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グリーンエネルギーの地産地消を支える電力安定供給システム
電源安定化と耐災害性を両立するマイクログリッドの制御技術

株式会社IHI  

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日本では,2023年の夏の平均気温偏差が+ 1.76℃となり,過去最高を更新した.CO2を排出しないグリーンエネルギーの比率を高めることは温暖化対策として必要かつ有効であるが,一方でその安定化が課題である.グリーンエネルギー安定供給とともに耐災害性にも寄与するIHIのマイクログリッドの電力安定供給システムの制御技術を紹介する.

駐車場を活用した太陽光発電によるマイクログリッドのイメージ図

はじめに

「2035 年までに新車販売で電動車100%を実現する」と2021 年の通常国会における首相施政方針演説で表明されたように,カーボンニュートラルの柱として,自動車のEV化が提案されている.ガソリン車がEV車に全て置き換わった場合には,日本の電気の総発電量が10 ~15%程度増加するといわれている.しかし,その増加分を二酸化炭素 ( CO₂ ) を多く排出する火力発電で補っていては,発電設備の高効率化やアンモニア燃焼などの技術でCO₂排出量を減らす取り組みを行っているとしても,EV化の意味がない.

そのため,EV車に充電する電力は,グリーンエネルギーにすることが求められている.しかし,グリーンエネルギーには天候によって発電量が大きく変動し,電力系統に負担を掛けるという課題がある.また,グリーンエネルギーを増やすためには,出力が気象条件に左右されないようにする安定化が重要となる.グリーンエネルギーを安定化させることで,初めて出力変動を吸収する調整用火力発電を減らすことができる.IHIグループは,近隣のエネルギー供給源と消費施設をまとめて,エネルギーを地産地消するマイクログリッド内の電力安定供給システムの制御技術を確立した.この技術を使うことによって,電力系統に負担を掛けずに,グリーンエネルギーを増やすことができる.また,災害などによって停電となった場合でも,マイクログリッド内で自立運転し,電力を供給することができ,災害時の避難所やエネルギー供給の拠点とすることも可能となる.

その制御技術は,そうまIHIグリーンエネルギーセンターで確立してきた.

そうまIHIグリーンエネルギーセンター

そうまIHIグリーンエネルギーセンターは,「水素を活用したCO₂フリーの循環型地域社会づくり」をキーワードに,グリーンエネルギーの活用と水素の製造から利用までの技術の実証研究をIHIが進めている施設である.2018 年4 月,相馬市と共同で開設し,一般財団法人新エネルギー財団「令和2 年度新エネ大賞」経済産業大臣賞を受賞している.本受賞は,再生可能エネルギーの最大有効利用を可能とし,耐災害性を高める技術であり,地域の活性化も含め他地域への展開が期待できるものとして,高い評価を受けたものである.

そうまIHI グリーンエネルギーセンター全景

ここでは,電力系統に電気を流すことなく,マイクログリッド内で地産地消する電力安定供給システムの開発を行った.太陽光の急激な出力変動分は,蓄電池を用いて平準化し,余剰電力は,水素製造や下水汚泥乾燥に用いて,グリーンエネルギーを最大限活用している.また,EV車への給電も可能で,急速充電器・普通充電器各1台を設置している.開設後も,電力安定供給システムの改良を続けており,電力系統が停電した場合に,マイクログリッド内に電力を安定供給できる自立運転制御機能(特許申請中)などの追加改良を行っている.

そうまIHI グリーンエネルギーセンターのもつ機能

電力安定供給システムの標準化

そうまIHIグリーンエネルギーセンターにて実証したマイクログリッド制御技術をベースにして,電力安定供給システムの標準化を実施している.標準化することで,マイクログリッドを構築するためのコストの削減,建設期間の短縮が可能になる.それにより,グリーンエネルギーを有効利用するマイクログリッドの普及が促進される.さらに,マイクログリッド内でグリーンエネルギーの変動を平準化することで,送電網に負担を掛けることなく,グリーンエネルギーの拡大に貢献することが可能となる.

標準化した電力安定供給システムの設備構成は,次の三つをマイクログリッドの必須要素とし,EV充電器や水素製造設備などもグリッド内に設置可能としている.

  • 太陽光発電設備(駐車場の場合:ソーラーカーポート)
  • 蓄電池システム(自立運転機能付き)
  • 電力の自家消費設備
  • 負荷への使用電力抑制機能

「道の駅等の防災拠点の耐災害性を高める技術 導入ガイドライン(案)」に採用された事例

IHIグループは,前述の標準化されたシステムの防災機能をさらに発展させたシステムを構築した.それは,国土交通省の「道の駅等の防災拠点の耐災害性を高める技術 導入ガイドライン(案)」に事例として,次のように掲載された.

導入ガイドラインでのシステム構成

技術名称:EV活用を視野に入れたグリーンエネルギーによる電力供給システム ~発電3系統・蓄電2系統を備えたカーポート式太陽光発電,定置型蓄電池の組合せ ~

【技術の特徴】

  • 駐車場空間を活用したカーポートに太陽光パネルを設置して発電し,定置型蓄電池にて安定化
  • 太陽光発電3 系統,蓄電池設備2 系統で構成し,地震などで1 系統が故障しても稼働可能とし耐災害性を向上
  • EV急速充電器の併設によって,災害時にEV車を可搬型蓄電池としてほかの防災拠点などの電源として扱うことが可能(オプションとして水素ステーションの組み合わせも可能)
  • 停電時は,マイクログリッド内に自立給電でき,道の駅を避難所として活用可能
  • 平常時は,グリーンエネルギーを最大限活用可能

なお,公募条件より,太陽光発電,蓄電池容量は100 kWとしているが,容量は大きくすることができる.

なお,ガイドラインについては,国土交通省サイトの現場実装する技術(R5 ~)ページ内から閲覧可能である.
https://www.mlit.go.jp/road/tech/genbajisou/R5-5.pdf

今後の発展性

今後,グリーンエネルギーを日本の安定化電源とすべく,マイクログリッドの制御技術の発展およびエネルギー効率の向上を目指していく.

(1) 仮想発電所( Virtual Power Plant:VPP )への発展
VPPとは,地域内の複数の分散型エネルギーリソースを,ICTを活用し一つの発電所のように統合・制御し,電力の需給バランスを調整する仕組みである.
分散型エネルギーリソースとして,マイクログリッドを連携し,VPPとして機能させることが,グリーンエネルギーの安定供給のための非常に有効な手段となる.VPPを取りまとめる指令所からの受送電電力指令に合わせて,マイクログリッドの受電点の電力制御を行う.ここで述べたマイクログリッドの電力安定化技術は,VPPと相性の良い制御技術であり,グリーンエネルギーの導入促進に大きく寄与できると考えている.
マイクログリッドにてグリーンエネルギーを安定化することで,調整用火力発電を減らしていくことが可能となる.
(2) マイクログリッド内の直流化
太陽光発電,蓄電池,水素製造装置などは,全て直流電力である.現状は,全て交流に変換してマイクログリッドに接続している.その場合,変換損失があるため効率的ではない.直流のまま接続するとエネルギー損失が少なくなる.また,機器構成も簡単になり,将来的にはコストの削減も期待できる.グリーンエネルギーの発電の全量を活用でき,コスト的にもメリットが出るマイクログリッド内の直流接続方式についても,検討していく.
VPP 統括制御 マイクログリッド方式

IHIグループは,マイクログリッドの制御技術を活用して,グリーンエネルギーを安定供給させ,脱炭素と災害に強いまちづくりに貢献していく.