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社会に新しい選択肢を増やす研究開発

株式会社IHI 常務執行役員 技術開発本部長  久保田 伸彦

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IHIグループでは,複雑化した社会課題に対してさまざまな未来の可能性を描き,多様なパートナーと協力して技術を培い,新しい価値を継続的に提供していく技術開発に挑戦しています.そして,その価値を製品やサービスとして1日でも早く世界に送り出すために,技術開発のスタイルを変革し,IHIグループが掲げる「自然と技術が調和する社会を創る」ことを目指していきます.

はじめに

地球規模の気候変動により,エネルギーを中心とした社会経済システムに対する人々の価値観は急速に変わってきています.この変化のなかで,これまで以上に自然や社会に配慮しながら,新たな価値を提供し続けることが,IHIグループの存在意義であると考えています.そのために,環境や社会の問題に向き合い,未来の地球環境への影響を予測して,必要とされる製品やサービスを見いだし,世界に先駆けて社会に提供していくことが必要と考えています.この実現に向けて,IHIグループでは,技術開発本部を中心として,これまでの技術開発のスタイルを一新し,新たな研究開発 ( R&D ) を推進しています.ここでは,その技術開発のスタイルの変革について紹介します.

技術開発のスタイルの変革

これまでは,IHIグループにおける基盤技術の開発や,事業部門・関係会社との協働による製品・サービスにおける高付加価値化を目指してきましたが,今後は新技術・新分野創出に向けて,高い目標の技術開発と開発スピードの向上が求められています.これらに対応するために,以下のように技術開発のスタイルを変革します.

  1. システム・デザイン・マネジメント ( SDM ) を応用して企画力を高める
  2. デジタル技術をいかして,技術開発を加速する
  3. 世界のエコシステムへ参画して,互いの強みをいかす

システム・デザイン・マネジメントの応用

新しいソリューションのアイデアを見いだすには,これまでの事業経験や自社技術の活用に頼るだけではなく,新しい発想が必要です.そこで,システム思考,デザイン思考,プロジェクトマネジメントなどがベースとなるSDMの考えを企画発案のプロセスに応用することにしました.

具体的には,まず初めにテーマとなる課題を決め,その課題に関わる利害関係者とその行動を洗い出し,タイムラインに分けて整理します.これにより,課題となっている状況や場面を詳細に可視化し,解決すべき点を抽出します.次に,異なる専門性や経験をもつ人材を集め,ソリューションについて議論し,さまざまなアイデアを見いだします.そして,これらのアイデアを技術力や経済性の観点から定量的に評価して,技術開発に取り組むソリューションを設定します.さらに,ステークホルダーとのコンセプト検証をつうじて,社会に新たな価値を提供できるアイデアに変容させます.

このプロセスを実践するには,環境分析などのマーケティングのスキルに加えて,SDM,未来洞察,サービスデザインといった思考プロセスが求められ,適切なタイミングでそれらを活用することが必要とされます.技術開発本部では,これらのスキルと思考プロセスを組み合わせながら,実践を重ねて企画発案プロセスの構築を進めて,過去の経験や主観にとらわれない新しい戦略を描いていきます.

技術開発を加速するデジタル技術

新しいソリューションのアイデアを早期に具現化し,製品やサービスとして社会に提供していくためには,アイデアの創出から社会実装までの期間を短縮する必要があります.そこで,モデルベース開発 ( MBD ) をさらに推進することにしました.これは,シミュレーション技術を活用した開発手法であり,開発リードタイムの短縮と開発コストの低減が可能となります.また,これまでの材料データを基に実験を重ね,材料を試作し物性を評価していた材料開発においては,マテリアルズ・インフォマティクスを適用し効率化を図っています.さらに,マルチフィジックス・シミュレーションを用いてシステム全体の挙動を把握することで,技術開発期間の大幅な短縮を目指しています.特に,大型の設備の開発においては,これまで,実験室レベルの要素試験から,複数回のスケールアップ試験と数値解析を繰り返して実機サイズで性能を発揮する設計を見いだしてきました.このスケールアップ試験の一部を数値シミュレーションで置き換えることで,設備設計や実証試験にかかる期間を短縮することが可能となります.

現在,IHIグループの技術開発に必要なMBDについて研究を進めており,その成果を実際の開発に取り入れることで,ソリューションのアイデアの早期実現を目指しています.

世界のエコシステムへの参画

複雑化した社会課題の解決に向けて,社会の変化や技術革新などの潮流を正しく理解し,取り入れる必要があります.そこで,世界のエコシステムに参加し,世界最先端の研究開発に参画していきたいと考えています.強みをもつ企業や研究機関が連携することは,新しいビジネスチャンスやムーブメントを起こす可能性があります.まずは,IHIグループを広く知ってもらうことが必要であり,そのために,目指すゴールやオープンイノベーションの推進などの取り組みを世界に発信していきます.一部のプロジェクトでは,現在,海外の研究機関などと提携した技術開発に取り組んでおり,IHIグループと研究機関の双方の強みをいかして,質の高い技術開発を行うとともに開発を加速させています.

おわりに

IHIグループでは,地球環境の変化に対応し,社会からの要請に応えるべく,技術開発スタイルを変革した新しいR&Dを推進しています.SDMを応用した企画力の強化,デジタル技術を活用した技術開発の加速,そして世界のエコシステムに参画して強みをいかすことで,これまで以上に社会や環境に配慮した新しい価値を継続的に提供していく技術開発に挑戦します.そしてこれらの取り組みをつうじて,「自然と技術が調和する社会を創る」ことを目指していきます.