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特集「社会課題の解決を支える基盤技術の進化」発刊に寄せて

執行役員 技術開発本部 副本部長  福岡 千枝

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私たちIHIグループは,2023 年12 月に創業170 周年を迎えました.1853 年にペリーが黒船で来日し開国を迫ったことから,幕府の要請によって石川島造船所として創業しました.IHIグループには,この長い歴史のうちで綿々と培われてきた技術の蓄積があります.そして,時代の要請に応じて必要とされる技術開発を行い,世の中に製品やサービスを提供してきました.このため,私たち自身は当たり前,所与のものと受け止めている蓄積されてきた技術は,実は先輩方の努力の賜物(たまもの)であり,そのゆるぎない基盤技術があるからこそ,次のチャレンジに進んでいけると感じています.

VUCA(Volatility(変動性),Uncertainty(不確実性),Complexity(複雑性),Ambiguity(曖昧性))の時代といわれる今,気候変動による災害や感染症の世界規模での流行,地政学的リスクの顕在化など,さまざまな事象が起こり,これまでは考えもしなかったことが当たり前になっていくことを目の当たりにしています.変化の時代に生きていて,「荒波にさらされるのは大変だ.」と思いますが,ペリーの来航した年にすぐさま造船所を設立し,見たこともなかった船を造るということに対応していった歴史をみると,当時もVUCAの時代だったのだろうと思います.

社会の課題は時代時代で変化し続けていて,今は気候変動をはじめとする地球規模の課題への対応が求められています.

気候変動が取りざたされていなかった時代には,世の中を便利にしていくことが時代の要請で,私たちは,安価にエネルギーを創出することを目指し,化石燃料を燃やしてエネルギーを得ることで仕事をしてきました.これからは,脱炭素や気候変動への適応のための課題に対して,これまで培ってきた基盤技術を活用,融合,進化させ,解決することが必要であり,それができるポテンシャルがあるのだと思います.先輩方の努力の賜物として構築された技術を基に,それを発展させて社会の課題解決への足掛かりとしていけたら,こんなにすばらしいことはありません.叡智(えいち)をさらに高めることが求められているのです.

社会要請に応えるために,今,私たちができることは何でしょうか? それは,私たち各々が専門分野の基盤技術を基に新たなアイデアを提供し,議論していく地道な努力からなるものだと思います.そのためにもさまざまな機会を利用して,研究成果を発表し議論を巻き起こしていくことが求められています.議論を巻き起こし,基盤技術を進化させ,皆さんの叡智で地球規模問題を解決していきましょう.今,私たちが,そして基盤技術を引き継ぐ次の世代の皆さんが未来への扉を開くのです.