、製品の安定供給を念頭に、FDAの規制にも完全に対応したクリーン且つ高効率、コンパクトな21世紀型工場を建設していく計画です。
現在、日本ではアルブミン製剤を相当量輸入に頼っており、原料もヒト由来(献血による血液)のものになっており、供給の安定性、製品の安全性上、この様 なプラントが出来る事は、国が掲げている国内自給体制の推進に貢献出来ることとなり、本分野での成果に大きな期待が寄せられています。
*1 | 財団法人 化学及血清療法研究所(カガクオヨビケッセイリョウホウケンキュウショ) |
理事長・所長:内野 矜自(ウチノ キョウジ) 氏 | |
設立:1945(昭和20)年12月26日 | |
*2 | 組換えアルブミン |
血液の浸透圧を維持し、血圧や循環血漿量を正常に保ち、又、血液中の脂肪酸・ホルモン薬物等を運搬する。 | |
アルブミン製剤は低蛋白血症による病態に、補充療法として使用される。 | |
代表的な使用目的としては、手術やケガ等の出血で血液が大量に失われる場合や、肝硬変やネフローゼ等の場合の治癒に使用されている。 | |
今回は酵母を産生細胞とするアルブミン製剤であり、各種組換え医薬品の安定化剤としても使われている。 | |
*3 | バリデーション |
医薬製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理および品質管理方法が、期待される結果を与えることを検証し、これを文書 | |
化すること。 | |
*4 | GMP |
医薬品の製造及び品質管理に関する基準。米国では「常に最新のものを」と“cGMP”(c:current)としている。 |