IHIは、脱炭素社会を実現する技術開発と同時に、高性能製品の創出にも重点を置いています。今回は、その製品の一つ、電動ターボコンプレッサの進化について、将来の社長が戦略技術プロジェクト部の半田主幹、吉永主幹に伺います。
半田主幹 吉永主幹
将来の社長、こんにちは!
将来の社長
ごきげんよう。環境に優しい技術の開発が、また、一歩進んだようね。
半田主幹
はい。今回、電動ターボコンプレッサの小型化・軽量化に成功しました!
将来の社長
コンプレッサについては、以前、勉強したわ。「回転技術」を使って、羽根車の回転で、気体や液体などの流体を送り出す装置だよね。
半田主幹
はい。「電動ターボコンプレッサ」は、羽根車を電動モーターによって高速で回転させて、その遠心力を使って空気を圧縮する装置です。
将来の社長
普通のコンプレッサと、どう違うのかしら?
半田主幹
一番大きな違いは、回転数を増幅させるギアを使用せず、「インペラ」と呼ばれる羽根車と電動モーターを直接つなげていることです。
将来の社長
それって、ギアがないのに、高速で走れる自転車みたいなもの?「ガス軸受」にしたことで、より環境に優しい製品にもなったのよね?
吉永主幹
さすがです、将来の社長!空気を圧縮する部分の開発だけでなく、「ガス軸受」は超高速回転を実現させるキーになる我が社の独自開発の技術をふんだんに盛り込んでいます。自慢のようになって恐縮なのですが、開発した電動モーターも超高速化を実現させて、それらが合わさって電動ターボコンプレッサ全体の小型・軽量化に成功できたのです。
将来の社長
うん。事実なんだから、少々、自慢に聞こえてもいいわよ。どれくらい小型化できたの?
吉永主幹
電動モーターは、同じ位の出力のものに比べると体積で1/20程度のサイズです。
将来の社長
1/20も!?それって、ダチョウの卵がニワトリの卵くらい小さくなったってこと?あなた、さりげなくすごいことを言うわね。どうしてそんなに小さくできたの?
半田主幹
電動モーターの回転数を上げられたからです。モーターの出力は、トルク×回転数で決まり、モーターの大きさはトルクの大きさで決まってきます。大きなトルクを出すためには、大きな力を支える頑丈な構造が必要になります。逆に、トルクが小さければそれを支えるための構造も簡素化できます。
将来の社長
そもそも、トルクって、何?
半田主幹
トルクは、物体を回転させる力のこと。軸の中心からの距離とそこに発生する力を掛け合わせたものです。今回の電動モーターは、回転数を上げることでトルクを小さくできたため、モーターの小型化、構造の簡素化ができ、結果、軽量化も実現できました。
将来の社長
なるほど。今までの常識を覆したのね。どれくらいの速度で回転させられるの?
半田主幹
安定して毎分数万~数十万回転です。高速回転では、少しの振動が破損や騒音の原因につながるため、異常な振動なく超高速で回転し続けられるのが、他社にはない我が社ならではの強みです。
将来の社長
「我が社ならでは」...そういうフレーズ、すごく好きよ。
半田主幹
私も好きです。超高速回転によって、小型で軽量な電動ターボコンプレッサを実現させるための技術を、ここ十数年で蓄積してきました。
将来の社長
十数年も一つの開発を続けるなんて、まさにIHIが受け継ぐ「技術と叡智」の精神ね。それで、この電動ターボコンプレッサは、どんなところに使われているの?
吉永主幹
それについては、後編で詳しくお伝えします!
将来の社長
高速になったって話をしてるんだから、今すぐ、高速で教えなさいよ!