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特集「新たな価値を創る技術開発への挑戦」発刊によせて

常務執行役員 技術開発本部長 久保田 伸彦   

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2025 年現在の世界情勢は,私たちの想定をはるかに超えており,さまざまな考え方のもと,新しい枠組みや仕組みが導入されつつあることはご存じのとおりです.この環境下で,競争力のある製品をつくり続けるためには,従来のグローバルバリューチェーンを見直さざるを得ない場合もあり,新しい生産方法や生産効率向上に資する新技術を導入した新旧の製造拠点の整備が必要です.また,社会変革につながるような革新的な技術も,予想よりも速いスピードで社会実装が進みつつあります.これらの変化が激しい社会動向に追従し,その技術・新製品で世界の先頭を走るためには,本号のテーマである「新たな価値を創る技術開発への挑戦」を常に続けることが必要であると考えます.

具体的な取り組みとして,航空宇宙分野ではジェットエンジンの高性能化や新型ロケット,海洋分野では自律型無人潜水調査装置や船舶の操船システムに関する挑戦を紹介しています.これらの技術は社会に新しい価値を提供できると期待されます.一方,新技術が実装されるためには,それを支える基盤技術やAIを用いたDX ( Digital Transformation ) の推進が重要であり,幾つかの新しい取り組みも紹介しています.また,早期に新技術で社会貢献するためには,実際の試験を一部省略し,シミュレーションやモデルを用いて設計・検証を行うMBSE ( Model Based Systems Engineering ) が有効な手段となります.この手法を導入することにより,技術開発期間の大幅な短縮が期待されており,その取り組みの一部も掲載しています.

新しい技術の研究開発を進めていく際には,早い段階から関連する多くの方々と議論することが,社会受容性の高い技術や製品を完成させるために重要であると考えています.該当する技術の研究者だけでなく,他分野の技術者,関連する政府機関,スタートアップ,マーケティングや金融などの人々とエコシステムを形成し,技術の社会実装の際の法整備や,製品とこれを構成する技術の世界標準化なども見据え,技術開発を進めていくことが必要です.このエコシステムが有効に機能した結果として,最終ゴールである社会貢献につながると考えています.本号を手に取っていただいた方々とは多くの議論ができることを切望しております.