超電導電力機器冷却用大容量ターボ冷凍機向けターボ回転機を大陽日酸と共同開発 ~ターボ冷凍機『NeoKelvin®-Turbo 10kW/ネオケルビンターボ10kW』販売開始~
株式会社IHI(所在地:東京都江東区,社長:満岡 次郎,以下「IHI」)は,大陽日酸株式会社(所在地:東京都品川区,社長 兼 CEO:市原 裕史郎、以下「大陽日酸」)と共同で,ネオンガスを冷媒に使用し,超電導電力機器を-200℃以下で冷却可能な大容量ターボ・ブレイトン冷凍機(※1)向けターボ回転機(圧縮機と膨張タービン)を開発しました。
この最新鋭のターボ回転機が搭載されたターボ・ブレイトン冷凍機『NeoKelvin®-Turbo 10kW/ネオケルビンターボ10kW』は,大陽日酸が開発した世界最大級(同社調べ)の冷凍能力を誇るターボ冷凍機で,このたび,同社から超電導送電ケーブルの実証,導入検討に積極的な韓国や米国向けを中心に販売が開始されました。
1.開発の背景
電力関連分野では,送電系統の容量増強や損失低減,系統安定化などの解決策の一つとして,電気抵抗がゼロである超電導を利用した電力機器(送電ケーブル,限流器(※2)など)の研究開発が進められています。このうち、送電ケーブル分野では、今後,多くの需要が期待されていますが,実用化には冷却温度-200℃近傍で2~10kWの冷凍能力を持つ冷凍機が必要となります。
大陽日酸では,このニーズに対応すべく,冷凍能力を同社従来機の5倍の10kWに高め,長さ1kmの実用規模の超電導ケーブルの冷却を可能とする『NeoKelvin®-Turbo 10kW』の開発を進め,世界に先駆け商品化に成功しました。その大容量ターボ・ブレイトン冷凍機の実現に欠かせないのが,今回同社とIHIで共同開発をしたターボ回転機です。
2.ターボ回転機の概要
今回共同開発したのは,『NeoKelvin®-Turbo 10kW』の主要構成機器の一つである,冷媒の圧縮と膨張を行うターボ回転機です。IHIでは,これまで,CERN(欧州合同原子核研究機関)向けに極低温圧縮機を納めた他,多数の極低温圧縮機の納入実績があり,冷媒や諸条件に合わせた最適設計ノウハウなど,最先端の極低温回転機械技術を有していることから,本ターボ回転機の開発に携わることになったものです。
ターボ回転機の特長は以下のとおりです。
(1) | ターボ回転機は,膨張タービン,圧縮機および電動機を同一主軸に配置する構造を採用し,膨張部で発生する動力を効率的に圧縮機の駆動力に利用し,消費電力の低減を図っている。 |
(2) | 膨張タービン・圧縮機は,本仕様に適したインペラを新規に設計し最適化を図っている。また,常温に配した圧縮機側から低温部の膨張タービンへの熱侵入を低減させるため独自の断熱構造を適用し,性能低下を防いでいる。その結果,膨張タービン・圧縮機とも断熱効率80%以上を達成した。 |
(3) | タービン回転機の軸受には,高速で回転する回転軸を空中で浮上させ非接触で運転可能な磁気軸受を採用し,メンテナンスを削減。また,油を一切使用しないため冷凍機内を汚染することなく長期の信頼性を実現させている。 |
本冷凍機の試作機は,韓国電力公社とLSケーブル&システムとが済州島(韓国)にて共同実施している超電導ケーブル実証試験に用いられ,本年3月から実系統への送電が開始されています。ターボ・ブレイトン冷凍機を用いた超電導ケーブルの送電実施は世界初となります。
<ターボ・ブレイトン冷凍機の仕様> | ||
冷却温度 | : | 70K(-203℃)冷凍機出口液体窒素温度 |
冷凍能力 | : | 10kW(冷却水温度20℃、冷却対象は循環量0.6kg/sの液体窒素) |
電源電圧 | : | 3相交流、400V、380V |
最大消費電力 | : | 170kW |
冷却水 | : | 750L/min |
ターボ回転機 | : | 2機搭載 |
※1 ターボ・ブレイトン冷凍機 ※2 限流器 |
ターボ回転機 |
ターボ・ブレイトン冷凍機「NeoKelvin®-Turbo 10kW」 |