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コンプレッサーを“簡単に”,“きっちり”運用できる! ターボコンプレッサーの稼働状況を見える化するリモートモニタリングサービス

株式会社IHI回転機械エンジニアリング   

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汎用ターボコンプレッサーの稼働状況をいつでも,どこでも,簡単に遠隔監視できるサービスを紹介する.このサービスでは,機械の稼働状況をWebブラウザ上のグラフなどで可視化できるほか,保存されたデータを分析することで,省エネ運用の提案,適切なメンテナンスの実施,トラブル発生時の迅速な対応の支援ができる.

株式会社IHI回転機械エンジニアリング 技術センター 技術統括開発部  摩嶋 完治

コンプレッサーのリモートモニタリングサービスのイメージ図

はじめに

産業界におけるコンプレッサー (圧縮機) は,工場設備に圧縮空気を供給するユーティリティ供給設備である.圧縮空気は,入手しやすく利便性が高いことから,さまざまな工場の中で,エアシリンダなどの動力源,塗装工程,洗浄後の水切りや乾燥,機械加工後の切粉飛ばしなど,多岐にわたって利用されている.この圧縮空気を作り出すために,コンプレッサーは電力を消費し,その消費量は一般的な工場で総電力使用量の10~30%に達する.したがって,コンプレッサーのライフサイクルコスト (Life Cycle Cost:LCC) はその大半を電力費が占めていることになる.そのため,多くのお客さまからコンプレッサーの効率的な運用が求められており,工場全体の省エネを進めるうえでも重要なポイントである.

一方で,コンプレッサーは工場内のユーティリティ供給設備として重要ではあるが,生産設備ほど人もお金もかけられず,昨今では人員の削減やメンテナンス保守費用が後回しになるケースが多いなど,保全担当者の業務負担は日々増加している.このような状況下で機械の健全性を維持し,かつ運用コストの低減を図ることは,お客さまにとって大きな課題となっている.このお客さまの「困りごと」を解決して「うれしさ」を引き出すために,「コンプレッサーを“簡単に”,“きっちり”運用できる!」を実現していくことを目的に,株式会社IHI回転機械エンジニアリング (IRM) では,リモートモニタリングサービスの提供を開始した.

リモートモニタリングサービスの概要

IRMのリモートモニタリングサービスを活用することで,お客さまはコンプレッサーの設置現場に出向くことなく,お手元のWebブラウザ画面で稼働状況を「見たいときに,見たい場所で」監視することが可能になる.また,お客さまとデータを共有することで,稼働状況をリアルタイムに把握し,データ分析による省エネの提案や適切なメンテナンスを実施できる.さらにトラブル発生時には,お客さまとIRMのエンジニア宛てにメールが配信されることで,情報を共有することができ,迅速に適切な対応が可能となる.

本リモートモニタリングサービスの特徴を以下に示す.

  • 現在および過去のトレンドグラフが表示でき,稼働状況の「見える化」が図れる.
  • 「軸振動高」,「吸入温度高」などの異常時にはアラームを表示し,メールで知らせる.
  • 集積したデータは最長12年保存するため,長期にわたってデータ活用が可能となる.
  • 月間レポート (オプションサービス) を提供する.

本リモートモニタリングサービスのシステムは,コンプレッサー側に設置するエッジデバイス,ならびにIHIグループがIoT (Internet of Things) サービスとして提供しているILIPS® (IHI group Lifecycle Partner System) で構成され,お客さまはインターネットをつうじて,機械の稼働状況を遠隔で見ることが可能である.

ILIPSが使用するM2M (Machine to Machine) ネットワークは専用回線で,不正アクセスによる情報漏えいの心配がないセキュアな環境を構築している.ILIPSで収集した稼働データは,インターネットを介し,Webブラウザで稼働状態やメンテナンス情報などを閲覧することができる.

下図および次ページに,以下のモニタリング機能に関連するイメージを示す.

① 稼働データ表示 (データは5分ごとに更新)
② トレンドグラフ (リアルタイム表示/ヒストリカル表示)
③ メンテナンス表示 (お客さまが設定したメンテナンスの時期の残時間を表示)
④ アラーム履歴
⑤ CSV形式データダウンロード (稼働データ/アラームログ)

また,1か月単位で提出する月間レポート (オプションサービス) を活用し,月間のトレンドグラフ (吐出空気圧力,電動機電流) ,警報・故障の履歴などを評価して,お客さまへの運転状況の報告,設備の効率化につながるワンポイントアドバイス,メンテナンス計画の案内なども提供している.

月間レポート (オプションサービス) イメージ

データ収集装置ILIPS-COIRE®の特徴

リモートモニタリングサービスを利用するためには,データ収集装置をコンプレッサーに取り付ける必要がある.IRMでは,エッジデバイスとしてデータ収集装置ILIPS-COIREを新たに開発し,お客さまに提供している.データ収集は5秒単位に行われ,5分単位で要約されたデータがILIPSサーバーに送信される.また,データロガー機能として,約1年分のデータが装置内のSDカードに記録される.通信規格として4Gに対応しており,コンプレッサー搭載の制御盤内へILIPS-COIREを追加設置するだけで,リモートモニタリングサービスを容易に開始することができる.

データ収集装置ILIPS-COIRE

長期間にわたるデータ活用

記録したデータは,IHIグループが提供するILIPSのクラウドサーバーに保存され,機械状態の監視をとおして,適切なメンテナンスと設備運用の改善に活用できる.

コンプレッサーは通常,短期スパンで簡易点検を行うほか,中・長期スパンで機械内部を開放する保全整備 (時間基準保全,Time Based Maintenance:TBM) が必要である.本リモートモニタリングサービスでは,長期スパンで機械状態が監視でき,そのデータを用いて定量的に対比評価することで,時間基準保全に加えて,状況に応じた適切なメンテナンス (状態基準保全,Condition Based Maintenance:CBM) も行うことができる.

本リモートモニタリングサービスを有効的に活用するためにも,通常は単年で契約・実施するメンテナンスを複数年で契約し,お客さまの使い方にあったコースや費用支払いが選べる長期メンテナンスパック (i-CAMP®) と組み合わせることで,“長期的に”,“簡単に”,“きっちり”運用することが可能となる.

i-CAMPとの組み合わせ

機能追加による付加価値の向上

これまでIHIグループが納入したコンプレッサーにも本リモートモニタリングサービスを適用し,稼働データを収集することにより,データ分析・評価技術の高度化を図る.さらに,予兆診断機能や機械の健康診断といった,故障するまでの予測時間や適切なメンテナンス時期の提案など,高付加価値な機能を備えたリモートモニタリングサービスを提供していく.

IRMでは今後こうしたさまざまな機能を追加し,逐次展開していく予定である.

おわりに

本リモートモニタリングサービスでは,コンプレッサーの稼働状況をいつでも,どこでも,簡単に遠隔監視できる.ここから得られるデータを有効的に活用するためにも長期的なスパンで稼働データの収集,分析することが必要である.i-CAMPとリモートモニタリングサービスを組み合わせることにより,契約期間中のコンプレッサーを健全な状態で運用することが可能となる.これにより,効率的な運用を行うことで電力の消費量を抑え,コンプレッサー全体のLCCの低減に寄与することができる.

今後もリモートモニタリングサービスによって収集したデータを分析・評価し,各種機能の向上を目指していき,お客さまの「コンプレッサーを“簡単に”,“きっちり”運用できる!」を実現していけるように取り組んでいきたい.