持続可能な航空燃料SAF合成技術開発においてCO₂からの炭化水素生成で世界トップレベル収率を確認
~CO₂の有価物転換技術として早期開発完了を目指す~
IHIはシンガポール科学技術研究庁傘下の研究機関であるISCE²(*1)と共同で,CO₂を原料とした持続可能な航空燃料Sustainable Aviation Fuel: SAF(*2)を合成するための新触媒を開発し,その触媒反応試験において世界トップレベルである26%の液体炭化水素収率(*3)を確認しました。
IHIはSAFの合成技術開発に関して,ISCE²との共同研究を今年度より進めています。今回,ISCE²と実施中のCO₂を原料とした低級オレフィン合成の開発経験における知見をもとに,AIの一種である機械学習等を活用しながら触媒組成・反応条件などの試験条件を効率的に探索・調整することで,SAF合成において高い性能を持つ触媒を開発しました。この触媒は、H₂とCO₂を直接反応させるSAF合成触媒において世界トップレベルの性能であり,SAFの原料となる炭素数5以上の液体炭化水素(*4)の収率:C5+収率26%を記録しました。
触媒開発は継続中であり,触媒組成・反応条件の最適化によってさらに高い収率を目指します。加えて,耐久性および触媒の成型などに関する開発も進めていきます。
本共同研究においては,触媒開発と併行して反応器やプロセス開発を進めていきます。今後,触媒開発およびプロセスの要素試験を完了させ,早期の商用化を目指していく計画です。
IHIは,このようなCO₂の有価物転換技術の開発を通じて,持続可能な社会への移行に貢献していきます。
(*1) 化学・エネルギー・環境サステナビリティ研究所
(ISCE²:Institute of Sustainability for Chemicals, Energy and Environment):
シンガポール科学技術研究庁(A*STAR:Agency for Science, Technology And Research)傘下の研究機関で,A*STARがシンガポールの持続可能性の目標をサポートするために設立した新しい研究所。最新のデジタル化および自動化ツールも活用し,低炭素技術,カーボンライフサイクルアセスメント,持続可能な材料、グリーン製造プロセスなどの分野で研究開発を進める。
所在地: 1 Pesek Road, Jurong Island, Singapore 627833
(*2) Sustainable Aviation Fuel: SAF:
持続可能な航空燃料。原料の生産・収集から,製造,燃焼までのライフサイクルでCO₂排出量を従来燃料より大幅に削減し,既存のインフラをそのまま活用できる航空燃料として世界的に普及推進が活発になってきている。
(*3) 収率:
反応器に投入したCO₂に含まれる炭素のうち、目的の炭化水素(本開発では前述のように炭素数5以上の液体炭化水素)に変換された炭素の割合。触媒の性能を記述する指標となる。
(*4) 炭素数5以上の液体炭化水素:
触媒を用いてCO₂とH₂を化学反応させたとき、様々な長さの炭素鎖を持つ炭化水素が生成される。そのうち,含まれる炭素数が5個以上の液体炭化水素は液体燃料の原料として利用することが可能。本開発ではこの範囲の液体炭化水素の合成をターゲットとする。
<関連プレスリリース>
2022年9月15日 持続可能な航空燃料SAFの合成技術に関して共同研究を開始
~CO₂の有価物転換技術の開発を加速~
https://www.ihi.co.jp/all_news/2022/technology/1198033_3481.html