CO₂を原料とした持続可能な航空燃料(SAF)の試験装置による合成に成功
~国際規格を満たす優れた特性を専門機関で確認~
IHIは、持続可能な航空燃料(以下、SAF)の開発に取り組んでおり、このたび、CO2と水素を原料としたSAFを、試験装置規模で合成することに成功しました。合成したSAFは、世界的な航空燃料評価機関である米国ワシントン州立大学(*1)において評価を受けた結果、航空機用代替ジェット燃料として、良好な特性を有していることが確認されました。
2022年より、IHIはシンガポール科学技術研究庁傘下の研究機関であるISCE²(Institute of Sustainability for Chemicals, Energy and Environment)(*2)と共同で、CO2と水素からSAFの原料である液体炭化水素を直接合成する触媒の開発を開始し、これまでのラボ試験で触媒が世界トップレベルの性能であることを確認しています。2025年9月からは、当社がISCE2内に設置した試験装置(
*3
)を用いて、液体炭化水素の合成試験を実施しました。合成試験で得られた液体炭化水素に改質処理を施したサンプル(図1)は、ワシントン州立大学で特性評価が行われ、航空機用代替ジェット燃料として優れた特性と評価されました。同大学バイオプロダクト科学・工学研究所のジョシュア・ヘイン所長は、以下のように評しました。
“IHIの新しい燃料サンプルは、初期段階のSAF候補に求められるすべての試験特性を満たし、またはそれを上回りました。特に炭化水素組成と、粘性に代表される低温流動特性が良好でした。”
これは、IHIが合成したSAFが、飛行中の寒冷環境での運用に必要な基準を十分に満たし、燃料の密度や燃費特性においても優れていることを示しています。CO2と水素を炭化水素に直接変換する新合成法の商用化に向け、ASTM認証(*4)取得への重要な一歩となりました。
国際民間航空機関(ICAO)は、2050年までに航空機のCO2排出を実質ゼロにする長期目標を掲げており、石油由来の航空燃料の多くがSAFへ置き換わることが期待されています。IHIは今後も、環境に配慮した経済的な航空機によるカーボンニュートラルの実現を目指し、効率的かつ安定的なSAF製造技術の早期確立に向けて、開発を推進してまいります。
(*1) ワシントン州立大学
米国ワシントン州に本部を置く全米トップクラスの公立研究大学。米国の連邦航空局(FAA : Federal Aviation Agency)などの支援を受け、新規航空燃料候補のASTM認証に先立ったプリスクリーニング試験・評価を担う。
(*2) ISCE²
シンガポール科学技術研究庁(A*STAR:Agency for Science, Technology And Research)傘下の研究機関で、A*STARがシンガポールの持続可能性の目標をサポートするために2022年3月に設立した研究所。最新のデジタル化および自動化ツールも活用し、低炭素技術、カーボンライフサイクルアセスメント、持続可能な材料、グリーン製造プロセスなどの分野で研究開発を進めています。詳細はウェブサイトhttps://www.a-star.edu.sg/isce2/about-usをご覧ください。
(*3) シンガポールISCE2内に設置した試験装置
【関連資料一覧】
- ・プレスリリース
2022年12月19日 持続可能な航空燃料SAF合成技術開発においてCO₂からの炭化水素生成で世界トップレベル収率を確認
~CO₂の有価物転換技術として早期開発完了を目指す~
https://www.ihi.co.jp/all_news/2022/technology/1198123_3481.html
2025年1月16日 シンガポールにおいてCO₂を原料とする持続可能な航空燃料(SAF)
小型製造試験装置完成に伴う開所式を開催
https://www.ihi.co.jp/all_news/2024/technology/1201227_13684.html
- ・プロジェクト紹介(IHIグループのイノベーション事例)
CO2を使いCO2を減らす持続可能な航空燃料の実現へ
https://ihi-core.tech/projects/1617
- ・動画
【IHI】技術が、未来をつくる SAF編
https://www.youtube.com/watch?v=wg682g1R3Qs
- ・論文
IHI技報第63巻 第1号(2023年6月発行)
CO₂を原料とした低級オレフィン類および持続可能な航空燃料(SAF)の合成技術
https://www.ihi.co.jp/technology/techinfo/contents_no/__icsFiles/afieldfile/2023/07/06/08.pdf