Change
Location

現在は日本サイトをご利用中です

プレスリリース
研究開発

iPS細胞をはじめとするヒト幹細胞の大量培養技術の開発を加速
~横浜市特区リーディング事業助成金の対象事業に決定~

 株式会社IHI(本社:東京都江東区,代表取締役社長:斎藤 保)が,再生医療の実用化に向けて公立大学法人横浜市立大学(理事長:二見 良之)と共に取り組んでいる,「大量培養機能を有するヒト細胞の製造システム」の開発が,このたび,横浜市の「横浜市特区リーディング事業助成金」(※1)の対象事業に採択されました。IHIは,今回の採択を機に,再生医療に向けた大量培養技術の開発を加速して参ります。

 従来の医療では治療困難な疾患等において,ヒトiPS細胞(※2)やヒトES細胞(※3)など,ヒト幹細胞(※4)を用いた再生医療の開発に期待が寄せられています。これらのヒト幹細胞を用いた再生医療を実現するためには大量のヒト幹細胞を培養し,分化誘導により機能的な細胞を得る必要があります。しかしながら,ヒト幹細胞や分化誘導により得られる細胞の機能を維持したまま,大量に培養するための技術は確立されておらず,培養細胞の品質にバラツキが生じるなどの課題がありました。そこで,高い品質を持つヒト細胞を大量かつ安定的に供給するための製造システムの開発が急務となっています。

 このような背景のもと,IHIではこれまでに培ってきたバイオ医薬製造のための動物細胞の大量培養技術,産業機械の機械設計・制御技術等のコア技術を応用して,iPS細胞やES細胞を浮遊培養するための大量培養装置を2013年に試作し,マウスES細胞の大量培養に成功しました。また,2014年より,横浜市立大学との協力関係のもと,肝臓や軟部組織領域における再生医学の第一人者である同大学大学院医学研究科の谷口英樹博士の指導・協力を受け,ヒトiPS細胞の培養に取り組み,大量培養機能を有するヒト細胞の製造システムの開発を進めています。今回の採択を機に,ヒト細胞を医療グレードで大量かつ安定的に培養するための培養技術の実用化に向けた開発をさらに加速していきます。

 IHIは,「グループ経営方針2013」において世界人口の増加に伴う諸問題を解決するため,「ライフサイエンス・食料・水」分野を重点新事業領域とし,本分野における成長・注力事業の創出に取り組んでいます。今後もIHIのコア技術と医療分野でのノウハウを組み合わせることで,自動大量培養技術の開発を強化し,再生医療の普及に貢献していきます。


  • 1. 横浜市特区リーディング事業助成金
    横浜市は,京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区において,国際的な課題の解決に貢献しながら,『個別化・予防医療時代に対応したグローバル企業による革新的医薬品・医療機器の開発・製造と健康関連産業の創出』を目標に,経済成長とライフサイエンス産業の発展に向けた取り組みを推進している。横浜市では,この取組の一環として,「特区リーディング事業助成」という独自の助成制度を設け,国際戦略総合特区の目標に寄与する先駆的なプロジェクト等に対して,一定の基準で助成を行っている。
    参考リンク:横浜市経済局ホームページ
  • 2. iPS細胞
    人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)のこと。2006年に山中教授の研究により世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立に成功したと報告された。様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつ。再生医療を実現するために重要な役割を果たすと期待されている。
    出典:京都大学iPS細胞研究所(以下CiRA),CiRAホームページ,http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq3.html および http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq2.html,2015年8月12日
  • 3. ES細胞
    胚性幹細胞(ES細胞:embryonic stem cell)のこと。ES細胞は受精後6,7日目の胚盤胞から細胞を取り出し,それを培養することによって作製される多能性幹細胞の一つで,あらゆる組織の細胞に分化することができる。しかし,受精卵を破壊する必要があり,倫理的問題がある。患者自身の細胞から作製することが困難なため,免疫拒絶の問題が指摘されている。
    出典: CiRA, CiRAホームページ,http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq3.html,2015年8月12日
  • 4. 幹細胞
    人間の体は約60兆個の細胞が集まってできているが,その中には「細胞を生む」ことができる細胞があり,それを幹細胞と言う。幹細胞は分裂して「自分と同じ幹細胞」と「他の細胞に変化する細胞」を同時に作ることができる。もともと体の中に存在している神経幹細胞,上皮幹細胞,肝幹細胞,生殖幹細胞,造血幹細胞などがあり,iPS細胞やES細胞など人工的に作製された幹細胞がある。
    出典: CiRA, CiRAホームページ,http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq3.html,2015年8月12日

ヒト幹細胞の大量培養に向けた独自培養リアクタを有した培養装置
【参考画像】ヒト幹細胞の大量培養に向けた独自培養リアクタを有した培養装置

ニューストップへ