日豪共同の酸素燃焼による石炭火力でのCCS技術実証プロジェクトの開始
株式会社IHIは、電源開発株式会社(以下Jパワー)および三井物産株式会社(以下三井物産)と、豪州カライド(Callide)石炭火力発電所で行われる日豪酸素燃焼CCS実証プロジェクトに参画するため、2008年3月20日に日豪参加企業間7者で実証実験の実施母体となるJV設立の協定書を締結しました。
本プロジェクトは、既設石炭火力発電所に酸素燃焼技術を導入し、CCS 技術(CO2分離・回収、輸送、貯留)の一貫システムを検証する世界初の実証試験です。クイーンズランド州ブリスベン市から450キロ北西部に位置するカライド A発電所(発電容量30MWe)の改造工事を2008年前半に開始し、2010年末から酸素燃焼技術によるゼロエッミション発電の実証試験を開始する計画です。CO2貯留地点は発電所西部の地中深層部となる見通しです。プロジェクト費用総額は、2億6百万豪ドル(約200億円)を予定しています。
酸素燃焼技術は、1974年に世界に先駆けて日本で発案され、JパワーとIHIが開発を行ってきたものです。予め空気から窒素を取り除いた後の高濃度の酸素で石炭を燃焼するため、排ガス中の二酸化炭素(CO2)の分離回収が容易となります。 本プロジェクトでは、既設石炭火力発電所を利用し、スケールアップされた規模で適用可能な技術を実証し、排出されるCO2の90%以上を削減することによって、極めて高いCO2削減効果の達成を目指します。
本プロジェクトはAPP(アジア・パシフィック・パートナーシップ*)のフラッグシッププロジェクトと位置づけられており、日本政府と豪州連邦政府の補助事業となっています。豪州からは、クイーンズランド州営電力会社(CS Energy)、エクストラータ社(Xstrata)、シュルンベルジェ社(Schlumberger)が参加するとともに、豪州石炭協会(ACA)が設立したCOAL 21ファンドから資金が拠出されます。
Jパワー、IHI及び三井物産は、APPへの提案者である財団法人石炭エネルギーセンター(JCOAL)の協力を得て、本プロジェクトを通じて信頼に足るCCS技術を実証し、世界的に関心の高まる地球温暖化問題に積極的に取り組みます。
<プロジェクトの概要>
JV名称 | : | オキシフューエルジョイントベンチャー(Oxyfuel Joint Venture) |
JV代表者 | : | デビットブラウン(David Brown, CEO, CS Energy) |
JV参加者 | ||
日本 | : | 電源開発株式会社、株式会社IHI、三井物産株式会社 |
豪州 | : |
CS Energy/クイーンズランド州営電力会社 |
設立年月日 | : | 2008年3月20日 |
プロジェクト総予算 | : | 205.9百万オーストラリア・ドル(約200億円) |
※APP(アジア・パシフィック・パートナーシップ)
「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)は、2005年7月に立ち上げられた地域協力のパートナーシップ。パートナー国は、日本、豪州、中国、インド、韓国、米国の6ヵ国で始まり、2007年にはカナダが加わり現在7カ国。APPでは増大するエネルギー需要、エネルギー安全保障、および気候変動といった問題に取り組むことを目的としている。具体的には、クリーンで効率的な技術の開発、普及、移転の地域協力の推進を目指している。そのために民間のパートナーとも協力し、主に化石エネルギーの分野を対象に官民によるタスクフォースを設立し、共同で活動しているもの。