人権デュー・ディリジェンス
IHIグループは、自社の事業活動により影響を受ける人びとの人権尊重の責任を果たすため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを進め、人権尊重の実現に向けて取り組んでいます。
人権デュー・ディリジェンスとは、①人権リスクアセスメントで特定した重要な人権課題について、影響度の分析・評価をするための人権インパクトアセスメントを行い、②これらの人権リスク評価の結果に基づいてリスク低減に向けた適切な対策を各業務の方針・運用プロセスに組み込み、③リスク低減対策の実施状況や結果をモニタリングし、④その進捗ならびに結果について外部に開示する、継続的なプロセスです。
人権デュー・ディリジェンスのプロセスを進める際には、事業活動が人びとの権利に与える影響を知るため、全てのプロセスにおいて継続的なステークホルダーエンゲージメントを重視しています。
人権デュー・ディリジェンスの全体像
人権リスクアセスメント
IHIグループでは、2021年度に社外の専門家の助言を得ながら、国内外のIHIグループを対象に、潜在的・顕示的な人権課題を特定する人権リスクアセスメントを実施しました。この分析・評価結果、製造業における重要な人権課題、社内モニタリング、国際社会の動向から、IHIグループにとっての重要な人権課題を特定しました。そして、最も優先度の高いライツホルダーとして、IHIグループの従業員およびお取引先を選定しました。
重要な人権課題
人権インパクトアセスメントの進捗
IHIグループは、「重要な人権課題」を中心とした現状・実態把握のため、国内外のIHIグループ拠点に対する人権インパクトアセスメントを、2022年度〜2024年度の3カ年計画で開始しました。
人権リスクアセスメントにおいて、相対的にリスクが高いと考えられた海外関係会社から優先的に調査をしており、2022年度は59社、2023年度は37社を対象として実施しました。2022年度と2023年度の調査結果および把握した課題への対策は、下図のとおりです。
人権インパクトアセスメント 2022年度、2023年度の調査結果、把握した課題、対策状況
国際労働機関(ILO)が設定する「中核的労働基準の5分野」(「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃」「結社の自由・団体交渉権の承認」「安全で健康な環境」)および「IHIグループの重要な人権課題」と関連するもののうち、特に重要な設問項目
また、IHIグループの重要な人権課題についてグループ各社への周知が不足していたため、2023年度に「IHIグループ人権方針実行ガイドライン」を日本語・英語・中国語の3カ国語で作成し、グループ内に展開しました。
グリーバンス(救済)メカニズムの整備
IHIグループは、2024年4月、グリーバンス(救済)メカニズムとして、バリューチェーン上の全てのステークホルダーが利用できる人権侵害に関する通報窓口(グリーバンスメカニズム)をIHIコーポレートサイト上に開設しました。この窓口から通報された案件は、IHIグループが正会員として加入している一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が提供する「対話救済プラットフォーム」を通じて、公正かつ適切に処置されます。
人権侵害に関する通報窓口
新規事業投資における環境・人権評価の実施
IHIグループでは、新規事業参画時に、ESGチェックリスト(環境、人権)※による気候変動対策、廃棄物、土壌汚染、生態系などの環境や人権に関する影響評価を行っています。人権侵害リスクに関しては、少数民族・先住民の権利、非自発的住民移転の禁止、プロジェクトサイトでの労働安全衛生の徹底などの観点から社内審査を行います。また、投資融資案件においては、買収前に投資先の人権推進体制や人権課題などについても確認を行っています。
ESGチェックリスト:国際金融公社(IFC)パフォーマンス・スタンダードや、国際協力銀行(JBIC)の「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」などを参照の上作成。
外国人技能実習生の調査
IHIグループは、2023年度、外国人技能実習生の直接雇用実績などの状況調査を行い、1社での受け入れを確認しました。今後も定期的な調査を通じて、適正な労働環境を維持していきます。