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IHIには、余裕がある? 社会基盤・海洋事業領域長 川上剛司
社会基盤・海洋事業領域長川上剛司
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IHIには、余裕がある?

入社して11年目、35歳くらいの時です。
名古屋南インターチェンジの高架橋の設計チームの責任者となり共同企業体の設計とりまとめをすることになりました。

約3kmにわたる国道上に6本の橋をかけるのです。3ヶ月毎に、夜間12時間の交通規制をして架設するプロジェクトでした。

チームの設計をすべてチェックすることも私の仕事でしたが、種類も工法も違う複数の橋を同時に見ていたので、チェックが追いつかず、ある時、施工計画書を見た現場所長に「これ,強度が足りるのか?」と指摘されました。計算し直すと、落橋する可能性があると分かり、慌てて補強の設計をしました。すべてを自分でチェックする難しさを痛感しました。

この夜間架設は時間との戦いです。初回の工事では時間内に架設が完了できず、お客様からお叱りを受けました。その後は、準備を万端にして、時には工事現場の近くに土地を借りてヤードを造成して、予行演習をしてから当日に臨むこともありました。

例えば、架設にかかる正確な時間が読めない場合は、昼間に同じものを組んでみてどれぐらい時間が掛かるかを計り、重機で、組み立て・吊り上げに必要な時間を調べたりもしました。このように、当初には計画していなかったことを行うことになり、予算もみるみる膨らんでいきました。

そこで、お客様と設計変更の協議をして、それに伴う工事代金の増額交渉をしたのですが、我々の要求は全く認められませんでした。そのままだと、当初の想定より10億円くらい採算が悪化してしまいます...。

事業部長も同席しての緊急会議が行われました。
「10億円どころか、そもそも、この工事には20億円足りないんです!」と私が強く主張したところ、「そんなこと言うなら、プライスアップできる方法を自分で考えろ」と事業部長に言われました。つまり、言外で「もっと考えて、自分でお金を取って来い」と言われたのです。

「なぜ、私が?」と最初は思いましたが、ハッパをかけられたことで、当事者意識が芽生えて「絶対にやってやろう!」と思い直しました。

数日後、お客様に「どうして要求を聞き入れて頂けないのか」を率直に尋ねてみました。すると、「IHIさんは現場の方が交渉にくるけど、他社は役員が来て、窮状をしっかり説明して帰られる。IHIさんは、まだ余裕があるのかなと思ってしまう」と。

ハッとさせられました。当時の私たちは、「お客様が自分たちをどう見ているのか」ということに全く無関心だったのです。その話をすると、事業部長と現場所長が動いてくれ、お客様の対応も変わっていきました。おかげで、赤字を出すことなく、プロジェクトを完了することができました。

竣工の時に、
「自分たちも人の子ですから、努力して頂いているのに、その会社が儲からない状況で工事を終わらせたくない。こうして最後には全てがうまくいって、良かったです」とお客様が労ってくれました。

この件で、「自分たちの状況を正しく知ってもらう努力も大事」だと気付かされました。私の中で教訓となり、その後、プロジェクトリーダーやグループ会社の社長になった時に活かされました。自分の守備範囲を超えて、お客様との距離をできるだけ縮めて、あきらめずに、粘り強く話をしていく姿勢は、プロジェクトリーダーとして必要な素養だと実感しています。

その後、「設計変更をしたら、工事の請負金の増額交渉をきちっとやっていこう」と会社の中で話をして、その仕組みができました。若い人たちは、私の苦い経験から今の仕組みが生まれたなんて、知らないと思いますが(笑)

この時に、もう1つ教訓となったのは、今、自分がやっていることを「全体を意識して見直す」ということです。そして、「これは、なんでこう決まっているのか?」と問うこと。自分がしていることをちゃんと疑うことで、手遅れになる前に間違いに気付けるということです。
ただ、自分を疑うのが、一番難しいんですけどね(笑)

入社当時の川上領域長 入社当時の川上領域長

Q.10年後のIHIグループは世の中でどんな存在であって欲しいですか?

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