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考え方

IHIグループは、「経営理念」および「IHIグループ基本行動指針」における人権尊重の考え方のもと、取締役会の確認を経て、2020年12月に「IHIグループ人権方針」を策定しました。
「IHIグループのESG経営」において、「人権の尊重」は特に重要な課題の一つと特定しています。人権に関わる国際規範に基づく人権啓発活動を通じて、人権を尊重する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる人権尊重の取り組みを推進することで、あらゆる人々に対する人権尊重の責任を積極的に果たしていきます。

人権に関する外部イニシアチブへの参画

IHIグループは、「国連グローバル・コンパクトの10原則」の支持を表明しており、その一環で2022年から「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」にメンバーとして参加しています。従業員がGCNJ各分科会に参加し、環境経営や人権デュー・ディリジェンス、人権教育などに関する理解を深める活動を継続しています。
2022年度には、UNDP(国連開発計画)が主催する「ビジネスと人権アカデミー」に参加し、人権タスクチームの担当者が人権に関する国内外の専門家による講義や、参加企業によるグループワークなどを通じて、人権デュー・ディリジェンスについて体系的に学びました。
2023年度には、人権デュー・ディリジェンスの実践をより一層加速させることを目的に、UNDPが主催する「ビジネスと人権に関する経営幹部向けラウンドテーブル」にグループESG担当役員が参加し、人権デュー・ディリジェンスに強いコミットメントを示す企業の経営陣と共に、日本および世界における人権に関する議論を深めました。

現代奴隷法への対応

IHIグループは、英国現代奴隷法および豪州現代奴隷法に基づき、IHIグループおよびそのサプライチェーンにおける奴隷労働を防止するための取り組みについて開示します。

Fiscal year 2023 Statement on the UK Modern Slavery Act and Australian Modern Slavery Act
2023年度 英国現代奴隷法および豪州現代奴隷法に関する声明(仮訳)

方針

IHIグループ人権方針

私たちIHIグループは、「技術をもって社会の発展に貢献する」「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと、地球的課題を意識し、その解決に貢献していくために活動しています。 この活動のベースとして、私たちは、「IHIグループ基本行動指針」に基づき、「IHIグループ人権方針」を定めました。人権に関わる国際規範に基づく人権啓発活動をつうじて、人権を尊重する企業文化の醸成と事業活動全般に亘る人権尊重の取り組みを推進することで、あらゆる人々に対する人権尊重の責任を積極的に果たしていきます。

(対象)

  1. 本方針は、IHIグループの業務に従事するすべての役員・従業員・派遣従業員(以下、「役員・従業員」という。)に対して適用されます。
  2. 私たちの製品やサービス等をとおしてつながる、すべての人びとの人権に配慮します。
  3. 私たちの取引先やビジネスパートナーに対しては、本方針を理解し、人権を尊重するよう求めていきます。

(国際規範・法令・グループ規範等の遵守)

  1. 人権に関わる国際規範(「国際人権章典」、国際労働機関の「労働における基本的原則および権利に関する宣言」、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」など)を支持・尊重し、これらの規範に基づいた取り組みを積極的に実施していきます。
  2. 事業活動を行う国または地域においては、当該国または地域の法令等を遵守しつつ、国際規範の尊重に努めていきます。
  3. 常に、IHIグループ基本行動指針の定めに沿って行動します。

(人権啓発推進体制と人権デュー・ディリジェンス)

  1. 人権啓発活動を計画的かつ継続的に推進するための体制を整え、人権諸課題の解決に積極的に取り組みます。
  2. 人権に関わるリスクを把握・評価し、私たちの取り組みの効果を検証・改善するための一連の仕組(人権デュー・ディリジェンス)を整備し、これを継続的に実施します。
  3. 人権に関わる潜在的または実際のリスクが評価・確認された場合は、適切な手続きを通じて、速やかに、そのリスクに関する是正措置と予防措置を講じます。

(教育)
本方針に基づいた行動が、私たちの事業活動の全般に亘って実践されるよう、役員・従業員に対し適切な教育を継続的に行います。

(対話と協議・情報開示)

  1. 本方針の一連の取り組みについて、関連するステークホルダーとの対話・協議を継続的に行います。
  2. 人権尊重への取り組み内容と結果について、その情報を定期的に開示します。

2020年12月10日
株式会社IHI 代表取締役社長 井手 博

ガバナンス

人権啓発推進体制図

IHIグループは、ESG経営推進会議のSの部分を担当する全社委員会として、IHIグループ人権啓発推進委員会を設置しています。委員会は、人権を尊重する企業文化の醸成と取り組みを推進することを目的として、「人権の尊重」および「多様な人財の活躍」に向けたDE&Iの推進に関わる重要な方針を立案・審議し、活動を進めています。グループ人財・人事担当役員を委員長として、本社部門、事業領域で構成されています。活動方針、重点施策および実績評価などの重要な活動内容はESG経営推進会議での議論を経て、取締役会に適宜報告する体制としています。
人権の尊重に関する推進体制としては、IHIグループ人権啓発推進委員会の下部にタスクチームを設置し、関係部門やグループ各社の人権担当と連携して人権尊重の取り組みを推進しています。
DE&Iの推進については、関係部門やグループ各社と連携して取り組んでいます。

タスクチーム:人事部、調達企画本部、コーポレートコミュニケーション部、プロジェクトリスクマネジメント部、経営企画部、法務部、営業統括本部のメンバーから構成

IHIグループ人権啓発推進委員会

委員長 グループ人財・人事担当役員
委員 各事業領域長、調達企画本部長、技術開発本部長、事業開発統括本部長、高度情報マネジメント統括本部長、営業統括本部長、秘書部長、経済安全保障統括部長、経営企画部長、コーポレートコミュニケーション部長、法務部長、総務部長、財務部長、プロジェクトリスクマネジメント部長、人事部長
事務局 人事部
2023年度の開催回数 3回

戦略

リスク

IHIグループの事業活動において、人権の侵害や人権を軽視した事象が発生した場合、社会的信用の喪失、あるいはお客さまとの取引停止や損害賠償責任の発生などにより、IHIグループの業績および財政状態に悪影響をおよぼす可能性があります。

機会

IHIグループは、人権の尊重を、事業の持続可能性を高め企業価値を向上させる機会と考えています。バリューチェーンを通じて、事業活動によるステークホルダー・ライツホルダーに対する負の影響を予防・低減することは、事業を通じて関わる全ての人の豊かな生活の実現につながります。

ライツホルダー:人権の保有者のこと。企業活動によって人権に影響を受ける可能性のある人やグループを指します。

リスク管理

人権デュー・ディリジェンス

IHIグループは、自社の事業活動により影響を受ける人びとの人権尊重の責任を果たすため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを進め、人権尊重の実現に向けて取り組んでいます。
人権デュー・ディリジェンスとは、①人権リスクアセスメントで特定した重要な人権課題について、影響度の分析・評価をするための人権インパクトアセスメントを行い、②これらの人権リスク評価の結果に基づいてリスク低減に向けた適切な対策を各業務の方針・運用プロセスに組み込み、③リスク低減対策の実施状況や結果をモニタリングし、④その進捗ならびに結果について外部に開示する、継続的なプロセスです。

人権デュー・ディリジェンスのプロセスを進める際には、事業活動が人びとの権利に与える影響を知るため、全てのプロセスにおいて継続的なステークホルダーエンゲージメントを重視しています。

人権デュー・ディリジェンスの全体像

人権リスクアセスメント

IHIグループでは、2021年度に社外の専門家の助言を得ながら、国内外のIHIグループを対象に、潜在的・顕示的な人権課題を特定する人権リスクアセスメントを実施しました。この分析・評価結果、製造業における重要な人権課題、社内モニタリング、国際社会の動向から、IHIグループにとっての重要な人権課題を特定しました。そして、最も優先度の高いライツホルダーとして、IHIグループの従業員およびお取引先を選定しました。

重要な人権課題
強制労働の禁止、児童労働の禁止、均等な機会の提供、差別・ハラスメントの禁止、働く人びとの健康で安全な職場の確保、働く人びとの基本的な権利の尊重

人権インパクトアセスメントの進捗

IHIグループは、「重要な人権課題」を中心とした現状・実態把握のため、国内外のIHIグループ拠点に対する人権インパクトアセスメントを、2022年度〜2024年度の3カ年計画で開始しました。
人権リスクアセスメントにおいて、相対的にリスクが高いと考えられた海外関係会社から優先的に調査をしており、2022年度は59社、2023年度は37社を対象として実施しました。2022年度と2023年度の調査結果および把握した課題への対策は、下図のとおりです。

人権インパクトアセスメント 2022年度、2023年度の調査結果、把握した課題、対策状況
項⽬ 課題 対策状況
全体傾向 グリーバンスメカニズムの整備の不足 2024年4月に通報窓口の設置を完了、運用を開始している
ステークホルダーとの対話の不足 コーポレート部門での対話実施と並行して、各社には労使対話などの重要性を周知している
従業員の均等な機会および待遇の確保に関するダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の取り組みの遅れ ダイバーシティを重視した組織風土の醸成に向けた取り組みを実施している
Red Flag 児童労働
  • 最低労働年齢の社内規定
  • 検証可能な手段による年齢確認
各国の法定最低労働年齢を順守した社内規定・ルールを整備している
差別・ハラスメント
平等な雇用機会および昇進の提供、雇用上の差別をしないことの表明
雇用および待遇における機会均等確保に関する方針の策定などに取り組んでいる
働く人びとへの健康で安全な職場の確保
  • 安全衛生の体制や役割の明確化
  • 安全衛生の方針、従業員への伝達
安全衛生に関する方針の策定・従業員への伝達などを実施している

国際労働機関(ILO)が設定する「中核的労働基準の5分野」(「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃」「結社の自由・団体交渉権の承認」「安全で健康な環境」)および「IHIグループの重要な人権課題」と関連するもののうち、特に重要な設問項目

また、IHIグループの重要な人権課題についてグループ各社への周知が不足していたため、2023年度に「IHIグループ人権方針実行ガイドライン」を日本語・英語・中国語の3カ国語で作成し、グループ内に展開しました。

グリーバンス(救済)メカニズムの整備

IHIグループは、2024年4月、グリーバンス(救済)メカニズムとして、バリューチェーン上の全てのステークホルダーが利用できる人権侵害に関する通報窓口(グリーバンスメカニズム)をIHIコーポレートサイト上に開設しました。この窓口から通報された案件は、IHIグループが正会員として加入している一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が提供する「対話救済プラットフォーム」を通じて、公正かつ適切に処置されます。

人権侵害に関する通報窓口

新規事業投資における環境・人権評価の実施

IHIグループでは、新規事業参画時に、ESGチェックリスト(環境、人権)による気候変動対策、廃棄物、土壌汚染、生態系などの環境や人権に関する影響評価を行っています。人権侵害リスクに関しては、少数民族・先住民の権利、非自発的住民移転の禁止、プロジェクトサイトでの労働安全衛生の徹底などの観点から社内審査を行います。また、投資融資案件においては、買収前に投資先の人権推進体制や人権課題などについても確認を行っています。

ESGチェックリスト:国際金融公社(IFC)パフォーマンス・スタンダードや、国際協力銀行(JBIC)の「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」などを参照の上作成。

外国人技能実習生の調査

IHIグループは、2023年度、外国人技能実習生の直接雇用実績などの状況調査を行い、1社での受け入れを確認しました。今後も定期的な調査を通じて、適正な労働環境を維持していきます。

指標と目標

人権インパクトアセスメントの実施状況

(単位:件)

項目 目標 1年目(2021年度下期~2022年度) 2年目(2023年度) 3年目(2024年度計画)
実施件数 対象 実施件数 対象 計画件数 対象
人権インパクトアセスメントの実施 3年間でIHIグループ会社約160社実施※1、※2 59 海外関係会社 37 海外関係会社およびSBU 48 国内関係会社(一部海外関係会社含む)
  1. 2021年度に集計した数値であり会社清算やグループ外となった会社については都度対象から除外
  2. 一括で実施することが望ましい会社・拠点については一括で実施

人権教育・研修の受講者数

(単位:名)

項目 2023年度
受講者数 対象
e-ラーニング「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」 25,991 IHIおよび国内関係会社、海外関係会社
e-ラーニング「ハラスメント防止」 24,545 IHIおよび国内関係会社
e-ラーニング「グループ人権方針(ベーシック)」※1 384 新規入社者および受講希望者
e-ラーニング「ビジネスと人権」※1 86 受講希望者
担当者向け人権研修 118 ビジネスと人権に対する感度を特に高めてほしい層※2
  1. IHIおよび国内関係会社の従業員が任意で受講できる選択型講座
  2. マネジメント層、リスク管理やコンプライアンス担当、受注・案件審査に関わる担当者

取り組み

教育・浸透

IHIグループは、人権を尊重する企業文化を醸成するために、「IHIグループ人権方針」に基づいた行動が実践できるよう、各階層での啓発に努めています。

(1)階層別教育

毎年度、全従業員を対象とした、人権尊重やハラスメント防止を目的としたe-ラーニング研修を実施しています。ハラスメント防止のe-ラーニング研修においては、ハラスメントに該当し得る事例や、相談窓口を紹介しています。また、新任管理職を対象とした研修においては、チームビルディングにおいて起こり得るハラスメント事例とその対策を内容に含めています。
取締役、執行役員には、企業とステークホルダーとの連携について理解し経営に生かすことができるよう、各種研修を実施しています。

(2)全従業員向け教育

2023年度は、IHIグループで働く一人一人が、人権やDE&Iについての考え方を身に付け、理解を深めるため、「ハラスメント防止」「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」それぞれをテーマとしたe-ラーニングを、全従業員向けに実施しました。

(3)担当者向け研修

2023年度は、ビジネスと人権に対する感度を特に高めてほしい層(マネジメント層、リスク管理やコンプライアンス担当、受注・案件審査に関わる担当者など)を対象とした研修を実施しました。研修を通じて、ビジネスと人権を取り巻く世界情勢の変化や、制度や枠組みの整備に加えて、実質的な取り組みが世界的に求められていることの理解・浸透を進めました。

(4)国際デーでの社長メッセージ発信

IHIグループは、毎年世界人権デー(12月10日)と国際女性の日(3月8日)に合わせ、IHIグループ国内外従業員に向けて人権尊重やジェンダー平等の重要性を喚起する社長メッセージを発信しています。

重要な人権課題に対する取り組み

強制労働の禁止

IHIグループは、あらゆる強制労働を禁止しています。IHIでは、採用の際には必ず応募者からの申し込みを前提とし、入社の際には賃金などを含む労働条件を提示して応募者の合意を得た上で雇用を開始します。

児童労働の禁止

IHIグループは、事業を行う国・地域の法定就業最低年齢に満たない労働者の労働・雇用を禁止し、これを利用しません。IHIの就業規則に、採用する者の年齢を満15歳以上とすることと、応募時に年齢情報を含む履歴書の提出を求めることを定めています。

均等な機会の確保

IHIグループは、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進、すなわち多様性と個の尊重を重んじ、公正な採用、公正な労働条件、機会の均等などに取り組んでいます。

差別・ハラスメントの禁止

IHIグループは、これまでハラスメント防止に向けた周知・啓発活動や、会社に相談しやすい環境の整備を進めてきました。会社がハラスメント事案を把握しやすい環境整備を進めてきたことを踏まえ、IHIグループとして、パワーハラスメント事案に対して厳正に対処していく方針を、IHIグループ従業員に対して表明しています。

働く人びとの健康で安全な職場の確保

IHIグループは、安全と健康の確保を事業活動の基盤であり、重要な経営課題の一つと考えています。各職場で働く人びとがその能力を最大限発揮できるよう、安全で健康的な労働環境の形成・維持に努めています。

働く人びとの基本的な権利の尊重

IHIグループは、結社の自由、労働者の団結権および団体交渉権をはじめとする労働基本権を尊重します。労働組合および組合員が行う組合活動の自由を認め、組合活動を行ったことを理由に、組合員が不利益となる対応はしません。また、労働組合との相互信頼に基づき、誠意をもって団体交渉を行います。
IHIと労働組合とは、相互理解に根ざす信頼関係に基づき労働協約を締結しているほか、経営層と従業員代表との間で定期的に安全衛生委員会、経営協議会、生産協議会を開催し、相互に隔意のない率直な意見交換により職場の環境を整備しています。

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