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「真面目なだけ」では価値を生めない。どう冒険するか

  • このコンテンツは、IHIのスポンサードによってNewsPicks Brand Designが制作し、
    NewsPicks上で2025年12月15日に公開した記事を転載しています。
    https://newspicks.com/news/15589028/
    ©NewsPicks 本コンテンツの無断転載を禁じます。

正解のない時代に新しい価値を生むため、多くの企業がビジネスモデルや事業構造などの抜本的な変革を進めている。だが、いくらトップが呼びかけても、現場の社員一人ひとりが行動しなくては変革は成し遂げられない。

変革を引っ張る人材は、現場からどう生まれるのか。次世代リーダーを育て、企業全体に変化をもたらすには、どんな組織文化をつくるべきか。

組織づくりの観点から数々の企業支援を行ってきたMIMIGURIの安斎勇樹氏と、現在はIHIの変革人材育成をリードする宇宙飛行士・野口聡一氏の対談で、答えを探る。

「良い問い」と「悪い問い」の違い

──多くの企業が「変革」を掲げています。実際に変革を牽引するのはどんな人材なのでしょう。

安斎 私は組織づくりの専門家として、企業が変わる現場を見てきました。その経験から言えるのは、変革をリードする人には共通して「問いを立てる力」があるということ。 ポイントは、目先の課題を解くための問いではなく、「新しい価値を生み出す問い」を設定できるか。

たとえば、自動車メーカーのカーナビ開発部門を想像してみてください。その開発者は「自動運転が普及したら、カーナビは不要になるかもしれない」と不安な日々を過ごしています。

こういうときは「どうすればAI時代にカーナビが生き残れるか」といった問いを立てがちです。でもこの問いは、開発者の目先の不安を解消するためのもの。

こうした近視眼的な問いを起点に開発を進めると、消費者視点が欠けた新機能が追加されて、誰にも使われないなんてことに陥りやすい。

一方、自社都合を離れて社会や利用者の視点に立てば、問いは変わります。

たとえば「どうすれば自動運転時代の『移動の時間』を価値あるものにできるか」と発想を変えれば、アウトプットもずいぶん変わるはず。

企業変革とは、ビジネスモデルや事業構造を抜本的に見直し、設計し直すものです。だからこそ、自社起点の問いではなく、周りを巻き込んだ問いをつくる能力が求められるのです。

野口 非常に共感します。我々IHIは、航空機エンジンやエネルギーインフラを手がける企業ですが、まさに変革の真っ最中。

物をつくって売る「ものづくりの会社」から、新しい価値の連鎖を生み出す「バリューチェーンをつくる会社」に生まれ変わるべく、多方面から働きかけています。

 ちなみに私は、宇宙飛行士になる前、新卒で入社したIHI(当時・石川島播磨重工業)で働いていました。JAXAを退職した後、今年から再びIHIの次世代リーダー育成に携わっています。

 私も新人時代に経験したことですが、これまでIHIは、お客様から仕様書を与えられ、仕様に忠実につくるやり方で仕事をしてきました。

 その「真面目さ」が文化であり強みなのですが、「価値」は外から与えられるものという「待ちの姿勢」の表れとも言えます。

 ですが、誰も正解がわからないこれからの時代はむしろ、「何に価値があるのか」を定義し、自分たちが仕様をつくる側に回らなければいけない。

 だからこそ、我々はメーカーでありながら、「ものづくり」から「価値づくり」に発想を転換する必要がある。そのための意識改革に取り組んでいるのです。

ですが、これが本当に難しい。誰にも答えがわからないだけでなく、今日価値があるものが1年後には価値がなくなっている可能性だってあります。合理的な判断だけでは、成り立たない世界なんです。

そこで活きてくるのが、問いの力です。社員一人ひとりが「そもそも私たちは、どんな社会をつくりたいんだっけ」と問い直すことが、変革の起点です。

いくらトップが呼びかけても、社員の思いがなければ、何も始まりませんから。

先輩社員に求められる「嗅覚」

──変革人材を育て、企業を変えていくには、どのような組織文化をつくるべきなのでしょうか。

安斎 私が提案するのは、「軍事的な組織」から、「冒険する組織」への転換です。

これまでの経営やビジネスは、「自社の戦力を率いて、いかに競合に勝つか」という“軍事的な発想”に立脚してきました。

経営層が戦略を定め、社員は指示に従って実行する。そんな構造で組織が成り立っていたのです。

実際にビジネスで使われる用語って、「戦略」「武器」「調達」のように、軍事的な色彩が強いフレーズがすごく多いですよね。

しかしいまの不確実で複雑なビジネス環境では、明確な敵やゴールはもはや設定できない。野口さんもおっしゃる通り、誰も解決策がわからない社会課題に立ち向かい、「何に価値があるのか」模索する時代です。

そんな時代に、軍隊型の組織で挑んでもうまくいかない。だからこそ、探究しながら新しい価値を見出す「冒険する組織」への転換が必要なのです。

出典:安斎勇樹(2025年)『冒険する組織のつくりかた』(テオリア)
出典:安斎勇樹(2025年)『冒険する組織のつくりかた』(テオリア)

野口 非常に興味深い提言です。私はNASAに在籍していた頃、「ティール組織」に通じるチームビルディングの考え方を学びました。

そこで重視されていたのは、規律やヒエラルキーを前提とした軍隊的な組織から脱却し、個人の意思と社会的な価値が響き合う、しなやかな組織へ変わることでした。安斎さんの言う「冒険する組織」とも重なる発想だと感じます。

そんな組織の実現に欠かせないのが、失敗を許容する文化だと考えています。

私自身、宇宙飛行士の経験で得た学びの一つは「人が成長するには、死なない程度の失敗の積み重ねが必要だ」ということでした。

当たり前のようですが、 “死なない程度”というのが重要。実際に宇宙では、1つのミスが自分や仲間の死に直結します。本当の失敗は絶対に避けなければいけない。

だからこそ、挑戦の早い段階で、どれだけ軽い失敗を踏めるか

私はイーロン・マスクが創業したスペースXで3年ほど働いたのですが、シリコンバレーで使われていた「Fail fast. Fail smart. 」という言葉が印象に残っています。

簡単に言えば、「さっさと失敗して、成功につなげよう」ということですね。

安斎 それは重要な観点ですね。だから「冒険する組織」において、先輩社員や上司に求めるのは「どの程度の失敗なら大丈夫か」を判断する嗅覚です。

経験の浅い若手はそのラインがわかりませんから、後ろで見守りながら本当に「ヤバい」挑戦は止めさせる。

野口 わかります。私は最近ジムでバク転をインストラクターに教えてもらってるんですが、飛ぶ前に「ああだ、こうだ」とアドバイスをされるより、「いざというときは絶対に支えるから」と言われたほうが、飛べますから。その感覚と近いのかもしれません(笑)。

次世代リーダーをどう育てるか

──IHIでは、具体的にどのようにして変革人材を育成しているのですか。

野口 2023年に「IHIアカデミー」という、変革を担う次世代リーダーを育てるプログラムを立ち上げました。

まさに新しい価値をつくるための探究を行い、挑戦を後押しする場として設計しています。

IHIアカデミーは、「管理職になるために受ける研修」のように、人事システムに紐づいたものではありません。

画一的に多数の社員を対象にした強制的プログラムではなく、変革を志す社員が自ら手を挙げて参加し(他薦も含む)、新しいビジネスモデルや事業を探索する実践的なプログラムです。

人事制度と切り離された学びの場なので、ここで失敗しても人事評価には影響しません。

安斎 実際に、どんな経験の機会を与えられるんですか。

野口 たとえば少人数でチームを組み、経営層が提示した課題について議論し、戦略や実行プランを作成するという擬似プロジェクトを進めます。

最終的な成果物は、社内だけでなく、外部の若手経営者や変革リーダーにも評価してもらいます。外からの指摘を受け、自分の考えがいかに甘いかを知ることも、成長につながる良い失敗体験ですから。

安斎 「ビジネススクールで学んできてね」というやり方ではなく、社内で学んでもらう設計にしている点が、興味深いですね。

変革にはまず、「私がこれを解決したい」という「個人(I)」の意思が欠かせません。そのうえで、「どう実現するか」を組織としての「私たち(We)」で考える。

この往復ができる仕組みは、とても有効だと思います。

実際、中間管理職の中には課題解決スキルは高いものの、「自分は何をしたいか」「会社をどう変えたいか」というIやWeが抜け落ちている人が少なくありません。

いくらスキルを磨いても、主語がなければ変革は始まらないのです。

世代間ギャップの乗り越え方

野口 一方で、IHIアカデミーは立ち上げからまだ2年余り。いまも社員の成長をどう支援するのが最適か、模索している最中です。

なかでも課題の一つが、世代間ギャップの乗り越え方

製造業の現場では、採用を控えた時期があった影響で中間層が少なく、極端な場合は50代以上と20代しかいない職場も珍しくありません。

そのため若手が新しい挑戦をしようとしても、ベテランに「お前が生まれる前からこれでやってきたんだ」と言われると、何も言い返せなくなってしまう。

組織の中に心理的安全性がないから、自由な意見が言えない。それではいつまでたっても職場に新しい考えは入ってこないことになってしまいます。

どちらのやり方が正しいということではなく、互いの強みを活かし合える文化をどう醸成するかが、つまり真の意味で多様性をチームづくりに活かせているのか、が今のテーマです。

安斎 なるほど。そのお話を伺うと、IHIアカデミーを「越境学習の場」として位置付けるのは有用だと感じました。

世代間ギャップの問題にしても、全社の文化が一気に変わることはありません。だからこそ、まずはアカデミーが越境先として「何でも意見を言える場所」になる。そこで培われた探究・挑戦カルチャーを、所属部門に持ち帰る。

「IHIアカデミーに行っていたアイツ、なんだか変わったぞ……」と所属部門がザワザワし始めれば、良い変化が生まれている証拠ですね。

野口 アカデミー生が元の職場に戻り、変革の起爆剤になってくれることは、私の願いでもあります。

その後押しとして、いくつか工夫もしています。たとえばプログラムの節目ごとに、アカデミー生の活躍を見てもらうべく、役員やアカデミー生の所属部門の上司に見学してもらうようにしているんです。

トップマネジメントが自分たちの挑戦を見守っていると実感できれば、アカデミー生の意識も大きく変わります。

さらに、上司が部下の学びを理解していれば、職場に戻ったあとも孤立することなくその成果を他の社員にも伝えられる。結果として、現場への浸透が早まるんです。

安斎 それはいいですね。他社の事例を見ても、越境学習の場を上司が見に来る機会をつくると、うまくいくケースが多い。

変革を目指す人たちとマネジメントが同じ景色を見て、同じ空気を吸うことが、変革の機運を社内に広めていくには大事なのだと思います。

野口 IHIには「この会社をもっと良くしたい」と思っている社員が大勢います。真面目な人ほど「目の前の仕事を成し遂げてからでないと、変革をリードする人材になんてなれない」と考えがちですが、まったくそんなことはない。

いまこの瞬間に「会社を変えたい」「自分も変わりたい」という意思さえあれば、誰もがIHIアカデミーへの参加資格があります。

いくらでも失敗が許されるIHIアカデミーという場を賢く活用して、ぜひ自身の成長と組織の変革を実現してほしいと期待しています。

制作  :NewsPicks Brand Design
執筆  :塚田有香
撮影  :大橋友樹
デザイン:小鈴キリカ
編集  :金井明日香
撮影場所:豊洲セイルパークビルLIFESTYLE LAB TOYONOMA

NewsPicks Brand Designにて取材・掲載されたものを当社で許諾を得て公開しております。

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