第63巻 第2号(2023年12月発行)
特集 社会課題の解決を支える基盤技術の進化
表紙デザイン
東北芸術工科大学デザイン工学部プロダクトデザイン学科 4年
井嶋 桜子 氏
IHIグループが保有する基盤技術の進化を表現するために,その形跡を足跡に見立て制作しました.足跡の中にある立体物は,これまでの実現してきた取り組みを具体的に表現しており,カラフルな従業員はIHIの皆さんや他の企業や大学が協業している様子を象徴しています.
IHIは東北芸術工科大学(TUAD)と締結したビジネスパートナー協定に基づき,IHI&TUAD産学共創プロジェクトを進めております.
巻頭言
特集 社会課題の解決を支える基盤技術の進化
寄稿
Cover Message
特集記事 記事1
特集記事 記事2
特集記事 記事3
特集記事 記事4
特集記事 記事5
特集記事 記事6
箸休め
技術論文および解説
特集記事 技術論文1
機械学習による金属の損傷形態推定
- 宮澤優斗,千葉竜涼,大田祐太朗
構造材料は使用時に種々の損傷が生じ,劣化や破壊へとつながっていく.破壊を未然に防ぐ,あるいは再発を防止するためには損傷の要因を明確化することが必要である.しかしながら,従来の損傷調査では有識者の知識や経験に基づく推定がほとんどであり,その推定結果は属人的かつ不安定性を有するものであった.損傷材のミクロ組織画像に対して機械学習による画像分類手法を用いることで,このような問題の解決が期待でき,知識や経験によらない一般化された推定を行うことが期待できる.本稿ではクリープ/クリープ疲労/疲労の3種類の損傷が与えられた供試材のEBSD像を用いて機械学習を行い,約89%の精度での推定に成功した.これにより本手法によって損傷形態を高精度に推定できる可能性が示された.
特集記事 技術論文2
CMC冷却孔部寿命評価手法の開発
- 佐藤速夫,春山大地,北村祥之,中村 寛,本田達人
セラミックス基複合材料(Ceramic Matrix Composites:CMC)は,Ni基合金に比べて耐熱性や比弾性率が高く,航空機タービンエンジン部品などへの適用拡大が望まれている.材料の耐熱温度を超える高温のガスにさらされる部品では,冷却のために部品表面に微小孔を空けるのが一般的であるが,微小孔を空けたことによるCMCの疲労寿命への影響を調査した先行研究例は僅かである.本研究では,この影響を調査するため,多種の冷却孔平板試験片を用いて冷却孔の形状と疲労強度の関係を調査した.その結果,単孔と複数孔では異なる破壊モードとき裂の進展様式が観察された.これらの異なる破壊モードを有する試験片の疲労強度を説明するために寿命評価モデルを検討し,強度パラメータの考えを導入した.強度パラメータは,有限要素解析(Finite Element Analysis:FEA)より予測された応力分布をCMCの単位領域(ユニットセルサイズ)で平均化することで算出し,疲労寿命を評価した.本評価手法により疲労寿命を評価した結果,孔のない平滑試験片について得られたS-N線図から多種の冷却孔形状を有する試験片の疲労寿命予測が可能であることを確認した.
特集記事 技術論文3
Ti-6Al-4V製ディスクの過回転バーストに至る終局限界評価
特集記事 技術論文4
ターボチャージャ部品の耐食性評価
- 纐纈知己,榊原洋平,大宮正仁,高橋和臣,齋藤健大
ターボチャージャは多種多様な金属素材を組み合わせたものであり,腐食が発生し得る環境で用いられる.そのため,新規の材料を使う場合などは耐食性評価試験として複合サイクル試験(Combined Cyclic Test:CCT)を行う必要がある.しかしCCTは大掛かりなうえ1か月以上の時間がかかる.一方,電気化学測定は簡易なセットアップで迅速に行うことができるが,CCTとの相関性は不明であった.そこで,CCTと電気化学測定の相関性を示すことを目標に,双方のデータを取得することにより耐食性を表す指標を見いだし,この指標を用いてスクリーニングが可能になった.