第65巻 第1号
特集 新たな価値を創る技術開発への挑戦
巻頭言
特集 新たな価値を創る技術開発への挑戦
特集記事:
舶用アンモニア機関の開発と実船実証: 世界初の商業用アンモニア燃料船が就航
海を知る 守る 無人機: 深海で無人海底調査ができる深海用自律型潜水調査装置(AUV)
三次元レーザレーダとAIで高速道路の安全を守る: 高速道路出入口での逆走・誤進入を検知警告する
ラインシミュレーションの活用による工事効率化・生産性向上: 床版取替工事のバーチャル現場構築で工期と人員配置の最適化
メタンエンジン 宇宙へ向けた挑戦: メタンを燃料とするIHI製ロケットエンジンIME-3U(Bluetail)の開発
福島第一原発の廃炉を着実に進めるために: 燃料デブリを安全に取り出すためのジオポリマー吹付工法の開発
ASDタグボート操船制御システム: 熟練技術を代替する直感的な操船の実現
IHIグループのDX推進と生成AI活用の取り組み: 生成AIの業務活用およびRAG・SLMの技術開発
インタビュー
特集論文および解説

表紙デザイン
東北芸術工科大学 デザイン工学部 グラフィックデザイン学科
平田 殊海 氏
長年にわたり社会と人々のために技術を磨いてきた IHI.
その精神を体現すべく,今回のIHI技報の表紙は「誰一人取り残さないノアの箱舟」をコンセプトに据えました.
IHI が誇る多彩な技術が私たちの暮らしを根底から支え,より良い未来へと力強く導く――
その確かな歩みを象徴的に表現しています.
巻頭言
特集 新たな価値を創る技術開発への挑戦
特集記事

福島第一原発の廃炉を着実に進めるために
燃料デブリを安全に取り出すためのジオポリマー吹付工法の開発
インタビュー
特集論文および解説

航空機エンジン分野におけるMBSE手法の活用事例の紹介
- 坂井俊哉,室岡 武,廣田健太郎
近年,航空機システムは電子技術の進展に伴い機能要求が増大し,システムの複雑化が進んでいる.この結果,設計変更時の影響評価や認証試験が複雑化し,開発期間の長期化が課題となっている.さらに環境対応の要請も強まり,電動化や水素燃焼技術など異分野技術との統合が不可欠である.この課題解決に向け,IHIはModel Based Systems Engineering(MBSE)を活用して設計情報を一元管理し,Model Based Design(MBD)との連携を用いて複数要素間の影響評価を効率化する設計プロセスの構築を進めている.

低圧力比ファンの空力・エアロメカ・騒音に関する技術開発
- 林 亮輔,立石 敦,楠田真也
航空機エンジンの燃費改善と騒音低減が求められる中,高バイパス比化・低圧力比化が進む民間エンジンのファンにおける設計課題に対応するためには,空力・エアロメカ・騒音に関する技術開発が不可欠である.本稿では,IHIで取り組んでいるこれら技術開発について述べる.空力では,ファン翼面の層流領域を実証するための試験や,層流領域拡大技術の構築に向けた取組みを紹介する.エアロメカでは,フラッタやNSV(Non-Synchronous Vibration)について試験とCFD(Computational Fluid Dynamics)の結果を基に分析し,翼振動の発生メカニズムを解説する.騒音では,動翼とパイロンなどの周囲構造物による干渉がディストーションを通じて騒音増大を助長するメカニズムを明らかにする.

外観検査AIモデルのための合成データ生成技術
- 大島誉寿,水山佳乃,北村俊也
製造業の外観検査自動化において欠陥パターンを網羅した多様な不良品データの収集が困難あったが,近年は人工的に不良品画像を生成するという合成データ(Synthetic data)技術によってデータ数を確保する方法が注目されている.そこで,金属部品を対象に画像加工や光学シミュレーションなど複数の手法によって不良品を模擬した合成データを生成した.また,合成データのみを訓練に使用した検査AIモデルを構築することで,学習用データとしての有用性を確認した.

鉄道車両台車枠溶接継手の信頼性管理手法
- 大谷佳広,髙梨正祐,豊田 真,酒井信介
供用中の鉄道車両台車枠に加わる荷重は大きく変動するため,溶接継手の疲労寿命を評価する場合には荷重と材料強度の両方についてばらつきと不確実性を注意深く検討する必要がある.本研究では信頼性工学に基づき,破壊確率と信頼水準を明確に区別した新しい手法を開発した.荷重のばらつきが比較的小さい場合にはシンプルな式により破壊確率と安全率を決定できることを示した.容易に参照できるよう,目標破壊確率に応じた安全率を表形式で掲載した.荷重のばらつきが比較的大きい場合にはモンテカルロ法を用いることにより破壊確率を求めることができることを示した.最後に,先行文献に記載の事例について破壊確率を算出し,その結果について考察した.

玉軸受の性能解析ツールの紹介
- 伊藤 昭,柴田 愛
IHIグループの製品で多く使われている転がり軸受は,製品の性能を左右するキーコンポーネントとなることも多いため,軸受の剛性や内部の応力分布などの特性や性能を予測し把握する技術は重要である.転がり軸受の中でも特に使用頻度の高い玉軸受を対象に性能を解析するツールの整備を進めているのでその概要を紹介する.